第15話 森にはヤツがいる!

 ショックを引きずったまま、岩と岩の陰になっていた場所に、棺ベッドを作り、腰を掛けた。


もう夜になっちゃったし引き籠もろう…。

ウサギと魚はあるし。

猪は消えたけど…。消えたけど……。


一体何処に消えたのよ!!!


ホント意味が分かんない……。

今迄、森や草原で討伐した敵はそのままの姿を留めていた。


洞窟の蜘蛛みたいに消えるにしても、少しは何かを残していってよ!

お肉とか、お肉とか、お肉とかさー!


ランダムで何も残りませんとかなの?

でも、倒した時はそのままだったのに?


「……もし、倒した獲物が確率とか運で消えたりするなら、ギャンブルもいいところだわ…。しかも、こっちは命懸けとか、割に合わないにも過ぎる!」


少し水で戻してから火で炙った、魚とウサギ肉を齧る。

猪を獲ったからと言って、猪鍋が食べられる訳でも無いけど、肉が消えた上に、どう使おうかな?!と、思案していた立派な牙と皮までなくなった…。


この世界、理不尽だわ…。


改めてそう感じて、ため息を漏らす。


「…どうせ消えるなら、こっちのウサギにして欲しかったよ。沢山あるし…そろそろ持って歩くのも大変だし…。乾燥はしてあるけど、常温保存でいつまで保つか心配だなぁ。」


投擲用の石も結構重い。

でも、咄嗟に対抗する手段が無くては、困るのは私だ。

慣れていない魔術だって、失敗する可能性が残ってる。


あと、あの三人組を倒した時に、身体からが減った様な感じがして、疲れ?虚脱?みたいな、とにかくいきなりの変化を感じた。


魔術も自分の中にある何かを原動力としているのかしら?

動いて体力が消耗するのと同じ様に。


だとしたら、魔術の使える回数を把握しておかないと。

きっと、使う魔術の種類でも減る量は違うわよね?


分らない事だらけなんだもの…。

少しづつ確認して行こう。


夕食を食べ終え、棺ベッドに潜る。

ここに猪の皮を敷きたかったのー!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



……おはようございます…。

今日も無事、朝を迎えられました。

ラジオの声は聞こえませんが、新しい朝が希望の朝とならん事を祈ってます。


「…さあ、昨日は昨日!今日は今日だよ!気を取り直して行きますよ!」


1人でのセルフ気合も慣れて来たなぁ。

また、ゾンビの如く這い出て、伸びをする。


ん〜〜〜〜〜!天気は良き良き!

新たな糧を求めて、頑張る…ぞ………?!


伸びをした後、腰掛けようと思った寝床の棺に、無数の爪痕が…あるんですけど………。


私……昨日は色々あって、確かに疲れてた。

でも、これだけ外から攻撃?されて気付かないって……。


…………………どうしよう。……怖い。物凄く。


これは、蜘蛛でもウサギでも猪でも無い。

まだ私の知らない…夜行性の動物だ…。


そして、足跡も棺の周りに沢山残っている。

どう見ても、入口を探してウロウロした感じ。


その残された爪跡と足跡から、四足歩行の動物で、群れで行動しているのが嫌でも分かった。


棺に残された爪跡は、中央に長く2本、その両脇に1本の4つの爪痕。

野犬……考えたくないけど狼。しかも群れ。


今はいないけど、夜になったらまた来るよ…ね?

ここがそいつらのテリトリーなら、早く移動しなきゃ。


でも、何処へ?

私が紛れても気にされない様な、人の多い所の方が良いかもしれない。


でも、それは何処にあるの?


膨らむ不安を紛らわす様に、荷物を取り出し、棺を消して森を進む。


私は何処へ向かってるんだろう……?

地図でもあれば良いのに…。


その瞬間、フワッとかすみが纏まる様に収束して、目の前に表れた……地図が!!


「うそっ!!何これ?!」


触れようと手を伸ばしてみても、触る事はできない。

でも、そこに表れているのは、間違いなく地図だった。


ただ、ほんの一部分のみ。

どう見ても私が歩いて、実際に目にした場所だけだ。


「……ミエルの村も表示されてる。行ってはいないけど、目で見た場所も表示されてるのね?」


自分の現在地らしき位置には、青く丸いマークが付いてるっぽい。


「私の求めていた地図とは違うけど、行く宛もないまま彷徨うよりはマシだね。」


試しにグルっと周りを見回す。

もう一度、地図を出してみると、少しだけ地図が広がっていた。


「よし!これなら行けるわ!ミエルの村の端に道っぽいのがあるから、先ずは少し距離を取りつつ、道沿いを進もう!」


希望の朝が危うく消えそうになったけど、一縷の望みが残されていた。

そして、朝ご飯も食べずに歩いていたせいで、お腹がクゥ〜っと鳴った。


うん。胃も活動してきたみたい。

さっきまでは、緊張と恐怖で、それどころじゃなかったからね…。


水を飲み、いつものウサギ肉を齧る。

元来、胃は丈夫だった。

強い頭痛薬を飲んでも、胃が荒れる事はなかったし。


あ……。そう言えば、全然頭が痛くない。

今更気づき、ちょっとだけラッキー!と自分を励ました。


そして、もし頭が痛くなったら魔術を試してみようと、そう思いつつ、歩みを進めて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る