サムドラグプタ碑文

 この資料がどれくらい重要かわからないですが、解説にはグプタ朝期の碑文の逸品とされていると書いてあます。サムドラグプタ大王(在位335~375年頃)の事績を記した叙事詩であり、アラーハーバードのアショーカ王石柱碑文の下に刻まれています。それでは引用します。



 その心は智者との交際により集積せられし幸福に満ち、学芸の真義に通達し、……佳詩と好運との背反を終息せしめたる彼(サムドラグプタ)の、賢者の美徳により威力いや増すその命令は、識者の世界に於て、沢なす詩文に輝く名声高き広大なる主権を享受す。


 数百の合戦に臨みて手練れを示し、己が力と勇気とを唯一の頼みとなし、武勇に秀で、斧・矢・棒・槍・投槍・刀・短槍・石弓・鉄箭・短箭等、もろもろの武器より受けし数々の創痕に飾りつくされて秀麗の雄姿はその美観をいや増し、南コーサラ王マヘーンドラ(中略、王名や地名が続く)を始めとし、ダクシナーパタ(デカン地方)の諸王を捕獲し且つ釈放し、恩恵を垂れて得たる勇武の誉に陸離たる大好運を担い、ルドラデーヴァ、(中略、諸王の名が続く)等、多数のアーリヤーヴァルタ(北インド)の諸王を武力もて覆滅して発揮せられたる威武により偉大、森林地帯に拠る諸王を全て従者と化し、サマタタ・(中略)等により、その峻厳なる威令は一切の租税の納入、命令の履行、稽首・来訪を以て満足せしめられ、多くの滅亡せる王国、断絶せる王統の再興により生じたる声誉は全世界を遍歴するに疲れ、ダイヴァプトラ、(中略)等一切の島嶼の住人により、自ら拝謁を請い、子女を捧げ、貢物を贈り、ガルダ鳥の勅印(グプタ王家の印章)による自領安堵の政令を仰ぐ等の手段もて傅かれて、


(中略、王を讃える表現が続く)


その稀有にして高尚なる幾多の功業は永く伝えて讃うべく、唯この世の慣行に従うが故にのみ人間と呼ばるる人界の現神、シュリーグプタ大王の曽孫、聖ガタートカチャ大王の孫、最高君主聖チャンドラグプタ大王の子、リッチャヴィ国王女の子としてクマーラデーヴィー(チャンドラグプタ王の妃の名)より生れたる最高君主サムドラグプタ大王の、全地界征服より生じたる隆昌の故に全地表に遍満し、ここより諸神の主宰(インドラ)の宮殿に達せんが為快適なる進路を得たる名声を、告げ宣らんとするものの如く、この柱は高くかざせし大地の腕にも似ていと高らかに立てられたり。




 ひたすら讃えられて、現人神とまで言われていますね。征服された地名などが、グプタ朝最盛期の版図を表していて参考になるのでしょうか。




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