第4話 そして厄災が到着した
十月〇日日曜日 午前三時十分頃―――――――――
複数のサイレンがけたたましく鳴る空港。
私は、今回この空港で行われる作戦で副指揮官を務めることになった
私の横にいるのは、私と同じ大阪府豊中警察署、
この人は場を引っ張るのはうまいのだが、たまに失敗するため警部の私からしても少し不安な上司だった。
そして今回の事件内容。
ベトナム発、アメリカ行きFCP02便が、暴徒化した人に襲われているため、ここ大阪国際空港に緊急着陸すると言うのだ。
そこで駆け付けたのが兵庫県警と我々大阪県警。
しかし、追加で受けた連絡で、暴徒化した人は新種の感染症にかかっているということが分かったのだが、管制塔職員はそこまで心配することはないだろうと言っていた。だが念には念をというこで、一応防護マスクをつけた
万が一日本中に広がり、それで死人が出てしまっては元も子もないからだ。
しかし市谷警視が、
「相手は手ぶらや。いくらガタイがよくても、重装備の警官には勝てへんやろ。」
と息巻いていたのが本当に不安であった。
「警備課長!大阪特殊急襲部隊、全員配置につきました!」
特殊急襲部隊の一人が市谷警視に声をかける。
「よし、お前ら!飛行機が着陸次第、人が逃げたら一気に突入や!それと、マスクを忘れたらあかんで!」
「「「はいっ!」」」
市谷警視の言葉に、特殊部隊の警官達が答える。
キィィィィィィィィィィンッ
「あ、」
その時、空港では聞きなれた音が斜め後ろで聞こえた。
見ると、話に聞いていた、中型の、白の機体に黒い羽根のついた飛行機が、こちらに降りてきていた。すると、
「あ!あの飛行機『FCP』じゃないですか!珍しい!」
どこから現れたのか、後輩である
そういえば伊佐賀は大の航空機マニアだった。
「すごいですよ先輩!しかもあれアメリカの、世界に二機しかないタイプの飛行機なんですよ!日本で見られるなんてまずないんですよ!なに乗ってるんだろうなあ!」
「はあ…」
伊佐賀がぺらぺらと少し早口で喋る。現場なんだからもう少し緊張感を持ってほしいものだ。
にしても、飛行機にはどう乗り込むのか。階段があるわけでもないが…。
そう考えていた時だった。
「警官の皆さん!こいつを使ってください!」
声のするほうを見ると、空港の職員が階段のついたトラック、タラップ車に乗って現れた。
日本に大型の飛行機が多くなってから、どの空港も飛行機に乗るときは渡り廊下を使って搭乗するため、今になってタラップ車を見ることになるとは思わなかった。
「今時タラップ車なんてあるんですね…。」
素朴な疑問が、私の口からこぼれた。
「まあ、搭乗方法が渡り廊下になっても、中型飛行機の搭乗時や、こういった飛行機が緊急で着陸したときのために何台か残してあるんすよ。しかも今回は機内に乗り込むんすよね?じゃあこいつの出番すよ!」
キュルッ、キィィィィッ
グリップ音を立てながら飛行機が着陸する。とりあえず墜落するという最悪の事態は免れた。あとは人々の救助、暴れる人の鎮圧だ。
「お前ら!飛行機が止まったら急いで乗り込まなあかん!そのためになるべく飛行機に近づくぞ!移動せえ!」
市谷警視が声を上げる。
「「「おおっ!」」」
三十人ほどの全身黒ずくめの警官が、減速する飛行機を追いかけるタラップ車めがけて動き出す。
私も救助を求めている人を助けに行くために、後ろからついていく。
少し走り、飛行機が近くに見えてきたころだった。飛行機の操縦室側の扉が開き、そこから白衣を着た人が二人、ゴム製の滑り台で降りてきた。
ひとりは背の高い男性で、もう一人は髪の長さ的に女性のようだ。きれいな白髪をしている。
「…救助を求めてた人たちか?」
私がつぶやいた時だった。
「People there! Run away!」
降りてきた男性が
「なんや?あんたなんて言うたんや?」
市谷警視は英語が分からないようだ。
「私たちに逃げろって言ってますよ、彼。」
私は、英語がわからない市谷警視に、逃げてきた人が言った内容を伝える。
「にげろ…?」
市谷警視がクエスチョンマークを浮かべた時だった。
「くそっ…!」
「急げ、逃げろ!急げっ!」
乗組員らしき人たちが三人、英語でそう言いながら滑り台を降りる。
そして、
「があああああっ」
「んっ…?」
その人たちが降りたすぐ後ろから、うめき声をあげた人がゆっくりと出てくる。
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