第26話 「花咲凛さんとの反省会」

 家に戻り、そのまま3階の自分の部屋へ。

 服を脱ぎ、そのままベッドに倒れこむ。

 

 「おかえりなさい、キョウ様。本日のデートは上手くっ…………行かなかった感じですかね?その姿を見るに」


 花咲凛さんの苦笑している声が聞こえる。


 「さて落ち込んでないで、なにがあったか私に教えてくださいキョウ様? このわたくし、花咲凛ママに! 女性経験なんてほとんどないようなキョウ様です。女性とのデートなんてほとんど経験ないんですから失敗して当然です、むしろこの経験を糧に次のステージに進んでいきましょう。ほらよく言うじゃないですか、1の成功は100の失敗から出来上がるって。いくらち○ぽがつよつよでも、恋愛糞雑魚ミンチ女心童貞のキョウ様です、ミスしない訳がないんですから落ち込んんでもしょうがないですね」


 「うん、言い過ぎだよ」


 黙って聞いてたけど花咲凛さん調子乗って死ぬほど言って来たね?


 「あれ生きてたんですか」


 「そりゃね、恋愛糞雑魚ミンチ乙女心童貞ってその通りだけどきついわ、あと童貞じゃない!!」


 「そりゃ私で卒業してますからね、知ってますよ。でも私は一般的な女の子とは言い難いですからねぇ」


 「確かに、それはそう。普通童貞なのか俺はじゃあ」


 「まず否定しましょう、そう言うところですよ?恋愛糞雑魚ミンチ乙女心童貞なところ」


 「あー」


 「あと普通童貞ていう言い方もやめましょう、素人童貞にしましょう」


 「それこそやめよう」


 別の意味まで出てくるから。俺プロにお世話になったことないし。

 え?花咲凛さん、公務員だから、え?


 「…………そういえばご飯って食べました?」


 「いやちょっと夜ごはんまでたどり着けなかった」


 「なるほど、ステージ2で脱落ですか…………」


 「なにそのステージって、まるでゲームみたいじゃん!ちなみに各ステージはどこまで行けるの?」


 「ステージ1でランチデート、ステージ2が、飲み行こうよ、ステージ3が「どうしたの?話きこうか?」からの2件目でヘロヘロに酔わせる、そしてステージ4で、本丸を、落とす!って感じです」


 「ドスケベじゃん!!」


 「なんのことですか?悩みを聞いて惚れさせるって意味ですよー、このお・ま・せ・さん?」


 ふふと冷笑を浮かべる花咲凛さん。


 「何って何をナニだよ!!」


 「……ふっお若い事」


 あぁ、口じゃ一生勝てないっ!


 「はぁもういいや、ごめんだけど、ご飯とかってあったりする?食べれてなくてさ」


 「…………あぁとうとうキョウ様もメイドを顎で使うようになってしまったのですね、シクシク。昔はメイドさんにそんなことさせられないよ、って掃除とかさしてくれなかったのに、いまでは…………はぁ」


 鳴きまねをしながらこちらを悪人に仕立て上げようとするメイド。

  

 「昔の花咲凛さんがあまりに仕事しすぎて止めたってだけでしょ?睡眠と食事以外、全部仕事してて」


 「すぐにやることなくなって周辺のごみ拾いとかまでしてましたね、ええ。あの頃は我ながら勤勉でした」


 表情こそあまり変わらないけれど、当時と今では180度くらい動きが変わっている。

 俺としては変わってよかったけどね。


 「さて、少しはキョウ様が元気になったところで、ご飯でも食べますか。準備してきますのでキョウ様はシャワーでも浴びてきてください。ちょっとはましになりましたけど、ひどい顔してますよ?昔みたいに」


