第13話 ジビエ探索と自分検証

空腹は、きっと猪のせいだと思うの。

さっき見掛けた時、以前、旅行先で食べた猪鍋を思い出しちゃったから。


お野菜もいっぱい入って、味噌仕立てのスープがまた美味しかったんだよな〜。

〆のうどんも……。


ウサギ肉で空腹を誤魔化しつつ、魔法……改め魔術で攻撃が出来た事を振り返る。

魔術でウサギの角を加工したり、石を釣り針に加工した時に思ったのよ。

魔術って、何でも出来そうだって。


最初に出した水も、調整出来ずに沢山の量を出してしまった原因は、直近で見た水まんじゅうのせいだと思うの。


そこから、魔術って、思い描いたイメージや記憶で発動するのでは?

そう仮定してみた。


今度、獲物を獲る時に試してみよう!

アイツ等に急襲される前までは、悠長にそう考えていたわ。


あの時、弓でいきなり射られ、とても驚いた。

その痛みと痺れに慌てた。


そして、深く考えずにやった魔術がきちんと発動し、自分に必要な治療を施せた。


次に攻撃…。

弓矢相手では、私の投擲が敵わない事は分かった。

しかも複数人を相手になら、尚更、勝ち目が無かったと思う。


でも、ぞれを冷静に考えるより、怒りが勝った。

あの時のアイツ等の下卑た笑い………。

それを見た瞬間の不快感と憤り。


高みの見物よろしく、一段高い岩の上に立っていたアイツ等を、下から刺し貫くイメージで魔術を唱えた。


だってアイツ等の笑いって、でしょ?

私はそんなの言うまでもなく御免被るわ。

だから、自分達がやられてみたら?って思ったのよ。


それで出たのが“岩の槍”。

丁度、岩の上に立っていたからだけどね。

木の上だったら、発動したのは木の槍だったと思う。


あと、3人を岩の槍で仕留めた事実に、何の罪悪感も無い事。

初めて自分が手を下したその死体から、平気で身包みを剥がして使っている事。


自分が分からなくなるのって、とても不安なんだね……。

でも、少なくとも以前の私では出来なかった事と、現状の変化が原因として考えられた。


魔術を使った人殺しが、サバイバル耐性の一言で片付けられるとは、到底思えないけれど、因果関係はありそうよね。


ただ、この世界を生きていく上にでは必要な耐性なのかもしれないわ。


ミエルにあの3人を倒した事を伝え、そのマントを渡した時、彼女は何の質問も躊躇いも無く、受け取っていた。


奪ったり、奪われたり、殺したり、殺されたり。

それらが日常に多く潜んでいる事を、彼女が知っているからだと思ったわ。


答えの無い “かもしれない” をいくつも並べて、自分を正当化しようとしてるみたい……。


でも、私は理不尽な暴力に晒されたくはない。

それに、我慢は仕事で十分したわ!


今はホームレス。

魔術で清潔は保てるから、女としてギリギリセーフ?かしら…。

まだマントの下は、パジャマだけど…。


考えてみれば、第一次産業に転職した様な物よね!


あそこに見える猪を獲って、今後も生活を成り立たせて行くなら、またぎ?狩人?が今の私の仕事よ!


さあ!猪!私の糧になってもらうわよ!

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