第5話ギルマスと依頼

 次の日、宿で休んだ俺たちはギルドに依頼を受けに行った。


「大丈夫ですかね?顔を覚えられてるとか無いといいんですけど……」


「といっても、このままだとお金もなくなるし、しょうがないさ」


「ですね、!」


「それに、空属性はよく分かってないから聞けるなら聞いておきたいからな」


「空属性ですか……」


「空間って事だと思うがそれにしても具体的なのはわからないからな」


「確かにそうですね……すいません、私のわがままで……」


「気にしなくていいよ。別に職業はいくらでも変更出来るからな。合わないと思ったらやめよう」


「そうですね」


そんなことを話していると、目の前にギルドが見えた。


「よし、そろそろ着くから話しとくが、何か話しかけられたりしたら俺に任せてくれないか?」


「え、良いですけど……どうして?」


「いや、知られたらまずいことがある俺たちは色々隠すつもりだが、2人で話すとどうしても情報に齟齬が出るかもしれない。だから俺一人に任せてくれ」


「全然大丈夫ですよ。静かにしときますね!」


「ありがとう。それじゃあ入るぞ」


ガチャ

 俺たちが入ると色々な視線に晒された。

恐らく俺たちをパーティに誘おうとひそひそ話てる者、単純な好奇心でこちらを見てる者など様々だが昨日居なかったもの以外は大抵こちらを見ていた。


(いくら希少でも魔法使いってだけではこうはならないはずだ。それなら王様が橘を逃がさない。

となると問題は…空属性だろうな)


 そして俺は小声で橘に話しかける


「橘、ここからはステータスに表示されてるトウマ、ヒナノで呼び合おう。

ステータスを見れるヤツがいたら不審がられる」


 橘はいきなり話しかけられ少し驚いていたが


「わ、わかりました!」


と了承してくれた。


(下の名前で呼び合おうとか言ったの初めてだわ……)


 俺は違う意味でドキドキしていたがそんなことをしてる余裕も無いので受付の女の人に話しかける


「あのー、依頼を受けたいんだが」


「ふぇ?! は、はい! えと、依頼は是非受けて欲しいんですけれど、その前に少し来て貰えませんか?」


「来てもらうって……どこに?」


「ギルドマスターが昨日の結果を見て話したいことがあると……」


「それは強制か?」


「え?! い、いや強制ではない、ですけど……」


「そうか、なら先に依頼を受けたいんだが」


「え、と……嫌でも来てもらわないと困るんです……」


「それはそっちの事情だろ?俺たちは依頼を受けに来たんだ。犯罪も犯してない以上無理やり呼ばれる筋合いは無い!」


「そ、そうなんですけどぉ……」


 受付が涙を浮かべだした辺りで俺は焦った

が、ここで引くとギルドマスターに馬車馬の如く働かせられる気がしていた。

 異世界物を見てた弊害ともいう。

しかしたちば……ヒナノは耐えられなかったらしく、俺に


「あの、トウマさん、少し話を聞くくらいならいいんじゃないですか?空魔法に何があるとかも知りたかった所ですし……」


と話しかけてきた。

 俺も罪悪感が凄かったのもあり結局

「貸しだぞ、とギルドマスターに伝えてくれ、それと話す時は人払いを頼む。」


「はい!ありがとうございます!」


 そう言い彼女はタタタッと走っていった。

「はあ……これ絶対面倒なことになるだろ……」


「ま、まあまあ、いいじゃないですか。嫌なら話さないことも出来ると思いますし……」


「まあ、そうだな……」


 そんなことを話してると受付が戻ってきた


「ギルドマスターがわかったから早く来てくれと言っていました! 私についてきてください!」


 そういう彼女について行くと1つのでかい部屋に案内された。


 受付は俺たちを部屋に入れると帰って行った。

中に入ると筋肉ムキムキ、片目はなく、全身傷だらけの男がいた。


(おい、マジかよ…絶対強いなこいつ。)


