第28話 塚原陽菜の動揺

 


 ~12月15日昼休み~




 ――――――目の前で、この学校の『親友ポジ』の女が発狂していた。


 あくまでも『親友ポジ』。


 親友ではない。


 名前は道枝楓。


 状況が掴めなかった。


 最初、スマホを見ていた愛美の様子がおかしくなり、悲鳴と共に教室を出て行った。


 次いで、杏と楓。


「コレはっ.....違っ、違うんだよ、ねぇ陽菜ちゃん。陽菜ちゃん一緒にこの日いたよね? 私こんなことしていないよね?」


 なんだよ、急に。知らねぇよ、馬鹿が。


 何でが発狂してんだよ。


 佐々木を恐喝してくるように促したのは私。


 昼休みが始まった途端に佐々木を呼び出し、教室の外へと出て行った。


 帰ってきた佐々木の顔面には青あざができていたから、杏がヤキでも入れたのかと思った。


 そのわずか数分後……。




 ――――――なんだよ、これ。



 クラスの連中も、みんなスマホを見ている。


 多分、SNS。そこでがあった。


 楓達を狂わせる何かが。



 にしても、ここは関わらないのが正解。



 バカな手下コマは勝手につぶれろ。



 持ち主の足を引っ張んな。



「楓…………」



 切り捨て、かな。



「楓.........何で、こんなこと.....?」



 ウソ泣き上等。



 私の涙には箔がつく。


 私が涙を流すから、私が声を震わせるから。



 周りはこの状況をさらにヤバい状況だと思い込む。



 明確なグループの分裂。



 ――――――私は関係ない。



 間抜けはこいつらで十分。




「.........っ!! ねぇ、陽菜、私たち友達じゃん、友達だよね!? 陽菜ァ!!!!!」



 ……友達じゃねぇよ。


 コマ風情が人間と対等になろうとすんなよ。キモい。


 トドメ。


「私.....2人のこと信じてたのに.....」


 これで退場すれば、私は「友達に裏切られたヒロイン像」で終わる。



 でも。



 ギリッと自分の歯が擦れる音がした。



 何で、私の日常が破壊されてんだ?


 壊すのは私。


 蹂躙していいのも私。



 去り際、教室の隅でスマホを眺めている佐々木を見た。


 不意に、目が合った。


 この状況を作り上げたのは、間違いなく――――――佐々木。


 このクソ野郎には、それを実現する力がある。


 それが何かは分からない。


 だから、イラつく。


 何をしてくるか分からない、いつものように暴力で支配するやり方の方が、まだアイツには通じる気がする。




『彼は……敵とみなしたものを容赦しない』



 再度蘇る七海の発言。




『後悔………しなさい。彼は



 ――――――畜生。


 ふざけんなよ。


 確実に消す。


 私に復讐しようなんて身の程を知れ。




 教室を飛び出し、追ってくる楓を無視し、体育館裏まで来た。



「はぁ……はぁ……はぁ……、クソ………!!」


 何があったのか、楓達は恐らく嵌められた。


 本人たちもそれに気づいているかは分からない。


 だけど。


 確実に嵌められた。


 スマホを取り出し、色々なSNSを見ていく。


「っ…………!!」


 そして、見つけた。


 Twitterのタイムライン。


 リツイートされてきたのは、3人の爆弾とも呼べる投稿。




「バカかよ……! こんな情報握られてんじゃねぇよ…………!!!!」




 あの馬鹿どもは多分再起不能。



 学校にはもう顔を出せない。



「絶対に許さない……!!!」



 潰す。



 絶対にお前を潰す。




 もう、私も手段を選ばない。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る