第47話 新学期
やけに短かった夏休みが終わり、新学期が始まった。
登校するとまず体育館で始業式があり、それが終わると各クラスに戻って宿題の提出などを行う。
俺は昨日終わらせた宿題を、さも何事もなかったように提出した。
それぞれの科目を担当するの係員の人が俺の宿題を持っていくたびに、部長への感謝の念を噛みしめた。
ほんと、ありがとうございました(まあ、おおもとの原因は部長とアユリス様にあるのだけれど)。
そして宿題の回収後は軽く校内の掃除をして新学期初日の学校は終わりだ。
放課のチャイムが鳴るのと同時に荷物をまとめ、俺は一か月以上ぶりとなるオカルト研究部の部室へと向かった。
〇
「どうもどうも、皆さんお久しぶりです。北紅葉高校オカルト研究部期待の新星、アビルくんです。最近出番がなかったので忘れてしまった方もいるかもしれませんが、これを機にぜひしっかりと覚えておいてください。今後の超重要人物であることは間違いないですので」
「誰に向かって言ってるんだよ」
既に部室にいたアビルくんは長い夏休みを経ても何も変わった様子はなく、相変わらず掴みどころのないやつだ。
「ところでライトさん、この夏休みはどうでしたか?何か面白いことはありましたか?」
「え、面白いこと?」
アビルくんの問いに、一瞬言葉が詰まる。
あったと言えばあったけど、とても人に話すような話じゃない。
それに竜宮城の話をするならアユリス様のことについても触れなきゃいけないし、色々と説明が面倒すぎる。
「……いや特に。別に普通だったよ」
俺がそう答えると、アビルくんは露骨につまらなそうな顔をした。
「そうですかー。なんというか、相変わらずつまらない人ですねえ、ライトさんは」
「さらっと悪口言うなよ……。というか、そう言うアビル君はどうなんだ?なにか面白い話はあるのか?」
攻守交替。今度は俺の方が質問してみたが、アビルくんは特に焦る様子もなく不敵に笑うだけだった。
「それは秘密です。面白い話、というより面白くなりそうな話、ですけど」
「なんだよそれ……」
いちいち回りくどいアビルくんの話に嫌気がさし始めたその時、部室のドアが勢いよく開かれた。
「二人とも集まってるな!ついてこい!屋上にミステリーサークルが現れたらしい!」
昨日ぶりにあった部長は、まあ当然だけど特に変化はなかった。
異世界中毒者の青春 朔壱平 @pnkt-rac
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