「よう、まあ無理言って悪かったな」


 部屋に入り椅子に座るとギルドマスターが話しかけてきた


「ん? いやまあ俺も聞きたいことがあったからな。

遅かれ早かれだ。それに貸し1だ。この王都のギルドのマスターとなれば貸しを作れたのはでかい」


俺は動揺を隠しながら話す


「はっ、そうかい。呼ばれた理由はわかるな?」


「いや、さっぱり」


「そうか、嬢ちゃんは?」


「……」


「ヒナノに話しかけるな、聞きたいことはなんだ?さっさと言え、答えられることなら答えてやる」


「わかった。なら聞くがお前はどこから来た?」


予想していた質問とは違い少し面食らったがすぐに意図がわかった


(こいつ、俺たちを調べたな)


 俺たちは異世界から来たため今までの経歴がなく、希少な魔法使いなのに全く話を聞かないことが不審に感じたのだろう

「どこ、と聞かれてもな。

森の奥から来たとしかいえない」


俺はそう答えた。否、そう答えるしかなかったのだが……


「ほう、どこの森だ?名前を知らないなんて言うなよ、俺が聞いてるのはどこの街の近くとかでもいいがその森のある場所だ。そんくらい教えれるだろ?」


「……ッ!」


「そもそもうちの国の名前やこの王都の名前を知ってるか?お前達を調べたが冒険者になる前の経歴が全くわからない。そんなこと基本ないんだよ。

魔法使いは希少だから全く話を聞かないのはおかしい。空属性のお前は尚更だ」


「この短時間でここまで調べたのかよ……」


(これは誤魔化せないな)


「降参だ、しかしまあ、よく調べたもんだ」


「王都のギルドマスターは伊達じゃないんだ。

それと国名と王都の名前は覚えろよ、怪しすぎる」


「アースガルド王国だろ、そっちはわかる。

王都の名前は…分からんが」


「ここは王都アースガルドだ。簡単だろ?」


「……ちっ、やられたな」


「まぁそんな警戒するな、お前達のことを少し聞かせろ、そしたらお前たちの質問も答えてやる」


「わかった……ヒナノ、もう話していいぞ、これ以上は無駄そうだ」


「は、はい……」


「おお、嬢ちゃん顔も可愛いが声もいいな、どうだ!うちの受付にならねえか?」


「帰るぞ?」


「冗談だっての。独占欲強いと嫌われるぞ?」


「……(こいつ……)」


「それじゃ、色々話してもらうぞ」


 そして俺たちはお互いに質問をしあった


 俺たちはこの世界のことを大抵把握できるまでには質問攻めをした。


 そのためギルドマスターには俺達が異世界人であることを伝えた。


 するとこの国を出た方がいいと伝えられたため

今はそれに向けて行動中だ。


 そして俺たちは受付に戻り依頼を受けることにした


「おい、受付、依頼を受けさせてくれ」


「う、受付って呼ばないでください! 私はルーナです!」


 泣いていた受付嬢の女の子はルーナというらしい

紫色の髪色でおっちょこちょいな雰囲気のある美少女だが……


「うるさい受付、魔物討伐依頼をよこせ」


 泣かれたせいでギルマスと話すことになった俺は少しイライラしたのでそれをぶつけといた


「……私かわいいのに」


「わかったから早くくれ、もう昼になるだろこのままだと」


「わかりましたよ! ゴブリン討伐でいいですよね! カードを出してください!」


少し怒ったようにルーナが言う


「ほら、カードだ……ありがとうルーナ、それじゃあ行ってくる」


「え?! もう、本当は私の事好きなのに意地悪しちゃったんですね? 仕方ないなぁ〜」


ウザかったが時間も少ないので


「いくぞヒナノ」


とヒナノを連れて俺たちは依頼のゴブリン討伐をするべく森に赴いた。

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