第26話 レベリング②

「確認したら全然レベルが上がってなかったの!!1日中走り回って頑張って討伐したのに!!」

「……そんなの当たり前だろ?俺は言ったぞ?この森は弱い魔物しかいねぇって。」

「なら、移動するわ!」

「どこに移動すんだよ?」


 地図を目の前に表示する。

 ……それを見て、私、自分の頑張りを褒めてあげたくなったわ!地図が広範囲に埋まってる!それだけこの森を駆け回った証拠だもの!


 その地図の中に、ぽつんと黒い表示の未踏破の場所があった。え?ここは何かしら…。視界に入ってるはずなのに、地図には反映されていない。


「バンディエル。とりあえずここへ行ってみるわ。何でか分からないけど、地図にキチンと反映されてないのが気になるから。」

「……お?そこか…良いんじゃないか〜!」

「バンディエルはそこが何かを知ってるの?」

「そんなに遠くないんだから、行って自分の目で確かめろ。その方が早いし確実だ。」


 確かにすぐ行ける距離だけど、教えてくれても良いじゃない!しょうがなく、疲れて重い足を動かす。


 ああ、本当に色々疲れてる……。疲労の回復って魔術で出来無いのかしら?自分に鞭打つ趣味は私には無いから、試すだけやってみよう。


 大事なのはイメージする事よね。過程は一先ず置いて、疲れていない自分、エナジー投入した時の自分をイメージ。


「疲労回復!元気溌剌!」


 そう唱えると、魔力が抜けて行く感じと共に、身体がフッと軽くなり、足が浮いてその場に浮遊した。


「よし!どうやら翼を授ける系のイメージが反映された様ね!なら、このまま行ける所まで行くわ!」

「へっ?!お、お前なにをしたんだ?!!」

「行くわよ、バンディエル!着いて来なさい!」

「ま、待て待て!!嘘だろぉ〜〜〜〜!!」


 バンディエルの叫びは無視ね。到着優先で、地図の黒い場所へまっしぐらよ!


 浮遊しているのは、地上から約30cmくらいの高さ。スピードは…自転車くらいかしら。

 怖くもないし快適だけど、ドンドン魔力が減っているのが分かるわ。


 木々の合間をすり抜け、高い下草は足を曲げて回避。低空でも、空を自由に飛ぶこの感じ。自然と気分を高揚させた。


「……到着!運賃が魔力払いの移動方法だったわね。1メーター0.5は取られたから、今後も使って距離を伸ばさないと。でも、早く着けたし本当に楽ちんだったわ〜!」

「お、お、お前!!ふざけんな!!凄え引っ張られただろうが!!!」

「だったら、今度は召喚を戻してからやる?」

「うるせぇ!!一回やったらもう大丈夫だ!ただ、急にやるのはよせ!!」


 バンディエルは、普段からフヨフヨと風船みたいに浮いてる曲に変なの。

 まあ、それはさて置き、地図に表れない黒い箇所の正体が分かった。ぽっかりと先の見えない入口は、紛う事無き洞窟。なんだ、洞窟か。


 その入口に少しだけ入って、森に戻ると地図の真っ黒から穴の表記に変わって、名称が記載された。


「え??フレストダンジョン??……何それ。ケイブじゃなくてダンジョン?…………ねえバンディエル、ダンジョンってどう言う事?!ここは洞窟型の地下牢なの?!」

「嘘だろ?!!」

「何が??」

「お前……ダンジョン知らねぇの?」


 え?そんなにメジャーな物ではないわよね?寧ろ迂闊に入ったら、閉じ込められそうで怖いわ…。


「地下牢じゃなかったら、何かは知らないわ。」

「マジか〜!お前の記憶が古過ぎて、俺驚き!このダンジョンってのはな、まあ、簡単に言うと魔物の住処。奥へ行けば行くほど、通常は魔物が強くなる。あとは…地上の魔物と違って倒した本体は残らず、その一部を残して消えるな。加えて、運が良ければお宝がてにはいる!」

「お宝?!服とかも手に入るかしら?!」


 魔術で綺麗にしても、やっぱり着替えをしたい!だって今の所、パジャマの上に追い剥ぎした服を重ね着しているし、この一着しかないんだもの……。


「おう!希望の物が出るかは知らねぇが、出る場合もあるぞ?」

「……そうなのね。よし!どうせ街にはまだ行けないから、入って探すわ!ついでに魔物の討伐もする!」

「それがいいぞ〜!少なくとも、森の魔物を相手にするよりは、経験値が貰えるからな!」

「分かった!じゃあ、少しずつ入って様子を見るわね!……何だか最初の洞窟を思い出すわ〜。」


 洞窟放置の時の影響か、忌避感無くって良かった…のかしら?どちらにしても、服が手に入る可能性は捨てられないわ!頑張りましょう!!

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