第69話 好き

【前回のあらすじ】

物騒オーシャンについたエリザベスと高橋。

そんな時、どこからか銃声が聞こえてきた。









「見つけた」


エリザベスの翼が切れたかと思うと、背後に警察がいた。


「⁉︎…な、なぜここがわかった」


「追跡バッジ…そこの人間の会社のものだろう?」


彼らの胸元には、追跡バッジがある。

そして、奥の車には、ヨーワーインの社員がいた!!


社長も例外ではない。




高橋は驚きのあまり、声が出なかった。

警察は冷酷に言った。


「高橋 正弘さん、あなたを器物損壊罪きぶつそんかいざい公務執行妨害罪こうむしっこうぼうがいざい

外患誘致罪がいかんゆうちざい建造物損壊罪けんぞうぶつそんかいざい

教唆きょうさ、その他諸々の疑いで、現行犯逮捕します」



「え…………」



「ちょっと待てよ」



エリザベスが警察に、静かに怒鳴った。

ペンギンはその様子を見ていた。


そして、石上も、彼らの元へかけ寄ってくる。




「お前ら、少しはその自分勝手な思考をやめろよゴミ」

↑エリザベス


「んだとぉ」

↑警察


バァァァァァン



警察は銃を、エリザベスの心臓に撃った。


エリザベスは抵抗しなかった。




ブシャァァ


突然目の前に、ムムムさんが飛んできたではないか!


