第6話 リアルなダンジョン終
話の区切り回かつ、外から見るウチダ回
※別視点
私の地元には中型ダンジョンがある。階層は判明している限り、少なくとも8階層はあって、多分10階層あるといわれている。
私は普段高校の友達と1階層でネズミさんや大っきなバッタを倒しています。
ダンジョンでモンスターを倒すと体が成長して、丈夫になれるという噂を信じているからです。
私は、高校の体育の授業でさえ直ぐにバテてしまうので、体力が付くのなら……と縋るような気持ちでここに居ます。
実際にダンジョンに通うことで鍛えられたのか、そうで無いのかは分かりませんが、通い始めて3ヶ月が経つ頃に、体育の授業で休み休みとはいえ息が切れなくなってきて、達成感や安心感といった感情が混ぜこぜになって泣いてしまいました。
それもこれも、先輩のメモと何気なくダンジョンに通うことを提案してくれたことが大きかったと思います。
先輩は部活の先輩ではなく、学年で5名が参加する美化委員の活動で知り合いました。
サッと集合場所に来て、サッと終わらせて帰宅する姿と、何でそんなに急ぐのか聞いたときの……キョトンとした顔は今でも思い出せます。
趣味の時間を優先するために決まっていると言い切る姿は、答えを直ぐに決めきれない私には眩しく見えました。
それでも、週に一度の清掃活動。2時間掛からない程度とはいえ話す機会はそれなりにあり、体を丈夫に出来たらとこぼした時に、先輩はダンジョンを勧めてくれました。
その時は……出来るわけが無い。そう思って、ちょっと意地悪だなって思ってしまいました。
翌週に会ったときに、しっかりと書き込まれたノートを貰って読んだときに、先輩は本気で私にも出来ると考えていることが分かりました。
そこから、友達の二人に相談して……今に至ります。
「しおり、今日はこれで切り上げよう」
かほちゃんが声を掛けてきて、息をつく。かほちゃんはバレー部に入っていて、背の高くて格好良い私の友達だ。
「もうそんな時間?」
私たちがダンジョンに入る際には、律儀に守っているルールがあります。先輩のノートに書かれている初心者の鉄則というものです。
初心者はモンスターを10体倒すか、2時間経過した場合は撤退すること。
ダンジョンは広く、ここの草原地帯は歩いても風景が変わらない為に余計に時間感覚が希薄になります。
そして、外に繋がる出口は見失うと発見が難しくなります。
体験するまでは直ぐに引き換えせると気軽に考えていたことは、今では恥ずかしい思い出でもあります……。
「いや、モンスター10体の方。ここに最初に来たときからは想像もつかなかった方ね」
もう一人の友達。
きょうかちゃんが時計を見ながら教えてくれます。
きょうかちゃんはコンパスと地図を定期的に見て、現在の位置を把握してくれています。
なんだか友達に頼ってばかりで恥ずかしいとか頑張らなきゃって思いもあるんですが、張り切り過ぎて迷惑を掛けないように私のペースで頑張りましょう。
「それにしてもさ、しおりの先輩って何者なんだろうね?このノート1つ取っても、なんかネットに書かれていない結構凄いものもしれっと書いてあったりするしさ」
「これだけの情報をタダで渡してくれるってさ、もしかして……しおりにホの字なのかな?」
ホの字って、えぇ!?
慌てて訂正しますが、多分そんなことは無いんだろうな……と冷静な部分の私が断言している気がします。
先輩……ダンジョンの話とそれ以外で全然顔の明るさが違うもんな……。
「からかわないでよー」
「悪い悪い。でもさ、その先輩が凄い冒険者なんじゃ無いか?っていうのは割と当たってそうだよね」
「きょうかもそう思う?多分自分の持っている情報がそんなに凄いと思っていないタイプだなって、そんな気がするんだよね」
雑談をしながら出口に向かいます。体力を付けて、勉強も頑張って……そのうち、先輩とダンジョンにでも、なんて気が早いかな?
ウチダ先輩に追いつけるように頑張ろう。
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※ウチダ→資格証を取得したてのビギナー
しおり→資格証を取得してから1年の経験者
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今回の登場人物の補足
毎回出るキャラクターではないため補足として載せておきます。
飛ばし読みでも問題ありません。
現在高校3年生でウチダは1年上のため卒業済み
体がすこし弱く、克服のためダンジョンに通うことを決めた。
勉強は出来るタイプで、美化委員に入ったのは部活か委員会どちらかに入らないといけないから。
ダンジョン内では魔法攻撃とそれを隠すようにスリングショットを活用している。遠距離アタッカー枠。
好きな食べ物は果物全般。
しおりのクラスメイトで友達の一人。
バレー部に所属しているものの、本気ではあるものの、全力で打ち込んではいなかったこともあり、しおりときょうかと共にダンジョンに通うことにした。
勉強はそれなりに出来るが復習などはやらないし、テストで見返しもし無いのでそこそこ止まり。
要領が良いため引き際もしっかりとしている。
ダンジョンに通うことで、若干のコンプレックスだった長身は更に伸びた為少し複雑。
ダンジョン内では在庫処理で入手した大きな強化プラスチック製の盾とほとんど使わないナタを持っている。近接ガード枠。
しおりの友達で別クラス。
茶道部に所属はしているが、活動はもともと週一だったのでしおりに誘われてダンジョンに行くことにした。
ぽわっとした見た目とは裏腹に、背は平均よりも高く、親に習った薙刀なぎなたを構える姿はキリッとしている。
ダンジョンにはダイエット目的と伝えているが、単にしおりが心配で着いてきただけである。
ダンジョン内では木製の訓練用薙刀を振るい攻撃を仕掛ける。近接アタッカー枠。
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