第19話 小さな隙間から思いを伝えて

「ユーノ様、お疲れ様です」

「お帰りなさい。アリアはどうだった?」

 アリアの家からお城に帰宅したユーノをクリアや家政婦達が出迎える。かけていたコートを家政婦に手渡しながらクリアに近づきフフッと笑う

「いつもと変わらずお友達とご飯を食べていたよ。家も友達のミオさんに直してもらったみたいだね」

「そう、それはよかったわ」

 ユーノの報告にホッと胸を撫で下ろしクリアも微笑むと、一緒にユーノを出迎えた家政婦達の方に振り向いた

「じゃあ私達もご飯にしましょうか」

「はい。すぐに支度をしますね」

 家政婦達も微笑みクリアに返事をすると、一緒に食堂の方へと歩きだすと、ユーノと帰ってきた家政婦達も一緒にお城の中へと行こうとユーノにペコリと頭を下げた

「では、私達はアクア様を呼んできますね」

「いや、呼ぶのはもう少し後で」

 アクアの部屋に行こうとしたのをユーノが呼び止めると家政婦達が不思議そうに足を止めた。クリアが食堂の中に入ったのを確認すると、ユーノがゆっくりと歩きだし、ため息混じりに家政婦達に話しかけた

「アクアはさっき町に散歩に出掛けたみたいだ。あと少し待って呼んでくれ」

「町へ散歩ですか?ですが、このお城にはユーノ様の結界が……」

「ここ数日で突破できるようになったみたいだ。近々魔術師を数名呼んで、更に強い結界でも張り直さないとな」

 ユーノがフフッと困ったように笑いながら言うと、家政婦達は困ったように顔を見つめ合う

「それは、クリア様はご存知なのですか?」

「もしよければ、私達がお伝えしますが……」

「いや、今は知らせないでおこうか。心配するだろうし。今、少しだけ散歩でもさせておこう」

 と、家政婦達に返事をすると自室の方へと一人歩いていった





「あれは……一体何してるの?」

 その頃、ユーノ達と入れ違いでアリアの家にやって来たアクアが家の側にある木の枝に座り、家の小窓から中の様子を見て呆れていた。アリアとミオが薬草をたくさん置いたテーブルで何やら言い合っている姿を見て、はぁ。と一つため息をついた

「あの人……アリアお姉ちゃんお友達?」

 と、アリアに作りたての新薬を飲まされそうになっているミオに対し呟きながら見続けていると、無理やり薬を飲まされたミオが咳き込みはじめた。アリアが慌てて水を取りに行き、一気に水を飲み干したミオに怒られ、すぐにその薬を燃やされてしまった。燃えてなくなった薬草をしょんぼりと見ているアリアの腕をミオがグイッと引っ張っり部屋を出ていくと、誰も居なくなった部屋を見て、アクアが、はぁ。とため息をついて立ち上がった

「帰ろ。魔術が見られないなら、ここに来なきゃよかったや」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る