第17話 コミュニケーション?

「そう言えば、街道の近くを歩いてたんだわ。気を付けないと…。あと、狩りの最中と仕留めた時もね!」


鹿肉に塩を塗り、バジルをまぶして加工しながら、改めて地図を見る。

街道には、偶に人が歩く速度より早く移動している白い点が通る時がある。


何度か見返して気付いた。


自分 → 青い点

未知の生物 → 白い点

敵対生物 →赤い点

死んだ生物 → グレーの点

 

今はこの鹿と私だけ。

あの5人は土の中…。


魔術を使った私を見て、慌てた残りの男達が 『魔術士様とは知らず申し訳ありません!』 とか言ってたけど、構わず魔術を放った。


だって、手にはしっかり武器を握ったままだったし、こっちの隙を伺う様子が “申し訳ありません” って態度ではなかったのよね。

それに私の鹿を盗ろうとしたし。


しかし、魔術士“様”ね……。

ミエルが言ってた様に、偉い位置付けではありそう。


まあ、私には関係無いけど、向こうが勝手に間違える分には、利用させてもらおうかな?


それにしても、私、この世界に来てサイコパスになっちゃったのかしら…?

罪悪感が全く感じられないのよね……。


寧ろ、敵対して向こうから攻撃して来たんだから、死んで当たり前だと思ってる。

それに反応して、やり返す事にも一切躊躇いが無い。


ただ、少なくとも、この変化が無かったら、ミエルと会った森で私の行く末は望まぬ方に変わっていただろう。


あの首輪を付けられ、自由を奪われ……。



「ふぅ〜〜。こんな所かしら。」


考えながらも手を動かし、持てる分の鹿肉を加工して、一息付く。

まだまだ沢山残ってるのに……持ち歩く限界が先に来ちゃうよ。


「うぅ〜〜〜!勿体ない!!どうにか持って行きたいけど…。そうだ!収納魔術って無いのかしら?……試そう!」


イメージするのはやっぱり、あの有名な四次元のポケットよね!

今着ている服にはポケットが無いから、それもイメージで行くしか無いわ。


「助けて〜ドラ○もん!鹿を収納したいの!」


…………ダメか。くっそぉ〜……!

鹿肉、微動だにせず……。


「はぁ…。そう、上手くは行かないわね。でもこのままだと、勿体ないオバケが鹿の姿で夢に出てきそうだわ。」


今日食べ切れる分の鹿肉を切り分け、塩を振る。

立派な赤身肉。それも、若干のサシが入ってて、美味しそう。


「……仕舞えたら、焼く以外も色々チャレンジしたいなぁ。煮込みも美味しそうだし。鍋が無いけど。……ああ、ポトフでも食べたい。」


ここ3日、肉肉肉肉肉魚肉肉魚肉…とにかく肉率が高い。

そろそろ、炭水化物と野菜が恋しいよ〜。


「野草なんて、下手に食べたら食中毒になりそうで、怖くて手が出ないしね〜。調べる手段があれば採るんだけど。」


ペタペタと、塩を塗付けステーキ用に切った肉を眺める。


『鹿肉 食用可能 煮込みがオススメ』


「はいっ?!」


……え??何か急に説明が出た!

あ……私、調べようが無いと思ってたから、試してもいなかったわ…。

地図と同じく魔術で調べられるって事かしら?

もう一度やってみよう!


『鹿肉 食用可能 ステーキでも食える 二度目だぞ?』


「はいっ??!!」


なんだか、指摘?注意?をされた気が……。

なにこれー?!も、もう一回やったら、どう返して来るかしら?


『鹿肉 どんな方法でも食える 次は無い』


「短気!そんなに直ぐ怒らなくてもいいじゃない!」


 魔術でのお調べ機能に、若干のコミュニケーションを感じてテンションが上がった。

でも、3回までらしい………。


今後、利用制限の増加または、解除を求めます!

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