第20話 乙姫セリカと偽装婚約

乙姫セリカと偽装婚約をしました。ただ、母さんに何度も何度も相談して、本当に形だけの偽装婚約。


契約書も作ってもらった。わざわざ婚約は形だけですっていう二人の承認で消すことができるように。


「それでいいんです。今一時期、私、話題が欲しいんですから。気軽に考えてください」


契約書を手に持つ乙姫さんはにっこり冷たい大人な感じ。テレビで目をうるうるさせながら、僕を擁護していた乙姫の姿はない。


ただ、ちょっとだけ僕を見て、乙姫は美人な顔で言うんだ。


「でも・・・真実の愛をくれたら、私、本気で好きになってしまうかもです」


アイドルとのイバラの愛の道を見つけろと言うのか?


冷たくもかわいい顔で言われて、僕は戸惑う。アイドルだからすごい美人なんだ。


うう・・・魔性


ただ、僕は惑わされないぞ。僕だって婚約はしたくなかったんだ。


でも、すごい荒らしが吹き荒れたんだ。


結婚しなきゃお前の将来に渡って、徹底的にイジメ抜いてやるぞって。


テレビで乙姫セリカがすごい演技で言った。


「今・・・世界では伊藤くんを虐めて楽しむ人間がいます。私はそれを許せない。私が止めなきゃ。私が止めなきゃ。命を賭けてでも・・・」




ルルナにつけ麺を奢る。府中で普通の味のつけ麺が僕は好き。


「まあ、なんてゆーか、婚約おめでとう」


ずずずー。


「いや、婚約って言っても、僕の人気がなくなるまでだから」


「あなたも修羅の道に入ったわね。同士」


煮タマゴ食う。パクリ。あっ、シナチクうまい。


「修羅というか、流れなんですけど・・・」


「このまま乙姫セリカとの結婚を夢みなさい。幸せな結婚があるわ」


「いや、たぶん彼女好きな人いると思います」


「芸能人に好きな相手なんていないのよ。視聴率とファンの総合愛だけ愛するの」




なにか玉石さんに呼び出された。


「・・・グローリアハンマラスで・・・ちょっと情けなかった・・・。ちょっと他のヤツやってみる?・・・」


「えっ? ものすごく強かったんですけど。ハンマラス」


「・・・このまま戦えないと・・・あなた、死ぬ・・・」


「へっ? 平和主義なんです僕。うまくコツコツ強くなって」


「・・・お手軽に強くなりたければ・・・もうちょっと強い敵とやってみるべき・・・」


「マジですか?」


「今、府中はすごい・・・。・・・たまにすごいモンスくるから・・・強くなれる」


本当かしら? でも、剣の師匠の言うことだし。




そこで、府中のいつもの上岡ダンジョン。


ゴブリンを倒してバキバキ進む。


玉石さんが爆弾発言を言った。


「・・・先言っておく・・・」


「なんです」


「・・・このダンジョンに大穴開けたの私・・・」


「へっ?」


「・・・私、府中住まいだから・・・、お手軽に強いモンスとやりたかった・・・。訓練用に・・・」


「あっ、あんたか!!! 府中メチャクチャなんだけど」


「ふふ・・・私、Sクラスの実力ある・・・。・・・ただ、知名度うざいから、戦いテキトーに近場で遊びたかった・・・」


「おかげで大迷惑なんですけど・・・」


「・・・死亡者多少出るくらい・・・。いいと思う死んだって。・・・みんな冒険者なんだから・・・」


そこで玉石さんが、闇のオーブみたいのを僕に投げた。


バリンッ


「!!!なにをッ」


「・・・これ。・・・私が最下層モンス呼び出すために使ってる餌用オーブ・・・。強いモンスター寄ってくる・・・がんばって・・・」


グログロと闇の気配が広がり、餌だと思ったモンスが僕に突っ込んで来た!!!


ドドドドド


その間、およそ2分。逃げる暇もない。


寄って来たのはクマのモンス。


3つの頭を持った狂暴凶悪なクマ。こわっ。


「ぐるぁああバあああああ」


いきなり、僕にグルンと振り返って炎を吐いたんだけど!? 僕、死ぬ?

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