7
――生家の、隣家のお爺さんは、小和と同じ病で亡くなった。
小和が病に
小和が
私だけ、生き返ってしまった。
それが、りくのもとで看病されているうちに、小和に湧いてきた実感だった。
あの墓場から這い出して。真っ暗な夜の中、人気もなく、
隣家のおじさんとおばさんは、葬儀の際にずっと涙を流していた。
私だけ。
温かい場所で、温かい人に、優しくしてもらって。
だから、りくのところで養生しているうちに、小和の故郷が廃村になったこと、家族は
生き返っただけで奇跡なのに。
りくは優しく、山も、山のものたちも、小和と親しくしてくれるのに。
おかみさんには、本当の娘のように大事にされた。姉さんたちからは、妹のように可愛がられた。本が読みたいと、つい言ってしまった我が儘さえも、何でもないことのように許された。
だからもう、これ以上は。
何かを望むのは、生き返らせてもらった恩に、値しない。
山の中腹に差し掛かる。葉の枯れ落ちた木々の向こう、学校の校舎が見えた。正門から脇道へと回り込み、校舎から学生寮に続く道へと駆け抜け、砂と
ほんの少し行っただけで日が陰り、枯れ木立と常緑に囲まれて
ここに逃げてくるなんて、御堂にも見透かされていることだろう。
けれど、小和が逃げられるところなど、ここ以外にない。
小和が小屋に駆け寄ると、ちょうど、入り口がカタンと開いた。
りくが顔を出す。
いつもの、
彼は、まるで小和が来ることを見通していたように、真っ直ぐに小和を見て、
「いらっしゃい、小和さん」
そう、ふわりと微笑んだ。
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