第66話文化祭が迫っていた

「体育祭が終わったばかりですが既に次のイベントが動いています。次は文化祭ですが三年生は受験も控えている人も居ると思います。ですので準備期間は希望者を優先に文化祭の進行をお願いします」

担任教師が教壇で話を終えると文化祭実行委員が代わるように教壇に立つ。

「進路希望用紙に進学以外を書いた人は出来るだけ手伝ってほしいです。ただ多くの生徒が進学を希望していると思うので例年通り三年生はあまり積極的に文化祭に参加しません。今年もそうなると思いますが受験の息抜き程度に楽しみましょう」

クラスの文化祭実行委員は黒板に催し物の候補をいくつか書いていくと多数決の時間になる。

「ではうちのクラスは星の展示にしようと思います。天文部の部長である九条さんも居るわけですし。皆さん九条さんを中心に出来るだけ協力してくださいね」

拍手が巻き起こると再び担任教師が教壇に立った。

「じゃあ九条。負担をかけるようで悪いが頼むな」

九条はそれに返事をすると残りの時間は自習になるのであった。


放課後がやってくるとかがりは僕の席にやって来る。

「私達は進学だから文化祭にはあまり参加できないわね」

それに頷くと近くの席の九条に軽く謝罪の言葉を口にした。

「九条さん。ごめんね。手伝いたい気持ちはあるんだけど…勉強が大変で」

言い訳のような言葉を口にすると九条は何でも無いように微笑む。

「良いよ良いよ。私も進学だけど…進学先でも天文学の道に進むから。これも良い経験になると思う」

「そうなんだ。九条さんも将来のことしっかりと考えているんだね」

「まぁね。真田くんももう少し自分のこと考えたほうが良いんじゃない?」

九条から急に釘を差されてしまい驚いた表情を浮かべていると彼女は首を左右に振った。

「考えていると思うけど…あまり女性を泣かせないほうが良いよ。後で刺されても文句言えないんじゃない?」

「いや、僕はそんなつもりじゃ…」

「そんなつもりじゃなかったとしても。泣いている女子はいると思うけどな」

九条はそこまで言うと前方の席でカバンに荷物をしまっているさらりを指さした。

「あぁ…振られたのは僕なんだけどね…」

「そうなの?てっきり真田くんが本格的にハーレムに力を注ぎだしたのかと思ってた」

「そんなわけ…」

「まぁ事実はそうだったとしても。周りはどう感じているか分かったものじゃないでしょ?女子は大事にね」

「うん。忠告ありがとう」

九条との会話を終えると彼女はカバンを持ってそのまま教室を抜けていく。

前方の席にいたさらりも荷物を持つと一度こちらを見てから廊下へと向かっていった。

「私達も図書室行こう?二学期も始まって結構経つから、ちゃんと勉強モードに切り替えないと。イベント続きで忘れているかもしれないけれど期末テストも受験も控えているよ」

「そうだね。もう少し順位上げておきたいし」

かがりの言葉に返事をすると僕らは荷物を持って図書室に向かうのであった。

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