彼は銃弾に命中し、よろよろと、地面に墜落する。


エリザベスは驚いた。



「お、おま…」


「ムムム……ムム…(早く、逃げて)」


「何言ってるのかわからんが、盾になってくれた事に感謝する」


「(そうだこいつ、俺の言葉わからないんだった)」


ムムムさんはそう考えながら、消滅していった。


エリザベスは言う。



「お前ら、俺らを悪と決めるのは、さすがにどうかしている。

人間が先にやってきた事だ。俺らに罪は無い。

人間が俺らに喧嘩売ってきたから、俺らが対処してるのだろう……。

それがまだわからないか。

地球ができるずっと前から生きてきたが、ここまで不愉快になったのは初めてだ」


「(何言ってんだこいつら)」


警察はそう考えていたが、警戒を緩める事は無い。

どちらも緊張していた。


高橋はこんな緊張感、今までに感じた事なかった。



↓エリザベス

「俺たちの事を記した書物には、こう書いてあったな。


〈エリザベスといふ物鳥は、かたがたなる物率ゐ、街へ襲撃しきけり。

箱に人の手足の生えし異形の物の怪は、掌より箱のごとき物の怪生みいだし、あらむ事か、人を食へり。

寿司のごときけしきせる生類は、切り身より熱波や、刃のごとく鋭き皿など撃ち、戦場に血といふ赤身をばら撒きき。

本を頭に掲げし蛇は、拳に人殴り、さても本を変へたりき。

白人は包丁より三日月のごとき斬撃放ち、瞬く間に多くの人を殺しゆきき。

うつつと彫られし面を被れる球体は、心臓を損なはると、さても分裂体生みいだし、雷や風、炮録ほうろくを操りき。

黒人の男は鉄塊を投ぐと、電気や炎、水いでさせ、戦場を惑はせき。

女の方は、赤き雷を振り、人にひび割れ入れ、ひとへに戦を楽しめべかりき。

目が幹の至るところにつける木は、切れ味の良き帯や根を操るばかりならず、さても目より針や電気の腕伸ばし、竜のごとき巨木を従へたりき。

かくてあるじなるエリザベスは、露の間にきは一面を血の海にせり。何のおどろきしやすらわからざりき。

他にもかたがたなる物が我々に被害をいだしき。

彼らは攻めをやめよと言ひつつ、攻めきたり。何を言へるやもわからざりき。

騒動をおどろかしし貴族は今頃後悔すらむ。かの集団には手をいだすべからざりき〉


翻訳すると、こうだ。


〈エリザベスという妖怪鳥は、様々な妖怪を率いて、街へ襲撃してきたのだ。

箱に人間の手足が生えた異形の化け物は、掌から箱のような怪物を生み出し、あろう事か、人間を食べていた。

寿司のような見た目をした生物は、切り身から熱波や、刃のように鋭い皿などを撃ち、戦場に血という赤身をばら撒いた。

本を頭に掲げた蛇は、拳で人を殴り、なんと本を変えていた。

白人は包丁から三日月のような斬撃を放ち、瞬く間に多くの人を殺していった。

現実と彫られた面を被っている球体は、心臓を破壊されると、なんと分裂体を生み出し、雷や風、爆弾を操った。

黒人の男は鉄塊を投げると、電気や炎、水を発生させ、戦場を混乱させた。

女の方は、赤い雷を振り、人にひび割れを入れて、まるで戦闘を楽しんでいるようだった。

目が幹の至るところについている木は、切れ味の良い帯や根を操るだけでなく、なんと目から針や電気の腕を伸ばし、竜のような巨木を従えていた。

そして主人であるエリザベスは、一瞬で辺り一面を血の海にした。何が起きたのかすらわからなかった。

他にも様々な妖怪が我々に被害を出した。

彼らは攻撃をやめろと言いながら、攻撃してきた。何を言っているのかもわからなかった。

事件を起こした貴族は今頃後悔しているだろう。あの集団には手を出してはいけなかった〉


この通り、常に俺らが加害者として書かれている。

今のは『化白鳥一味録ばけはくちょういちみろくさん』というものにある。

やしろという商人の一族によって書かれた憎き書物だ。

だから、なぜ俺らが被害者とせずに、常に加害者だとするのだ。


理由は1つ、人間はだからだ。

野生動物の住処を消しているにも関わらず、野生動物の愛護をしようとほざく。

そのくせして、害獣と罵って里に降りてきた動物を撃退するだろう?

神の失敗作にも程がある。この世の害獣共め」



エリザベスは翼の先からビームを出し、警察を1人残らず消し去った。


そして、高橋に寄りかかる。




「ゔっ……もう俺は生きるのをやめるよ。

お前らには悪い事をした。罪を着せてしまったな」


「そ、そんな事無いですって!」


「高橋、少し、言わせてくれ。


俺の正体は、未来から来た生物兵器。人間によって多くの種が一気に絶滅してしまった、デスパニックの際、人間がまだそこまで環境破壊をしていない頃に、俺を送り込んで、人間を絶滅させようと考えたDr.フラワーによって作られたのだ。

しかし開発途中の実験事故で、俺はまだ未完成のまま過去宇宙ができる前へ飛ばされてしまう。

まだ宇宙ができるまでにかなりの時間がかかるため、俺の親という設定でペンギンを開発し、宇宙を無理やり作り出した。

その時生じてしまった時間の流れが原因で、この世の生物とは思えない生命体…本の虫や、すし みたいな奴らが誕生してしまったのだ。

さらに、俺らの記憶も全て消し飛び、本来の任務も忘れ、宛も無く長い時間を過ごしてきたのであった。


今思い出したんだ、俺は人間を絶滅させるために生まれてきたのだという事を。

でもそれは、人間のせいだ。


お前も、社という商人が、あのしょを書かなければ、逮捕されずに済んだんだろうな。


でももう遅い。俺は無理だ、時間を巻き戻す力も気力も無い。


最後に1つ、言わせておくれ」



「なんですか………」
































「俺はお前の事が、好きだったよ」


「!………」


「俺が唯一出会って良かったと思えたのは、お前だけ……。


……………………さよなら」



エリザベスは自分の心臓を突き刺した!


ブシュッッッッ


「⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」


「愛してる」



彼は塵のように消えていった。


残ったのは、高橋とペンギンのみ。


ペンギンが呟いた。


「俺の役目も終わったな。さらばだ、高橋」


「あの……あなたは…?」



「俺も消えようと思う。親だけが生き残るのは癪だ。


お前と会えて良かったとは思わないが、エリザベスの成長が見れて嬉しかったな。


感謝する……が、俺はお前らを許すつもりは無い。

今後どうなるかは知らないが、とりあえず、さらばだ」



ペンギンも消えた。


車の中から、晴輝たちと共に、社長が出てきた。

社長は高橋に尋ねる。


「帰るか?それとも警察の元へ行くか?」




「…………帰りましょう」

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