003 処女脱兎
身体の自由が利くようになった俺は、スラストレバーを操作し、アクセルを踏みしめて
ズンッ!とした"人間では耐えられない"
俺は逃げから一転、"ビームライフル"を持っている敵機に向かい突進した。
《アリス、真っすぐ接近し過ぎです》
《このままでは狙い撃ちされます》
大丈夫だ黒兎、
なぜならライフルの"射線場"にお仲間の機体も入ってるからな
俺は常に"ライフル持ち"を軸にして、追いかけて来る1機と"重なるように"微調整をしながら全力で突っ込んでいる。
《信じられません……ほぼ同時に後方の敵機と動きを合わせている》
経験と勘だよ。
俺の機体は通常ではあり得ないぐらいの加速をしているのか、結局"ライフル持ち"は一発も撃てないまま、俺が肉眼で確認できるぐらいの位置まで接近を許す。
"ライフル持ち"はライフルを置くと、近接武器の"ナイフ"を取りだそうと腰に手をかけるが
遅い――
俺は機体を急加速のまま、ナイフを逆手に持つと、ナイフを取り出そうとした敵機の右手をこちらの左手で押さえつけ、そのままコクピットのある敵機体の胸部へとナイフを突き刺した。
ボン!という音と共に、突き刺された胸部から火花が立ち上がる。
俺はもしかしたら人を殺したのかもしれない……。
そんな思いが一瞬頭を駆け巡ったが、今の切迫した状況からなのか。
それとも"アンドロイドの身体"になったから感情を無くしたのか分からないが、直ぐに気持ちを切り替えて敵機のビームライフルを拾い上げた。
黒兎、このライフルをこちらに
《6秒で出来ます》
上等、やってくれ!
《了解》
俺は敵のライフルを拾うと、"もと来た道"へ逆走する様に再びフルスロットルで機体を動かした。
追って来ていた残りの2機は"八の字"に距離を取り始める。
《敵機はビームガンでの"十字砲火"を狙ってます》
わかってる!
《ライフル換装まで3秒》
俺は頭の中でカウントを始める。
ライフル換装までの時間では無く、敵の十字砲火の
4……3……2……
《ライフル換装完了》
ゼロ!
俺はエンジンアクセルから足を外して、スラストレバーを操作し肩部、胸部、足部のバーニアを前面へと逆噴射させた。
それと同時に敵2体からビームガンが発射される――
機体を急停止させた衝撃は凄まじく、恐らく人間の身体では死んでしまうだろう。
だが俺はそんな中で敵がビームガンを放つと同時に、敵の1機に向け"ビームライフル"を発射した。
敵が放ったビームガンの閃光が目の前でクロスすると同時に俺が放ったビームライフルが敵の1機に直撃する。
間髪入れずにもう1機の方に"2発"ビームライフルを放った。
1発目を避けた敵機だが、まるで吸い込まれるように2発目に着弾する。
直撃した2機は爆破し、2つの大きな閃光を宇宙に照らしたのであった――
《敵機、全て沈黙 信じられません……》
黒兎が驚愕の声を頭の中で響かせた。
《特に3機目を撃墜した"2発目"の狙撃です》
《まるで"予知能力"の様に敵の回避位置に発射しました》
俺は黒兎の疑問に答える。
黒兎が言ってたG・Sマニュアルの最適回避距離さ
《G・Sマニュアルですか?》
逃げてる時に一発撃っただろ?敵の回避距離が黒兎がやった"最適回避距離と全く同じ"だった。
もしかして敵にも"自動回避モード"が設定されてるんじゃないかと思ったからな、それでライフルで狙撃した時は敵機の原点から少しズラして"2発目の射線位置"に誘導するように1発目を撃ったんだ。
《一瞬で敵機の十字砲火の弾道を読んで回避し》
《一瞬で敵の自動回避距離を計算して狙撃した》
《素晴らしい……、この世界でのどんな戦闘AIでも出来ません》
そりゃ
《"勘と運"ですか……》
そう、"人の特権"だね……おっと今はアンドロイドか……。
《母艦からの帰還命令が来てます》
帰還かぁ……じゃあ帰るとしますか
なぜか俺は戦闘に向かう時よりも、重い足取りで母艦へとアクセルを踏みだした――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます