第7話

 あれから何週間たってもはじめ沙那さなをラブドール化することができないでいた。いつ会っても愚痴を吐き続け、自傷行為を見せつけ続け、自殺をほのめかし続けた。「あのさ、わたしが死んでも誰も悲しまないよね?わたしは母親をいじめる悪い娘なんだから死んだほうがいいよね?」そう言って沙那はカバンからカッターナイフを取り出して手首を切りつける。その様子を見つめながら、ふと沙那を手に入れるというゲームにさっぱり飽きてしまった創は、目を細めてあえて冷酷な声でゆっくりと言った。「そう思うならそうなんじゃない?少なくとも俺は悲しまない。所詮俺たちは他人同士。沙那が生きるも死ぬも俺にとっちゃどうでもいい」沙那はじっと創を見つめていた。「わたし飛び降りるかもしれないよ?」「好きにすればいいさ」創は沙那に対してもう一切の興味も抱かなかった。沙那はただのおしゃべりクマさんだった。

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