第23話 スパルタ レベルアップ

「………おい。」

「…………………………………………。」

「おい!!いい加減にしろ!!アホ女!!!」

「はっ!!……びっくりした…何か言った?バンディエル??」


 つい、今晩の猪鍋(塩味)に入れる野菜を夢中で収穫しちゃった…。全てがそのまま、酸化も劣化もしないなんて夢の収納庫があるんだから、予備も含めて採れるわねって、思ったらもう止まらなくなったのよ!


 一つ残念な点は、冷やしたり出来無い事かしら。まあ、それはフリーズドライをやめて、冷やしてから収納庫に入れれば解決するわ。


 そして、猪鍋にキノコを入れたくて探して回ってたけど、食べられるのは見つけられなかった……。残念ね……。お出汁の代わりにしたかったけど。所で、何だかバンディエルが不機嫌な感じ…。私、何かしたかしら……?


「どうしたの?バンディエル。」

「どうしたもこうしたもねぇ!!草ばっか採って全然進んでない!!それと、俺のメシ魔石も狩れや!!」

「猪の魔石だけじゃ足り無いの?分からないから、1日にどの位必要なのか教えてくれる?」

「あればあるだけくれたら良いんだよ!俺は魔石を得て成長するんだ!そうすれば、お前の使う魔術も強力になるんだぞ?!それに魔物を倒してレベルを上げれば、お前の体力と魔力も上がって死に難くなんだろうがよ!」


 あら、そうなのね。早く言ってくれれば良いのに。でも、確かに理不尽な暴力に既に晒されている身としては、自分自身を鍛える事は必要不可欠だわ。


「でもバンディエル。私のレベルってどうして上がったのかしら?魔物を倒せば上がるの?」

「魔物でも人間でも倒せば経験になってレベルは上がるぞ?」

「人でも上がるの?!」

「ああ。因みに魔石は魔物にしかないからな?!魔物を倒せよ!!魔物を!!!」


 

◇ ◇ ◇



「ほら!右手に角ウサギが2体居るぞ!!」

「分かったわよ!!ちょっと待って!!」

「その先に、お前のお気に入りの鹿もいるぞ?早く倒せ。そうしたら、食っても平気なキノコの場所を教えてやる。」

「何でさっさと教えてくれないのよ!!!」

「お前が採取ばかりするからだ!!」


 もう!信じられない!!バンディエルの話を聞いて、じゃあ魔物を倒してレベル上げしなきゃねって言った途端、バンディエルの察知した場所に行かされては魔物を討伐し、サルやイタチやヘビまで見付けた魔物を全て相手させられた!


 ヘビなんか、パニック映画にでも出れそうな大きさで、胴回りは私よりも太く、長さも10m以上あったのよ?!しかも、食べられない魔物ばかり!!


「もうダメ!!今日はここまで!!疲れたからこれ以上の魔物は倒さないわよ!!」

「何だよ根性ねぇな。ちんたらレベル上げしてると、さっきのヘビに丸飲みされるぞ?」

「その前に教えてよ!!」


 うぅ〜〜!!疲れた!!本当に疲れた!!バンディエルのスパルタ!!魔石が欲しいからって、こんな立て続けに討伐させることないでしょ?!


 魔石だけ取って、後は収納庫にポイッ。今日はもう、他の事をする気になれないわ。バンディエルは魔石を沢山手にし、笑顔で砕いては吸収してる。


 それにしても、魔石って魔物本体のサイズに依存しているのかしら?ハイ○ースイノシシとパニックヘビの魔石は、他の魔物の魔石とは比べられない程に大きかった。


「はぁ〜〜…疲れた。デスクワーク主体の元事務職員をこんなにこき使って動かすとか鬼畜の所業よ?!」

「全てはお前の為だ………。」

「……もっとまともな嘘を言いなさいよ!!どう見たって自分の為でしょ?!」

「そうとも言う。たが、お前のレベルも上がったはずだ。お互い様。あ〜〜〜美味い!!ヘビ最高!!」


 こいつめ〜〜〜!!!今日はゆっくり猪鍋をつつこうと思ったのに!疲れ過ぎて用意する気にもなれないわ!朝と同じだけど、肉野菜炒めで夕飯にしよ……。


 これだけ疲労困憊するまで魔物討伐させられたんだから、ちゃんとレベル上がっているんでしょうね?!




左山葉子(38歳)


レベル15


体力 54/178

魔力 39/197


魔術 イメージクリエイション


属魔 バンディエル




「ちょっと!!確かにレベルは上がったけど、何で体力が減ってるのよ?!!」

「ん?そりゃ、疲れてるからだろ?寝りゃ治る。飯食ってさっさと寝ろ。朝には全快だ!!」

「………。」

「どうした?また明日もレベル上げすっぞ?レベルが上がれば疲れ知らず!!もっと討伐出来るな!!」


 私は今日、属魔の言う事を鵜呑みにしてはいけないと学んだ。明日は絶対休みにするわ!!!


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