音響世界戦線ーエピローグー
その昔、大災害があった。
音の災害。
「
不協和音が鳴り響いてその音で街は崩れ空間は歪み曲がって…そりゃもう悲惨な光景だったとか
そんな中で1つだけ災害の恩恵なのかなんなのか
その音を聞いても生き残った人の中から音を利用して戦える人が出てきた。
もう今となっては私も皆も誰も信じちゃいないけど音楽を武器に戦う事が出来たらしい。
「あほらしっ」
揺れる人の少ない電車の中、スマホのニュースを見ながら呟いた。
私は
よくいる一般人だ。
好きなことはオセロとかのボードゲーム。
苦手な事は歌うことだ。
カラオケとかで初っ端に歌うのプレッシャー凄いから。
学園祭のステージに立ったから分かる。
″人前に立つことの難しさを″
今は特に考えや理由がある訳でもなく電車に揺られてる。
強いて上げるとすれば親に趣味を馬鹿にされた、ただそれだけ。
むしゃくしゃしてどこか遠くへ…ぐらいで。
窓の外は夕焼けで染められた山や田んぼ、畑が広がっているTHE・田舎な風景だ。
きっと今日一日はどこかで野宿かな…
そんな感じで外の風景を記念に撮って友達に送る。
まぁなにもない。
携帯をいじるくらいしか特にやることがない。
そんな感じで親指で画面をスライドしてた時だった。
電車が横に揺れた。
というか
土煙がもうもうと立ち上がる横倒れの電車の中は人が少ないからと言っても悲惨だ。
パラパラと落ちてくる砂埃やガラス。
泣き声や呻き声、血を流して倒れている人や震えている人。
数分遅れてアナウンスが流れ始めた。
「現在……を呼んで……繰…返し…」
流れてはいるけど何を言ってるのか細かくは分からない。
明らかに助からなさそうな人もいる。
床側の窓のガラスは粉々に上のガラスもすぐにでも落ちてきそうだ。
そんな中で私は膝を震わせながら呆然としていた。
動けない。
動く勇気すらない。
流れる血、絶叫、泣き声。
こんな状況で動けるのは一部の「ヒーロー」って呼ばれるような勇気ある人な訳で
私はそんなに勇敢じゃない。
(□□□□□□)
誰かに囁かれたようなそんな感じがした。
勇気を渡してもらったような
人の暖かさを教えてもらったような
なにか出来るような
「えっ?」
手が光っていた。
携帯とか懐中電灯とかじゃなく。
自然と手全体から柔らかく広がるように。
光は時間が経つに連れて形を成して
手に収まった。
「ギター…こんな状況で!!?」
ふざけてるとしか言い様がないレベルだ。
弾くとしても学園祭の静まり返ったステージよりも難しい。
人が泣き叫んでる、倒れてる状況でギター
不謹慎にも程がある。
でも
今は
弾かなきゃ
そんな気持ちに駆られた。
ギターを持って電車の外に這い出る。
もちろん冷たい目線も刺さる。
張り詰めたような空気。
上から順に弦を指で軽く弾く。
弾ける、そんな確信がどこかにあった。
次々に弦を指が勝手に弾いてくれる。
なんとなく体は覚えているものだ
イントロは何回聞いたかも覚えていないくらい。
体を光が包んでいくのが分かる。
確実に″何かが″起きるのが分かる。
これは一長いようで一瞬で
忘れようもない私の一夏の
ありふれた物語 某凡人 @0729kinoko
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