第73話 一名回線落ち

 俺は五味にこう訊ねた。

「あのー、もう二十二時回ったのにもう一人の夜勤者が来ないんですけど。もしかして今日って、夜勤五味さんだけですか?」

「そんなわけないだろー? この店は基本夜勤二人だぞー?」

「じゃあ遅刻ですかね? 誰が来る予定だったんですか?」

「今日は三井君だね。寝坊かな? 電話掛けてみてくれる?」

「わ、わかりました」

 一先ずレジを五味に任せ、俺は夜勤者の三井さんに電話を掛けたのだが――。

――出ねぇ!!

 バックレかよチクショウクズ野郎めがぁぁぁっ!

 どうやら三井さんは、完全にバックレる気のようであった。

 この残酷な事実を、五味に報告する。

「五味さん、三井さんに連絡つかないっす……」

「ああ、やっぱり? なんか先週彼女出来たとかうかれてたもんなぁ。それだなー」

 つまり今頃彼女とよろしくやっていると?

……殺意しか湧いてこねぇ。

 でも今それよりも問題なのは……。

 俺は恐る恐る訊ねた。

「ええと五味さん。一応訊きますけど、俺帰ったらマズイですよね?」

「今日はイブだよ? これからラブホへしけこむバカッポーが、飲み物やら食べ物を買い込みに沢山来るはずだし、帰られたら店が回らないよー。ウチ一人だと困っちゃうー」

「マジ……すか……?」

「大マジだよ」

 うわあああああ!?

 ジィィィィザスッ!!

 なんてクリスマスイブだっ!!

 バイトさえ終われば、アリオンのクリスマスイベントに間に合うと思ってたのにぃっ!?

 鈴よすまん!

 せめてお前一人だけでも、サンタを狩ってブラッディクロスを剥ぎ取ってくれぇぇぇっ!!

 チクショウ……なんて日だっ!!

 今年も例年通り、クソッタレのクリスマスイブじゃないか……。

 とりあえずリア充どもは爆発四散しろ!!

 そんな風に俺が醜く心の中で不満を爆発させていると、店の自動ドアが開いた。

 そこから現れたのは――。

 まず、五味が先に声を掛ける。

「あ、ふじのん! やっほー!」

「は? え? 藤野!?」

 そう、なぜか一度帰ったはずの藤野が戻ってきたのだ。

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