第67話高校生活最後の文化祭

九条星を中心にクラスの展示物は完成に近付いていた。

僕とかがりは勉強の息抜きで数回手伝いを申し出て雑用的な仕事をこなしていた。

クラスメートの中でもさらりは手伝いに一度も顔を出さなかったらしい。

「皆勉強に集中しているね。受験が控えているから少しだけ雰囲気もピリ付いているし」

九条は少しだけ困ったような表情を浮かべて嘆息する。

「でも無事に完成しそうだし誰のことも責めるのはやめよ」

かがりはさらりの立場を考えているのかフォローするような言葉を口にする。

「誰も責める気無いよ。私も自由に展示の進行できたから楽しかったし」

「そっか。文化祭当日も楽しもうね」

かがりの言葉に九条は頷くと文化祭前日までに展示物は完成するのであった。


文化祭当日。

今年の文化祭は体育祭復活により二日間に戻ってしまったが文句を言う生徒はそう多くなかった。

僕とかがりは午前中、二人で校舎を周ることを決めていた。

「五月雨さんのクラスはメイド喫茶らしいよ。行ってみる?」

「今更感が凄いわね…でも興味あるから冷やかし程度に行ってみようか」

僕らはそのまま五月雨のクラスまで向かうとメイド喫茶の教室に入室する。

「いらっしゃいませ…って先輩たちじゃないですか」

五月雨は余所行きの表情を崩すと普段通りの顔に戻る。

「空いてる席に座ってください」

「衣装似合ってるね」

「ありがとうございます♡」

席に腰掛けるとメニューを開いてアイスカフェラテを二つ頼んだ。

「少々お待ちください」

五月雨はバックヤードに戻っていくとかがりは内装を確認しているようだった。

「結構凝ってるわね。一年生は時間があって羨ましいな。私が一年生の時はあまり楽しめなかったな…」

「僕も友達はいなかったし。当時は他人に興味もなかったから全然参加しなかったな」

「去年の文化祭は…」

そこでかがりは余計なことを言ってしまったとでも思ったのか口を噤んだ。

「大丈夫だよ。気にしてない。去年の文化祭は楽しかった思い出だよ」

「そう…今年も楽しい思い出にしてみせるね」

「ありがとう。一緒に楽しもうね」

他愛のない会話を終えた所で五月雨がバックヤードから注文した飲み物を持ってやってくる。

「当番が終わったら私も混ぜてください」

「うん。飲み終わったら白ちゃんのクラスにも行ってみるよ」

「はい。ではまた後で」

五月雨は接客に戻っていく。

残された僕とかがりは飲み物をゆっくりと飲み干すと会計を済ませて白のクラスへと向かう。

「白ちゃんのクラスはお化け屋敷だって」

「へぇ。白さんもお化け役なのかな?肌が白いし似合いそう」

かがりはニヤニヤとした表情で戯けた言葉を口にする。

そのまま二年生の階に向かうと白の教室を目指す。

「雪見さんにかがりさん。二人ですか?」

受付の椅子に腰掛けていた白を見て僕らは軽く手を挙げる。

「白ちゃんはお化け役じゃないの?」

「はい。お願いだから受付に居て!居てくれるだけで良いから!ってクラスメートに言われて…」

「それは…クラスメートも考えたね」

僕とかがりは顔を見合わせると軽く嘆息した。

「受付の担当が終わったら私も一緒に周りたいです」

「分かった。後で五月雨さんも合流するから」

「わかりました。では後で」

その場で白と別れると僕とかがりは沢山の催し物を見て周った。

午後から白と五月雨が合流するとその後の文化祭も楽しむのであった。


二日間の文化祭が終了するといよいよ期末テスト期間はやって来ようとしていた。

「今回こそ…1位取るから」

さらりはかがりに宣戦布告をする。

かがりは澄ました表情でそれを受け流す。

「負ける気はないわ」

二人は視線を交えるとキッと睨み合った。

「雪見くんにも負けないからね」

かがりから視線を外し僕に顔を向けたさらりに軽く微笑むと一つ頷いた。

「お互いに頑張ろうね」

僕の言葉を気まずそうに受け取ったさらりは教室を抜けていくのであった。


そして、期末テスト期間が終了して結果が掲示板に張り出されるのであった…。

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