22話 分かれ道


 韓国へ着き、四日が過ぎた。


 俺はДаниилダニール秋山と情報共有すべくカフェへと足を運んだ。

 白を基調とした店内は北欧風の造りになっており、中々居心地が良さそうだ。

 店内へ入ると、ダニーは既に到着していた。


「アイスコーヒーをひとつ」


 俺は女性店員に注文してから、席に着いた。

 特にせっかちな訳でも無いのだが……


「よう、ダニー。街は探索したか?」


「ああ、ひと通り頭には入れた。美味しい韓国料理屋でも紹介しようか?」


 俺はダニーのくだらないジョークを鼻で笑った。


あかつき、お前の方はどうだった?何か掴んだのか?」


「ああ、勿論だ。俺は……」


 きゃあああっ!


 俺が口を開いた時、背後から女性の悲鳴が聴こえふり返った。


떼어 놓아 주세요ッテオノアチュセヨ(離してください)」


 やから二人が女性店員に絡んでいた。


 俺は話に戻る。


「えっと、それでだ……韓国マフィアの方は表向きリサイクルショップを経営し……」


「え?」


 ダニーは首を傾げた。


「は?」


 俺も首を傾げた。


「……いや、普通助けるでしょ?」


 ダニーはあきれ顔をしている。


「は?それは善人のおこないだろ。俺たちは殺し屋だぜ?」


 ダニーは左手で顔を覆い、ため息を着いた。

 そして、お互いに拳を振り上げた。


 ……


 これが運命の分かれ道となった。


 ダニーは、俺は……


 俺は、ニヤケ顔のダニーに舌打ちをすると、席を立った。


 あー、クソ。何でこんな安っぽいよくある展開に巻き込まれんだよ。


「あー、えっとお兄さん達、手を離してあげなよ?」


「あ?なんだお前……日本人か?」


 二人の輩は、あろう事かこの俺様を睨みつけてきた。

 そして俺はある事に気が付く。


「あれ?その名札……」


 男達は胸元にリサイクルショップの名札を付けていた。


「これはラッキー!よし、表出ようか」


 俺は男達と店の外へ出て、人影のない路地へと入った。


 2~3分後


 俺はひとりで店内へ戻った。


 絡まれていた女性店員は頭を下げお礼を述べた。

 俺は軽く右手を上げ、そそくさと席に戻った。


「おい、収穫だぞ!あいつら例のリサイクルショップの店員だった!」


「ほほぅ、それで何か掴んだか?!」


「ああ、まずリサイクルショップの名前は『子猫』、裏組織の名前は『龍尾りゅうび会』。正に猫を被った~というダジャレのような感じだ」


「ほほぅ……」


 ダニーは目が点になっていた。


「資金源はの売買、主に日本人や中東の富裕層が顧客だ」


「なるほどね。で、ターゲットは日本人の顧客って事か?」


「そういう事だ。だからここからは難しい仕事になる。顧客リストなんて簡単には手に入らない」


 俺はアイスコーヒーにミルクを入れかき混ぜた。氷が涼しげな音を立てる。


「まあ、俺はさっき面が割れたので……ダニー君、潜入捜査アンダーカバーを頼んだぞ」


 俺はニタリと笑い、ストローを噛んだ。


「何がアンダーカバーだ、警察かよっ」


 ブツブツ言っていたダニーだか、翌日から組織に潜入する事となった。


 帰ろうと店を出た時だった。


「あの、すみません……」


 ふり返ると先程助けた女性店員だった。

 割と綺麗で清楚な感じだ。


「先程はありがとうございました」


 彼女は頭を下げた。


「へぇ、日本語上手いね。で、何用だい?」


「先程のお礼に、食事をご馳走させて下さい。美味しい韓国料理屋さんがあるんです」


 彼女は赤面しながらポケットから何かを取り出した。


「いや、別にお礼なんていいよ。気持ちだけ貰っとくぜ」


「ダメです!」


 彼女は少し声を荒げた。

 面を食らった俺に、彼女はメモ紙を渡してきた。


「私の連絡先です。必ず連絡下さい」


 なかば無理やり紙を渡すと、小走りで店内へと戻って行った。


「おいおい、やるな暁。モテるじゃないか?!」


 ダニーはニヤケ顔で俺の二の腕に肘を押し当ててきた。


 俺はメモ紙を開いてみた。


 そこには携帯の番号と、彼女の名前が書かれていた。



 〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇


 정소담チョン・ソダム










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