第64話放課後練

「リレーなら私に任せてください!」

放課後のグラウンドの端で待ち合わせると五月雨が元気よく手を挙げた。

「五月雨さんもリレーに出るの?」

「はい。先輩は覚えてないかもしれませんが…中学時代もずっとリレーの選手だったんですよ」

「そうだったんだ。それなら心強いな」

「はい。何でも聞いてください!」

「じゃあ…基本から教えてください」

五月雨に頭を下げると教えを請う。

「私達は適当に運動しましょ」

かがりは白に声をかけるが彼女は明らかに嫌そうな表情を浮かべる。

「運動したくないです…」

「苦手なの?」

「体育で十分です…」

「体育祭に向けて頑張ったほうが良いんじゃない?どの種目に出るの?」

「障害物走です。だから事前準備も出来ないので…私は見てますね…」

白は運動を完全に拒否すると体育館近くの日陰に身を潜めた。

「じゃあ私は適当に走り込みでもしてるわね」

かがりは白に呆れたように嘆息すると準備運動を行ってから走り出した。

「では練習始めましょう!」

そこから五月雨は基本からルール説明までしっかりと教えてくれる。

それをメモにとって覚えると反復練習の時間は続くのであった。


「もう練習の必要ないですね!後は走力ですが…そっちは一人で大丈夫そうですか?」

「うん。時間見つけてトレーニングするよ」

「頑張ってくださいね。協力できることはしますので、いつでも声を掛けて下さい」

「ありがとう。本当に助かるよ」

五月雨が嬉しそうに微笑んだ所で完全下校の予鈴が鳴った。

「じゃあ着替えて帰ろう〜」

運動をして疲れ切っているかがりが僕らの元を訪れると日陰で涼んでいた白もこちらにやってくる。

「よくやりますね…見てるだけで疲れました…」

冗談を言うように大げさなことを口にする白にかがりは怪訝な表情を向けていた。

「私は動き足りないです!」

五月雨の前向きな言葉と笑顔に触れた二人は呆れたように微笑む。

「着替えて帰りましょ。早くしないと完全下校時刻になっちゃう」

生徒会長であるかがりが校則を破るわけにもいかず僕らは急いで着替えると帰路に就く。

「自主練。頑張ってね」

帰宅途中にかがりは励ましの言葉をかけてくれる。

「私も先輩が体育祭で活躍するの楽しみにしています!」

「図書室の一件で雪見さんの運動神経は良いと思うので…頑張ってほしいです」

「皆ありがとう。本番まで出来る限りのことはするよ」

彼女らの応援に応えるためにその日からスケジュールに走り込みが追加されるのであった。

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