 昔みたい、か。

 それは出会ったころのことかな。

 自分の想いを曲げてまで選んだ道にくじけそうになっていた時。


 というか、もしかして花咲凛さんはそれを見越してこんなふざけた話題を。


 「そんなひどい顔をしながらご飯食べられたら、せっかくのご飯が美味しくないですからね!」


 とのことらしい。

 でもさっぱりはしたいところ。


 今回は3階のシャワーをちゃんと浴びる。

 シャワーは少し熱めに設定する。

 頭からかぶるのが気持ちいい。

 冷えて、固かった身体がほぐれていき、頭も柔らかくなっていく。


 今日1日で色々あった。

 宝生さんと色々話した。

 彼女のことを少し知れて、彼女にも自分のことを知ってもらえたと思っていた。


 途中までは良かった。

 だけど、トイレにいった15分。


 あれですべてが変わった。

 元婚約者って言っていたな。


 あの男たちのことを。

 せっかくのデートに横やりをいれてくれた人たち。

 

 怒りは胸の内に置いておくとして。


 その人たちに会ってから、俺への対応も変わった。

 だけどなぜ。

 彼らは決して、俺に関係のある人たちじゃない。

 というか、こっちの世界に来てから男性の知り合いなんてほとんどいない。そして若者なんてほぼゼロだ。

 だから違う。


 ということは、彼らと俺に何か共通する点がある…………?


「あーもうわけわからん!!お腹も減ったし!!」


 身体とかも洗い、浴室を出る。


「はい、タオルです」


「あ、あぁありがと」


「髪、乾かします?」


「それじゃあお言葉に甘えて」


 全くしょうがないですねぇ、といいながらも花咲凛さんの手は優しく髪を梳き、乾かしていく。


 彼女の手と温もり。

 そして甘く、安らぐような香りに、荒れた心が和んでいく。


 髪も乾かし終わり、美味しいご飯を食べ、お茶を飲んで一息。


「ちょっとは見てられるような顔になりましたね?」


「まるでさっきが酷かったみたいじゃないか」


「さっきは嫌悪感とやるせなさとその他諸々でそれはもうて……」


 言えないほどだった、と。

 ひどくない?


 「……それで、何があったんですか?」


 落ち着いたのを見たからか、控えめに聞いてくる。

 でも自分の気持ちを整理する意味でも、口に出しておく。


 一連のことを話したうえで…………


 「どう思う?」


 「どう思う、と言われましてもねぇ」


 「確かに聞き方悪かったかもね。…………ぱっと見問題点ある??」


 「んー、あんまないんですよねぇ」


 そうだよな、やっぱ。


 「てことは、相手側の問題か」


 「ええ、そうですね。キョウ様が見栄を張って嘘をついたか、それか、彼女の見解と相違がある場合を除けば、そうなりますね」


 「それはそうかもだけどね、でもまだそこの可能性を考えるのは早いんじゃない?」


 「はい分かってます、を茶化してみただけですよ。コナソくんごっこですよ」


 そんなごっこやんないでほしいけどね?

 まぁいいや、大事なのはそこではないし。

 彼女が何を言いたいかは伝わったから。


 「それで、そろそろ彼女の事をおしえてくれるんですか?黒川さん」


 俺はあえて部屋の、閉まっている扉に向けて声をかける。

 誰かいるのは知っている、ちょっと前くらいから。


 トントントン、とノックする音。


 「律儀ですね、どうぞ」


 「夜分遅くに失礼いたします」


 所作だけは恭しく、礼をしてくる。

 ただその雰囲気は、かなり張りつめている。


 「まだ20時なの気にしないでください。……それで、今日の事を教えてもらえるんですよね?」


 「お嬢様より聞かれたら質問には応えるように、と申し使っております。ですのでお話できる範囲でお話させていただきます」


 「それで結構ですよ」


 「ですがお話する前に、ご確認させていただきたいことがございます」


 確認?


 「はいまぁ答えられることなら」


 「なに、簡単なことです」


 黒川さんはそう、にこっと笑い、


 「……何のためにお嬢様の傷を恭弥様はえぐるのですか?………あなたは――」


 黒川さんは目をすッと細め、


 「――最初の頃から変わり、敵ですか?」


 あふれ出る敵意をむき出しにした。



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海外で熱出してました!笑


とりあえずリハビリでがんばります!

カクヨムコンもあるので!

あともう1新作出そうかな、って思ってます。


その時もよろしくお願いします。

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