第14話 壊れてしまった音が合図
「疲れたわね。少し休みましょうか」
「はい。すぐお茶を用意しますね」
「ありがとう」
お城から出掛けた数時間後、隣町の町長の大きな家で、他の村や町の役員達が集まり、その人々と一通り話を終えたクリアが少し疲れた顔で用意された客間にあるソファーに座った。家政婦が部屋の隅に置いていたティーセットをクリアの前にあるテーブルに運び置くと、お茶を用意しはじめた。カチャカチャと砂糖を入れた紅茶をかき混ぜる鳴るティーカップの音を聞きながらクリアがふと二人の事を思い出した
「アクアとアリアは今、何をしているのかしらね」
「そう、ですね……」
何気なく呟いた言葉に、あまり浮かない顔で返事をされて、紅茶を飲もうとしていた手が止まった
「あまりいい返事じゃないわね。何かあった?」
「実は家政婦達の会話に、アクア様があまり良くない返事をしたそうで……」
お城での出来事を話しはじめると、クリアの表情が少し険しくなっていく。家政婦の報告が終わると、はぁ。と一つため息をついた
「そう。単なる独り言ならいいわね」
と、クリアが呟くとコンコンと居間の扉を叩く音が響いた
「クリア様、少しお話があるそうです」
クリアと一緒に来た警備の人がクリアにそう言うと、ゆっくりとソファーから立ち上がり警備の人と共に居間を後にした
「本当、私たちの町が薬草の町と言われるようになったのも本当、アリア様のお陰ね」
居間の扉が閉まってすぐ、家政婦の一人がため息混じりに呟く。クリアが飲めずに置いた紅茶を片付けながらもう一人の家政婦も頷くと、ティーセットを片付けていた新人家政婦が呟いた話に首をかしげた
「でも、それならアクア様の為に魔術の本を増してあげてもいいのでは?」
「それはアクア様の魔力も魔術も上げすぎても困るからよ」
「それは分かりますが……」
と、話しているとまた居間の扉がコンコンと叩かれクリアがあまり浮かない表情で入ってきた
「アクアが稽古場を壊してしまったみたい。ちょっと話をしたいから、術をお願いしてくれる?」
「分かりました。すぐに」
クリアの言葉を聞いて家政婦達がティーセットを急いで片付け居間を後にした
「ちょっとミオ、待って……」
買い物を終えたアリアが息を切らして前を歩くミオを呼び止める。ドスンと大量に買った薬草の袋を何個も地面に置いて、その場に立ち止まった
「もー買いすぎだよ。これ持つから、早く歩いて」
「ありがとう」
既にアリアが買った薬草の入った袋を大量に持っているミオが追加でアリアが持っていた袋を数個手荷物とスタスタと歩きはじめた。手持ちが軽くなったアリアも再び歩きはじめた時、ドンッと大きな物音と少し地面が揺れた
「なんの音?」
「あー、アクア様が稽古場を壊している音でしょ?アリア知らないの?」
「知らない。壊しているってなんで?」
「アクア様の魔術のせいだよ。力が強いから稽古場を守る結界も壊して、稽古場自体もいつも壊しちゃうんだって」
「へー。大変そうだね」
話している間にも聞こえてくる稽古場が壊れていく音や地面の揺れにアリアが感心していると、いつの間にかミオがアリアの所に戻ってきて、手をつかんでグイッと引っ張った
「感心している場合じゃないよ。早く帰って、おやつでも食べよう」
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