第7話 彼岸花

 いつも通る道の歩道の脇に街路樹があり、そのわずかな隙間に彼岸花が咲いていました。


 お彼岸の頃に咲くので彼岸花というらしいのですが、あの赤く細長い花を見ると、秋だなあと思います。


 まだ暑さの残る風の穏やかな日でした。

 咲き誇る彼岸花に、黒いアゲハ蝶が飛んできて止まりました。


 花の赤、茎の緑、アゲハ蝶の黒。


 何とも強い色の組み合わせでした。


 外には様々な色が溢れていますが、その時は通り過ぎるまで視線がその一場面に釘づけになりました。


 絵心があれば描いていたかもしれませんが、才能皆無なので末代までの恥にならぬよう無理に描き残すことはしません。


 では歌で……夏の疲れがでたのかしらと心配されそうなのでやめます。近所迷惑にもなりますし。


 なのでせめて文字で残せたら、ということで今に至ります。


 細切りした赤パプリカのような花。

 アスパラガスのようなまっすぐに伸びた茎。

 高級な海苔で切り取ったようなアゲハ蝶。


 文章力ですらこんな感じなので頭を抱えます。


 田んぼの畦道に咲いているのをよく見ますが、彼岸花の球根には毒があるので獣害虫害対策になるからだそうです。


 街路樹の脇になぜ咲いているのかは不明ですが、秋を感じる一コマだったことに変わりありません。


 そして、そこに新たな彩りを加えてくれたアゲハ蝶も、秋の風景の差し色となり私の心に印象強く残りました。

 アゲハ蝶がいなければ、毎年巡りくる秋の景色としていずれ忘却の海に沈んでしまっていたかもしれません。

 

 因みにこれは今から少し前の出来事でした。


 それから数日後、再び買い物に行く時に通ったら、花は萎れていました。


 時の流れ、季節は移ろいは意外と早いのかもしれません。


 ぼーっとしていて、ふっと気づいた時により感じます。


 あれ? もうこんな時間?

 ああ、日曜日終わっちゃう。

 いつの間にかカレンダーの残りが……。


 毎年こんなことの繰り返しで年末になります。



 余談ですが、彼岸花は英語で Spider Lily というそうです。

 蜘蛛か。

 形状からしてそれっぽいですよね。

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