第6話 宝物
○
女の人が、
「
知り合いなのだろうか。
「結希ちゃん〜! こんなところで会うなんてね! 何しに来てるの? あれ? もしかして……あ、やっぱり!
どちらも朝倉さんと知り合いのようだ。
そこで、僕は気付いた。朝倉さんの知り合いに、僕と一緒にいることが知られたら……
「久しぶり」
「
「4組の
「あ、え、こんにちは、白宮です」
「……なるほど。あ、私、5組の
「1組の
「よ、よろしくお願いします」
知られてしまった……が、朝倉さんが事情を説明してくれたため、特に問題はないだろう。
「白宮くん、ちっちゃくてかわいいね〜!」
「ほんとだ、かわいい。よしよし」
「んえ?!」
この人たちも、こういう感じなのか。
「でしょ! 目とかめっちゃかわいくない?」
あ、朝倉さん?!
「え〜、ほんとに男の子?」
「4組のマスコットキャラクターは白宮くんか」
「……」
こうやって言われることには慣れていると思っていたが、まさか朝倉さんまでそうだったとは思わなかった。どうすれば良いだろう。
「あ、そうだ、華ちゃん、私たちも一緒に行動していい?」
「もちろん! 白宮さんも、いいかな?」
「え、ま、まあ、朝倉さんがいいなら」
気分転換ということを貫き通すことができるなら、問題はないのだろう。
「白宮くん、私の名前、覚えた?」
「え、えっと、田村さん?」
「田村凜々子」
「田村、凜々子さんね。覚えた!」
田村さんは、少し不思議な人だ。
「よ〜し、じゃあ、出発! 華ちゃんたちはどこ行こうとしてたの?」
「えっと、私はCDショップ行きたいな〜って。白宮さんはどこか行きたいとこある?」
「あるけど、先にCDショップに行こう」
「了解、CDショップね、どこだっけ、あっちかな?」
「多分そう」
「よし、行ってみよ!」
随分と、賑やかになった。川島さんも田村さんも、悪い人ではなさそうだ。
朝倉さんも先程より楽しそうに見えるし、これでいいのだろう。
――CDショップ
「それじゃあ各々好きなの見よっか!」
「結希、あっち行こ」
「じゃあ私、あっち行くね! 白宮さんは?」
「うーん、朝倉さんと一緒に行ってもいい?」
「いいよ! おすすめ教えてあげる!」
2人ずつに分かれた。少し前と同じ状況だ。
「白宮さん、MIDNIGHTってバンド知ってる?」
「あ〜、名前は聞いたことあるかも」
「そっか、あ、今流れてる曲! これがMIDNIGHTの曲!」
「へぇ……」
優しい雰囲気の曲だ。アコースティックギターの音色が綺麗で、じっとしていると涙が出てきそうだ。『僕が知らない僕こそが、本物の僕で』……
しばらく曲を聴いていたが、何故か、この歌詞だけが、頭から離れなかった。
……
「白宮さん、ただいま! ……さっきの曲、好きだった?」
「え、ああ、すごい夢中になってた……」
「『マリオネット』っていう曲だよ。日本語でどういう意味だったかは……忘れちゃった」
「ありがとう、帰ったらちゃんと聴いてみる!」
「自分の好きな曲を他の人に気に入ってもらえるのって、こんなに嬉しいんだね」
やはり、そういうものなのだろうか。
「結希ちゃんのところ行こっか!」
「うん」
「あ、華ちゃん!」
「結希ちゃん、ごめんね、ちょっと遅くなっちゃって」
「別にそんなにじゃない? じゃあ次は……」
「結希、そろそろお昼ご飯の時間かも」
「あ、もう? じゃあご飯食べる?」
「そうだね! 白宮さんは、お腹空いてる?」
「うん、丁度いいと思うよ」
「あ、結希ちゃん、ちょっとトイレ行ってきていい?」
「は〜い」
……この状況は、もしかして。
「ねえ、白宮くん」
「は、はい」
「……」
「……?」
「うん、そっか」
何か、あったのだろうか。
「華ちゃん、『宝物』、見つけられたんだ。良かった」
……宝、物?
「え、なんですか、そ……」
訳が分からず川島さんの顔を見ると、その目には、涙が浮かんでいた。
「白宮くん、かわいいから、自信持っていいんだよ」
「た、田村さん……」
この人たちから、何か、特別なものを感じた。
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