第33話 「疑惑」
「……キョウ様、どうされましたか、そんな怖い顔をして」
帰ってきた瞬間、速攻で花咲凛さんに見つかった。
「部屋に戻ったら話す」
「……承知しました、しかし話の前にまずは怪我の手当てからしましょうか。中々痛々しいことになっていますよ」
3階の自室に戻って、血が固まり始めている部分から消毒される。
花咲凛さんは手際よく消毒をし、包帯で患部を巻いていく。
それと同時に患部を冷やすように、もう片方の手でアイスを持たされる。
治療の手がいいからか、さほど痛みはない。
まぁさっきもなかったから怒りで麻痺している可能性もあるけど。
「動かしづらい、とかそういうことはないですか? あと拳が痛くて動かせないとかそういうことは?」
「今のところはないかな」
「そうですか、では固定していきますね」
「うんありがとう」
「いえ当然のことですので」
てきぱきと仕事を行っていく花咲凛さん。 ある程度ひと段落したところで、再度彼女から問いかけられる。
「…………それでどうなさいました? キョウ様の顔、出会ったころのように人を殺しそうな眼をしておりましたよ?」
「そうかもね」
否定はしない。それくらい今はいらだっている。
俺のそんな返事に花咲凛さんは驚いたように目を見張る。
「……もしかして、相当怒ってます、か?」
「いい気分はしてないよ」
「さようですか、それで何があったのですか?……今日の朝出かけられたときは、普通でしたよね」
「うん。端的に言うと、さっき九頭竜が俺に喧嘩を売ってきた」
「はい?」
花咲凛さん的に俺に言われた内容が、あまりに予想外だったらしい。
「もう一回いうと、九頭竜と高遠が喧嘩うってきた」
「なんか一人増えてませんか?」
ちゃんと改めて、さっき起きたことを話す。
話が進むにつれて、花咲凛さんの顔がこわばっていく。
「……よく我慢しましたね」
「姉さんのことがあるからね、なかったら間違いなく殴ってた」
「……それで電柱殴った結果があれですか…………まぁいいですそれで返答は3月末、なんですよね?」
「うん、たぶんその日にしたのは、あいつらは宝生さんに対して前と同じことをやりたいんだろうね、結婚式でドタキャンしたみたいなことを」
成功体験にひかれたんだろうね、あいつらにとっての成功体験に。
確かに宝生さんにはダメージは入っていた。そのお返しはちゃんと受けたと思うんだけどな、話を聞く限り。
「悪趣味ですね」
花咲凛さんも同じ意見みたいで何より。
「返答なんて決まっているから考える必要ないよね…………それよりもどうするか、どう破滅に持っていくかっていうのは考え物だよね。ただ具体的にそれを考える前に考えないといけないことがあって」
「そうですね、だれが情報を漏らしているかってことですよね」
そう。単純に九頭竜が俺らの情報を知っているのがそもそもおかしい。
姉さんのことまで知っているのはどう考えてもおかしい。
体調不良なことはわかっていても、病気なこと、長い間病に臥せっているのはおかしい。
そんなことを俺は周りにも言ってないし、姉さんも周りを心配させるだけ、と言ってほとんど言っていない。
そして、俺が殴りかかろうと前に出た瞬間、遠目から様子をうかがっていた人もいた。
たぶんあのまま殴り掛かったら止めようとしていたんだろう。
「あとそれにもしそうなったとしても、その様子を撮ろうとしていたかのせいもありますね」
「撮影?…………俺の弱みとかにしよう、ってこと?」
「それもあるでしょうけど、どちらかというと宝生様のほうの弱み、ですかね?」
あぁ許嫁候補の株を下げれば、必然的に相手の価値を下げられる、ってことかぁ。
俺に足を引っ張らせようとそういうことね。
「それで何かあったら交渉時に有利にしようってことか、なんというか姑息だ」
「ええ、とても。…………でもなんていうか少し違和感がありますね」
「それは俺も感じてる、たぶん九頭竜はそんなに頭が回るほうじゃない、それにあいつのやり方はまっすぐというか、そういう回りくどいやり方って得意じゃない気がするんだよな、というかできない」
人の結婚式に乗り込んでいくようなキチガイな行動ができるやつだ。
たぶん後先なんて顧みれない。
そんな奴の行動とは思えない
「…………誰か裏にいるってことですか?」
「たぶんね」
じゃあ誰が考えられるのか。
「でもかなり近しい人ってなりますよね、キョウ様がランニング行ったのに気づいて、そのあとでお姉さまのことを、…………はっ、まさか…………私…………疑われてる?」
「そんなわけないでしょ。 花咲凛さんならまず美桜ねぇを狙うようには言わないでしょ、俺が絶対に協力しなくなるのは目に見えてるし」
「…………そうですね、完全敵対するしもまだしも、彼らから見たらキョウ様に協力してもらったほうがやりやすいはずです。それをわざわざ棒に振るような、キョウ様に姉のことを侮辱するような、そんなことを言うなんてありえないですね。このシスコンにそれは禁じ手なのは明白です」
「ありがとう」
「ほめてないです」
でもそうなんだ。
俺に家族のことを脅すようなことを言ったらブチ切れるのは目に見えている。
協力なんて話じゃなくなるし。
花咲凛さんが裏切ったとしても、それはない。
女性への考え方が違うし、男性の俺の側室なんて普通にあり得ない。俺が女性好きなことなんていつもしている花咲凛さんならわかることだ。
それにそもそもそんな推理をしなくても。
「――花咲凛さんに裏切られたら、もうしょうがないかな、ってなる」
「キョウ様…………」
それくらい俺は彼女に頼ってるから。
姉さんがいなくなった俺に親身に寄り添ってくれた人だから。
「だから花咲凛さんは除いたとして、宝生さんも違うだろう。それに黒川さんも」
あれだけ嫌ってるんだ、協力するとは考えられない。言い争いもしてたし。
「いえ黒川様はまだわかりません、演技している可能性もあるので。なので宝生様だけたぶん白、じゃないですか」
「そうだね、そうなると可能性があるのは、宝生さんの関係者か、それか政府のというかNAZ機関の誰かって感じか」
「どうしましょうか」
「それじゃとりあえず、クレームを入れよっか」
「く、クレーム?」
全員ちゃんと後悔させてやる。
「キョウ様…………笑顔が怖いです」
なぜか、花咲凛さんが引きつった顔で俺を見ていた。
「俺は、俺の姉を馬鹿にしたことを絶対許さない」
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あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!今年は更新頻度を上げて、皆様の心に残るような作品を作れていけたらなーって思ってます!
あ、新年ということで、新作今日の12時に投稿します!!
タイトルは
「気づいたら大学のマドンナを染めた男になっていた件」
です。
正妻戦争は、ちょっと重めのミステリーというか陰謀というかラブコメ気味になってますが新作はラブコメ重視で行こうかなーっと思ってます!
明るい感じで、たまにドロっとさせますので読んでください!面白いも思うので!では!
気になった方はコメントもお願いします!こっちももちろん更新してきますよー!
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