嘆きと狂気で紡がれる、どうしようもなく美しい物語

綺羅星の如く輝く"世界"という名の舞台の裏では、地を這う無名の者たちが蠢き、そして嘆いている。

正しく"光あるところに影あり"を体現したような世界。膨れ上がった影は、闇はやがて光を蝕み、そのまま世界を侵食してゆく──

力なき者は奪われ、殺され、犯される。うわべだけの善や綺麗事が如何に意味を成さない無価値なものであるかを、その圧倒的な表現力で以てこれでもかと言わんばかりに読み手に見せ付けてくる。パッと見た時のインパクトが尋常ではない。人の闇とは斯くの如く深き底なし沼のようなものであるのかと、感動さえ覚える。

力こそが唯一無二にして絶対の理。どんなに言い繕ったところで所詮、弱者は強者の食いものでしかないのだ。

その狂気が余りにも、それこそ狂おしいほどに美しく──

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