第70話全員無事合格した自由登校期間の一幕
三年生、全生徒の受験が終わると僕らは自由登校期間に入っていた。
言わずもがなだが僕もさらりもかがりもカグヤも無事に同じ大学に合格した。
特に学校に行く理由も見当たらない現在は家で遅くまで眠りダラダラと過ごしていた。
「入居先決まったよ。卒業式が終わったらその足で向かうんだ。真田くんはどうしてる?自由登校期間になって遅くまで起きていたり寝ていたり…ダラダラしてるんじゃない?」
カグヤからのメッセージを目にして見透かされているようで軽く表情が緩む。
「その通りだよ。今もダラダラしてたところ。荷ほどきの作業とか一人で大丈夫?手伝えることがあったら言ってね」
「良いの?でも彼女さんが怒らない?」
「カグヤさんには言ってなかったね…受験をきっかけに別れたんだ。今はフリーだから何事も自由だよ」
「そうなの?でも同じ大学に通うんでしょ?」
「そうだね。今は少し気まずい友達って感じだよ」
「そうなんだ…。じゃあ荷ほどき手伝ってほしいかも」
「分かった。こっちに着いたら教えて。その時は向かうから」
「うん。ありがとう。楽しみにしてるね」
「僕もだよ」
やり取りを終えるようにカグヤはスタンプを送ってくる。
メッセージのやり取りを終えると再びダラダラとした時間は流れていく。
「先輩!学校来ないんですか〜?」
再びスマホが震えて画面を覗くと五月雨から通知が届く。
「自由登校だからね」
「可愛い後輩が二人も待っているのに!」
「4月から僕らはずっと居ないよ」
「だから最後にもっと一緒に居たいんですよ!」
「また今度ね」
五月雨は怒っているキャラクターのスタンプを送ってきたのでやり取りを終了させた。
スマホをベッドに置くと五月雨に対して少しだけ冷たかったかなと反省をする。
「三年生になったら受験が控えてて…今から不安です。雪見さんはどのように向き合っていましたか?」
白から通知が届き僕は少しだけ微笑む。
「気が早い。とは言わないけれど。今から重圧に耐えようとしたら自分を見失うよ。受験は人を狂わせるぐらいのプレッシャーで襲ってくるからね。それを払い除けるには勉強するしか無いけど…でも一人にならないほうが良いよ。友達や仲間を見つけて一緒に励まし合って頑張った方がいい。未来を想像して楽しんで勉強してね」
「アドバイスありがとうございます。私達の存在も少しは雪見さんの力になりましたか?」
「もちろん。皆が居なかったらとっくに折れてたよ。本当にありがとうね」
「それなら良かったです。実は…私も皆さんと同じ大学に通うつもりなんです」
「そうなの?じゃあ受かったらクリティカルっていうサークルを訪ねて欲しいな。春から僕らが所属するサークルなんだけど。上級生からの推薦でしか入れないサークルなんだ。僕らも南雲さんからの推薦で入ることになっているんだけど…気が早いかもしれないけど僕も白ちゃんを推薦するよ」
「何をするサークルなのか不明ですが…雪見さんとまた過ごせるなら。わかりました」
「あと五月雨さんの面倒も見てあげてね。頼んだよ」
白は最後に敬礼をしているキャラクターのスタンプを送ってきたのでやり取りを終了させる。
このままさらりやかがりからメッセージが届くのでは?としばらくスマホを眺めていたのだが、そこからは誰からも通知が届くことはなかった。
そして、卒業式はもう目前まで迫っていた。
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