第67話 ダンジョンは池の中

「まさか自分でこの作業をするとは……。人生って思っても無い事が起こるものね。」

「良かったな〜。いい経験が出来て!」


 とは言っても、水を抜くところからは無いわよ…。しかも、出てくるのがダンジョンの入口って、いまいちロマンに欠けるわ。


「……経験と言えば確かにそうだけど……。浅くて小さい池だったのと、私が水を抜く番組を見た事があって、あのバキューム排水を知っていたから何とかなったのよ?……でもバンディエル、これってダンジョンも水没している可能性は無いのかしら?」

「あるぞ?だけど、入っていきなり水の中ってよりは、前室があるはずだ。とりあえず入って確認するまでは、いつも通りやろうぜ!」


 まあ最悪、ダンジョンから戻って来た時に、再び池に水が溜まってしまっても、腰の位置迄の水深だからから何とかなるけれど。


 溺れる心配が無いから、やろうと思ったんだしね。


 それに水を抜くと言っても、全部の水を排水するのは効率が悪いから、土管でダンジョン入口を囲い、最小限の水抜きで済む様にした。


 ダンジョンに入る前で魔力を使い果たす……なんて事にはなりたくないわ。


 さあ、池の水を抜くぞ!





「………よし!何とか入口の階段は見えたわ。…でもこの階段………何段降りると思う?」

「知らねぇよ。降りてみりゃ分かんだろ?」

「簡単に言わないでよ!あのねぇ、あなたも見ていた通り、この階段も水に浸かってたのよ?降りてしまってから戻る迄に、また水が階段を満たしていたら、ダンジョン側からは抜くのが大変なの!」

「そうか…でも、上に行くだけなら、泳げばいいんじゃねぇの?」


 バンディエルめ……。もし階段が何百段もあったらどうするのよ?!ジャック・◯イヨールじゃないんだから、溺れるに決まってるでしょ?!


 黙って私が睨むと、眉を上げて惚けた顔をした。


「なら、お前の『影潜り』は使えねぇのか?水の中でも使えれば濡れねぇだろ?」

「…………あっ!!」


 今度は呆れ顔でフーッと息を吐いて、何処ぞの外国ドラマの俳優みたいに大袈裟なオーバーアクションで肩を竦める。


「ばーーーーか!若返ったのは身体だけか?頭はババアの固さのままかよ?!だいたいお前の魔術は、どれだけ柔軟な発想をするかで、いくらでも応用が利くだろうに…ホント勿体ねぇ!!」


 うう……ぐぅの音も出ないわ………。それを言ったら、そもそも水を抜く必要さえ無いじゃない!池の岸から、ダンジョンの入口まで続く『影』を作ればいいんだもの……。


 でもね!池の水は抜くもんなのよ!!


 ただ、バンデェエルにはそんな文句も言えず、念の為に池の縁からダンジョンの入口までヘビ皮を張り、影を作って進入して行った。





 ………………やっぱり水抜きいらなかったわ。

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葉子の放浪〜ここ何処ですか? いずいし @isuzu15

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