第68話受験本番は目前

テストの順位が掲示板に張り出されている。

その順位を目にして僕らは固唾をのんでいた。

3位、副嶺さらり

2位、真田雪見

1位、姫野かがり

なんと僕はさらりの順位を追い越してしまい2位となる。

通常通り1位はかがりで僕らは言葉を失う。

順位を目にしたさらりは悔しさを全身で表してその場を後にする。

「空回ってるわね。一人で勉強する限界はあるもの」

「でも点数は上がっているけど…」

「私は全力でやれたから今回も全教科満点だったけど。雪見くんの成長は凄いわね。2点差まで追いつかれてる。さらりは3点差か。殆ど僅差じゃない。こんなの勝ち負けなんて無いようなものよ」

「僕もそう思うけどね。さらりちゃんはそう思ってないんだろうけど…」

「そうね…私がライバルだなんて言ったからプレッシャー感じているのかな…」

「ちょっと気の毒な感じはするけど…自分で這い上がるか僕らの救いの手を受け取って欲しいけど…」

「そうね…」

テストの順位が決まると二学期も終了に近付いていく。

二学期が終了すると同時にかがりは生徒会長を引退し本格的に受験に集中するようだ。

僕ら三年生の受験本番はもう直前までやってきていたのであった。


冬休みの間、かがりは予備校には通わなかった。

さらりと顔を合わせるのが少しだけ気まずいという理由も合ったのだろうが…。

両親の実家に帰省しなかった僕の受験勉強を毎日見てくれた。

早朝から開いているカフェで待ち合わせると日が暮れるまで勉強三昧だった。

この一年で気付いたことがあるとしたら僕は思いの外にも勉強が嫌いではないという事実だった。

やればやるだけ自らの力になり結果が出ればまた努力する気にもなる。

努力が結果に繋がる勉強は僕の肌に合っているようだった。

かがりの最終追い込みの日々を終えて冬休みは終りを迎えた。

三学期が始まって受験ムードの張り詰めた雰囲気にも慣れ始めた頃。

受験本番はもう目の前までやって来る。

「もう本番も目前ね。自信ある?」

図書室での勉強会を終えた僕とかがりは帰路に就いていた。

「まぁまぁかな。二学期の期末テストで2位になれたのも良い自信に繋がったよ」

「そうね。その一方でさらりは追い込まれていると思うけど…」

「それはそうだね…あの日以来、なんて声を掛けたら良いのかわからなくなって…」

「私もよ…冬休みも無理して追い込みかけていたんじゃないかな…正月太りもせずに逆に痩せていっているように見えたし…ちゃんと食べているのかな…心配ね…」

「僕らが手を差し伸べても受け取ってはくれないだろうし…僕らの存在は今のさらりちゃんには鬱陶しく思えるのかもね。寂しいことだけど受験が終わったらいつも通りのさらりちゃんに戻ると思ってる。だから受験が終わったらちゃんと皆で話をしたいな」

「そうね。もうこのキツイ雰囲気からも開放されるんだと思ったら…早く受験が終わってほしいわ」

「もう後は本番だけだよ」

「そうね。お互いに頑張りましょう」

僕とかがりは寒空のもとでお互いを鼓舞すると数日後に控えている本番に向かうのであった。

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