第10話 ダンジョンとオフ会4
場所を移して時刻は夕方になる。
知り合いの小さな居酒屋は楓の風という店名で、最大で12席と狭すぎず広すぎずといったところだ。
ダンアタコミュニティは年長者がアラサーの社会人で、最年少が今大学1年の俺だった。
流石に会って早々に収入やら仕事の話とかはしないし、ダンアタに時間を溶かした奴らが話す共通の話題なんてひとつしか無かった。
ダンアタは非敵対モンスターのドロップは絞られる傾向にあるが、ガンガン襲ってくるモンスターはそうでも無い。
これは実例でいうと、こちらに攻撃をしてこないダンジョン産ウサギは尻尾しか落とさないし、有用性も最初だけって感じになる。
これが、ウルフのような数で襲ってくる好戦的なモンスターは牙に爪、毛皮に肉と種類が一気に増える。
ウルフは色々とスタートの立ち位置という役割にいる。
もしくは他のゲームでいうところの先生といった感覚だろうか。
初めての敵の方が多い戦闘であり、多対一の練習に、バックアタックといった敵からの先制攻撃を警戒する立ち回りを磨いたり、遠吠えによる増援をやらせないように動いたりと一気に気を付ける要因が増える。
今回は全てハメ技でつぶしてしまったが、本来なら苦戦する大混戦が始まるところでもあった。
ゲーム時代と異なりステータス画面は見れないし、自分のレベルも不明だけど、流石にレベルアップしているんじゃ無いかな?とは思う。
まあそこら辺は食事を取った後に話せばいいか、と並べられた食事の前で思考を切り替える。
カンパイの挨拶と共にノンアルコールの美味しいカクテルを頂く。
C県F市のダンジョンは比較的海が近いため鮮度の良い海鮮食材が並んでいる。
めちゃくちゃ美味しい料理を食べながら次はどこに行きましょうかなんて話している。どこでもこのメンバーならやってけそうだなと思う。
出すタイミングを忘れてどうしようかとなっているスイーツはチラ見せとアイコンタクトによって無事に共有することが出来た。
少し席を離れて、事前に持ち込み許可を得ているので、ここでオレンジを使ったスイーツを皆に配る。
シンプルなゼリーにしてみたということで、涼しげな見た目の半透明で薄らと色の付いたゼリーの中には厚く切ったオレンジの実が浮いている。
一口食べると、見た目に反して絞りたてのフレッシュジュースのような濃厚さで口の中にオレンジが溢れる。かと思えばあっさりと消えていく余韻の早さである。
オレンジの酸味とミカンのような甘さ、それでいてくどさは無くいくらでも食べられそうだ。
こういったダンアタ特有の食材にすっかり魅了されたメンバー、特に食にこだわりがあるメンバーは早速リストの制作を急ぐと力強く宣言していた。
いやあ、楽しいなあ。
余談だけど、ウルフの素材を使った装備品については、大量のドロップがあることから各自で作ることになった。
一応本職のような生産スキル持ちは居るけど、スキル所持で得られるわずかな肉体強化のパッシブスキル目当てである。
簡単にいうと、ああいった生産スキルなどにも筋力をプラス補正するボーナスが付いていたりするので、微々たる差でも色々と手を出しておこうねってことだ。
あとは単純に作品発表して遊ぼうぜっていうのがある。割と皆こっちの方が本題かもね。
何がいいかと考える時間もまた楽しみのひとつである。納期とか無いしなあ。期限はあるけど、流石に間に合うから大丈夫。多分。
メタ知識で先輩面してイキッていたら知らない内に金板冒険者と勘違いされていた件 @gameglass
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