第66話 下山は楽々
山の下り方としては正解じゃないと知ってるわ。
だけどね、このマジックマントには『浮遊』の機能が備わっている事を思い出したの!
試しに1mくらいの高さからジャンプして、マントに魔力を流し『浮遊』をしてみたら、フワッと…もうときめく程、フワッと着地したのよ!
エレガントに着地したのに、足元のガラでよろけてしまったのが惜しかった…。
索敵をしつつ、斜面を飛び、マントに魔力を流して着地!それを繰り返して、あっと言う間に下山!
登りの苦労を考えると、魔力は使ったけど、本当に楽だったわ〜!
「早く着いたわ!まだお昼にもなっていないのに!」
「そうだな〜。でも、魔力はだいぶ使ったはずだから注意しろよ?」
「了解よ!では、空白地帯まで、いざ行くわ!」
「………そんなに気合はいらねぇだろが?」
山から開放された喜びが、思わず漏れてしまったみたいね。
あ……もしかして、こう言う所かしら?まあまあうるさいって言われた所って。
だとしたら、完全に無意識だわ……。それを矯正しようとしたら結構大変よ!………これは、暫くは大目に見てもらおう。
気を取り直して、いざ行かん(心の中ならセーフよ)!
樹海風の森を歩いて行くと、また暫くは代わり映えのしないちょっと険しい散策コース。でも、以前よりも体力の付いた今の私なら、まだ大丈夫!
成長を感じる……。主に脚力の。
初期から使える魔術『イメージクリエーション』は、私の貧困な想像力だと、きっと宝の持ち腐れになっていると思うの。
想像力が旺盛な人たったら、苦労も無く山だって登っていたに違いないわ。
でも、無理はやっぱり駄目よ。いつか綻びて、その時苦しむのはきっと自分だもの。
だから、基本となる身体を大事に、ストレスは溜めずに解消を目指して、これからもやって行きたいわ。
「……あら?少し木の生え方が疎らになったわね?」
「そうだな。もう少しじゃないのか?あの場所が。」
索敵に反応は無いけど、念の為バリアは張っておこう。
陽の光が届いてる。見上げると、深い森では感じる事の出来なかった暖かさ。
ふふ…。実は山登りの最中は、陽当りが良過ぎて日焼けをしない様、UVカットを魔術でしていたのに。
それなのに、暫く薄暗い森を少し歩いただけで、今度はその陽光が恩恵に変わる。
人の心は移ろいやすいものね。
ピンと来る言い回しや四字熟語が思い付かないけど、まあ私は概ね『焼肉定食』があれば、どうにかなるのがもう分かってるから十分ね。四字熟語では無いけど。
「……ここか…池だったのね。しかも湧水池だわ……とっても水が澄んでいて綺麗。忍野八海みたい……魚はいないけど。思い出すわ……あそこで食べたトウモロコシが物凄く甘くて美味しかったのよ…。」
「お前の思い出話って、食い物が頻出するよな?」
「趣味が食べ歩きだったから…。ああ!食べ歩きの話でまた思い出しちゃった!ラーメン食べたい!家系コッテリ背脂増しで!」
「無い物を望むな。虚しくなるだけだぞ?」
………そんな事無いわ!だって、出汁が採れそうな野菜や肉、骨があれば、動物ガラベースのコッテリスープなら近い物が再現可能だと思うの!
麺は……かん水が無いわ。でも、うどんでも大丈夫!まだ試してないけど、ミシンが出来るならミキサーも出来るはず!
「よし…決まった!」
「何がだ?」
「スープを作ることよ!」
「ああ…もう昼飯の時間だもんな?」
そうよ!テールスープも作らなきゃ!あのウシのお肉なら、バンディエルも食べられるし!
「……ああ!!」
「え?どうしたの、バンディエル??」
「あれ……池の真ん中にある水の湧いてる場所、ダンジョンの入口だ。」
「ええ?!あそこが入口なの?!」
池の水を全部抜けと?!
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