第17話 梅雨

「梅雨だねぇ...」

外には大粒の水滴が降り続いている。今は6月で梅雨の季節。

「そうだねぇ...」

今日はお出かけができないので、もーねと一緒に家でゴロゴロしている。

かといって、暇なんだよなぁ....。

「なんか楽しいことないかなぁ...」

「うーん...」

外出たらびちょびちょになるし....。

かといって、家でできることには限界があるし...。

「この百合本も全部読んじゃったし...」

<TS転生したので、推しを救います 〜Vtuberの前に1人のオタクです〜>

も読んじゃったしなぁ....。

『あ!じゃあ、ポッキーゲームでもやらない?』

「却下.....っていうかなんで英語?」

『ポッキーゲームの言い方わからない』

「普通にポッキーゲームだよ」

「え?そうなの?」

「そもそもポッキーとゲームって英語じゃん」

「確かに...ってなんで却下なの⁉︎」

もーねはびっくりしている。いやいやいや...

「当たり前でしょ...」

なんでやると思ったんだ...。


「まぁ、結局外に出るんだよねぇ...」

家に楽しいことがないので傘を装備して外に出ることにした

「ほんとに行くの...?」

もーねが行きたくなさそうにしている。けど...

「行きたいって言ったのはもーねでしょ...」

そう。言い出しっぺはもーね。

「それじゃ、レッツゴー‼︎」


「水たまりっていいよね」

唐突にそんなことをもーねが言ってきた。

「どうしたの急に?」

水たまりっていいかなぁ...?

『いやなんかさ、足で踏んだりするとさ、色んなものと混ざるじゃん?それを見てるとさ、悩みも不安も全部飲み込んでくれた気がして、気持ちが楽になったりするんだよね〜」

確かに男だった時の自分も、仕事がうまく行ってない時に水たまりで遊んでたっけなぁ...。

「だから私は水が好きなんだよね」

なるほどねぇ〜。


ーカラオケー

「カラオケに来たけどここでいいんだよね?」

一応もーねに確認をとる

「うん!」

正直、俺歌上手くないんだが...。


「〜〜〜〜〜♪」

もーねがアニソンを歌っている。

やっぱり、人気Vtuberなだけあって歌声が綺麗だ。

で、俺はというと...

「〜〜〜〜〜♪」

もーねには敵わないが、良い方なんじゃないだろうか。

「上手い上手い‼︎」



ー1時間後ー

「ちょっとねむぃ...」

あえかちゃんが疲れたみたい。片目を擦り合わせている。

「やっぱり疲れた?」

「うん...ちょっと寝る...」

あえかちゃんが寝てしまった。

『Vtuberってさ、雨みたいに突如として現れるけどさ』

聞こえるはずもないのに私は語りかける。

『雨みたいにすぐに消えちゃう生き物なんだよね』

そう。消えていった同僚を思い出すように...

『あえかちゃんもすぐに消えちゃうのかな...?』

私はそっと、そう言ったのだった。



「ん...?」

俺は目を開けた。どうやら寝てしまっていたらしい。

もしかしたら、私になっているのかもしれない。

元々、女の子の価値観が混じってたもんな俺。

女性の体見てもなんとも思わなかったし、トイレも自然と女子トイレに入れてたし。

そりゃそうか。この頭も、体も。俺だけど俺じゃない。

俺が私として生まれた、似て非なる、あえかのものなんだから。

だから、体と頭が元に戻ってきているのかも。

うーん。だとしたら、俺ってなんなんだろう?この頭も一応あえかのものだし。

なんで俺が存在しているんだ?記憶転移と同じようなものなのだろうか。

でもそれって、臓器を移植した時に現れるやつだよなぁ。

あえかの記憶が一時的に俺の記憶に変わったのか...?

じゃあ、俺はあえかだけど、俺だと勘違いしているだけ?

わからない。でもきっとこの問題には向き合わないといけない。

借り物はいつか返さなきゃならない。

『う〜ん。むにゃむにゃ...』

もーねが自分の肩にもたれかかってきた。

「もしかして、ずっと自分の肩貸してくれてたのか?.....ありがとう」

「う〜ん...!もーねを見てたらまた眠くなってきた...もう一度寝るか」

借り物はいつか返す。それは覆らない。けど...

「今じゃなくていいよな...」

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