第10話 暁光 夜明け

「よう、今日は早いじゃないか尋斗」


 横井だ。朝、少しばかり早く起きてしまった俺は少しばかり早めに学校についてしまった。


「ああ、夢見がよかったからな。少しばかり早く起きた。それでな」

「ふーん。それよりさ、昨日のドラマ見たか?」

「ああ見たよ。相も変わらず松尾由梨ちゃん可愛かったよな」

「そうそう!ほらあのシーンとか超可愛くね?」


 いつもと変わらない生産性皆無な会話。ちょっとばかし奇妙な夢を見たからって、俺の日常は変わらない。ホームルームが始まるまでの時間、追加で現れた友人たちも交えてテケトーに盛り上がる。


日常なんてこんなものさ。変化もクソもない。何もない。


「今日は転校生を紹介する。みんな仲良くしてやれ」

「はじめまして夢野葵兎きとです。よろしくお願いします」


ペコリとお辞儀する転校生。ボーイッシュとはいえ美少女の転校生だ。クラスの男子たちがざわめく。

「席はそうだな… 。川瀬、お前の隣空いてただろ。夢野、場所はわかるな?」

「はい」


 幾人かの男子からの奴当たり染みた嫉妬の視線。彼女が俺の隣の席に座る。


「よろしく」


 彼女の言葉になんて言ったらいいか咄嗟に浮かばない。代わりに口が勝手に動いた。


「おはようキト。昨日の夢見はよかったか?」


 一瞬キョトンとしたキト。けれどもそれは皮肉気な笑顔に変わる。


「まあ悪くなかったよ。そういうヒロトは?」



「まあ俺も悪くはなかったさ」

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夢幻夜譚 山﨑或乃 @arumonokaki

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