対魔国
第24話『魔国と獣王国』
─ 時は遡り魔国デルスラド ─
旧帝国の滅亡を受けて、慌ただしくなっていたのはペレス、ラキシアの両国だけではなかった。
大陸から海を隔てた魔国「デルスラド」もそのひとつであった。
(魔王ガデルガ)
「何?滅亡だと?」
魔国の王「ガデルガ」は帝国滅亡の報を受け、冷淡な視線を向けた。
(魔国兵)
「はい、それも宣戦布告から僅か半日と経たず、城や砦は姿を留めぬどころか、黒く鈍い光沢を伴った大地へと変わったとのこと」
(魔王ガデルガ)
「何者の仕業か分かっておるのか?」
(魔国兵)
「宣戦布告には旧ヨアナ国を匂わせる声明が含まれておりましたが、それ以外は…」
(魔王ガデルガ)
「情報を集めろ!些細な情報や動きも見逃さず精査しろ!」
魔王ガデルガが帝国滅亡に騒がしくなったのには理由があった。帝国皇帝は、魔国が送り込んだ魔族であった。
魔国領の北には、獣王が支配する国「フリタニア」があり、長年争いが繰り返されてきた。
人間の大陸を支配する事が出来れば、奴隷となった人間を使って挟み撃ちに出来る。これが魔国の描いていた図である。その為には、獣王に怪しまれぬように大陸を手に入れる事が求められた。そうしなければ、長年の争いで戦力も十分というわけにはいかない魔国が、逆に人間と獣王に挟み撃ちにされたり、手薄を攻められたりしかねない。
不自然にならぬよう時間をかけ、帝国を隠れ蓑に、帝国近隣を侵略していたのだ。
ペレス王国への度重なる挑発やちょっかいも領土問題も、攻め込む大義名分を誘っての事であった。
帝国が傾こうが民が飢えようが、大陸支配の為に的兵力を削ぐためであれば関係なかった。しかし、なかなかボロを出さないペレス王国にいつまでも手こずっていられないと、王子の任務に合わせて帝国兵をヨアナ湖へ送り半ば無理矢理な大義名分作りを命じたのであった。帝国滅亡の報はその直後の事であったのだ。
この事から、ペレス王国が何かしら関与している事が疑われるのだが、城や砦を跡形なくというのが引っ掛かる。仮にペレス王国と同盟国のラキシア王国が全兵力をもって攻めたとしても、半日と経たずに跡形なく城を消すなんて事は不可能だ。
「一体何者だ?」
魔王ガデルガの脳裏には予感めいた靄がかかっていた。確かなのは、断じて良い予感ではない事。
─ そして今 ─
かつての帝国の地には、ペレス王国とラキシア王国の支援部隊が送られ、共に支援を行っていた。
直ぐに支配者が現れれば分かりやすいのだが、両国共に滅亡後の治安維持や食糧支援といった活動に止まっている。
両国は帝国滅亡とは無関係、または、そう思わせたいと仮定するも、「誰が帝国を?」、「この先帝国をどうしたい?」という問いの答えには結び付かない。
暫く様子を見ていたが、支援の範疇での動きしか見られない現状に、こちらから探りを入れるしかないのか。魔王ガデルガは選択を迫られていた。
一方その頃、理不尽の面々は、新たな酒を求めて各地を飛び回っていた。そして、ラキシア王国の王都より東へ行った海沿いの町の酒場で、漁船のクルーとして働く1人の獣人がいることを聞き、初めての獣人に興奮しながらも、ちゃっかり酒で懐柔し、獣王国フリタニアの酒の事を聞き出していたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます