第110話 彷徨うドロ人形

 領主の館、スッチン伯爵

「 ふぅ、一時はどうなるかと思ったが、ようやく落ち着いてきた 」

 魔女エレナ・ムンベルグが都市ダラムを去ったからだ。


 執事プッテイコン 「 都市ダラム、魔女が3人も滞在するまでになったのですよ 」


「 そういえば聞こえは良いがなぁ、生きた心地がしなかった 」


「 3人とも、モノホンの魔女、偽魔女の串刺しの魔女でさえ、手も足も出なかった、本物ってどれほど凄いのでしょうか 」


「 そらスフィアを観る限り、一撃で国が消えるって感覚じゃないのか 」


「 スッチン様、超巨大なサイクロプスを漆黒の魔女様が蒸発させられた、跡地なのですが、大きなクレータとなっていましが、いつの間にか水がたまり、池になっております 」


「 魔女の池というような名前を付けて、人が集まり出しております、城壁の外なので危険です、いかがいたしましょう 」


「 魔女の池かぁ、よし、見に行こう 」

「 その前に、私を醜態を嬉しそうに見に来た奴に一矢報いるため、手紙を書く、できるだけ自慢したい 」


 交易都市バッタンバンのワチャラパン伯爵

「 ちくしょーーーっ! 」

 執務室で叫んでいた、城壁都市の領主スッチン伯爵からの手紙を握りしてめている。


「 ものほんの魔女が3人だとぉー! 」


「 偽・光の魔女とは、格が違うーーーっ! 」


「 当たり前だ、本物だから。 」


「 漆黒の魔女様、封印の魔女様、魔女エレナ・ムンベルク様が、ダラムにおられる。それにSランクの魔物、魔獣羅王、ダラムは平和そのもの、世界一安全、安心な都市 」


「 うぐぐぐぐぐぐっ! 」


「 チョビ髭の大泣き野郎の癖にして、ゆるさん! 」


 交易都市バッタンバンのギルドでも、「 なにーーーーっ! 」


「 オルンサンガ修道院の聖女様が、ダラムギルドの受付嬢! 」


「 アルンサンガ協会の聖天使様が、ダラムギルドの冒険者ぁ! 」


「 ものほんの魔女が3人も滞在ぃぃぃぃ! 」


「 どんな魔獣であろうとも、ペペペノぺーー 世界一安全安心な都市ーーーっ! 」


「 許さんぞ! 絶対許さんからなぁ~っ! 」


 首都シェムリアップでは、連邦共和国の代表者、エンリコ・ボイヤン国家元首の基に報告


「 何ということだ、城壁都市ダラムに本物の魔女が3人だとぉ~っ 」


 漆黒の魔女、封印の魔女、魔女エレナ・ムンベルク、それにSランクの魔獣羅王、ムアール大陸を、支配することも、地獄にする事も容易な力が、終結しているというのに、手を出す事すらできず、人の領域の守護を依頼することもできず、人の領域を守り通す為に、力を貸せとも依頼できず。


 しかも、これほどの魔女が終結しているというのに、ダラムは平和、彼女達は魔力の無い物に対して、その力を振るう事も、見せ付ける事も、支配する事さえしようとしない。


 すべて漆黒の魔女の影響、彼女が人の地に突然現れてから、何かが代わり始めている。


 魔女の池の前、身なりの良い男達が佇んでいた。

「 デカイ! 」

「 池というより、湖ですね 」

「 ダラムの城壁内でしたら、ダラムが消えていたかもしれませんね 」

「 ごくり 」

「 いいか、怒らせるなよ 」

「 胃が痛くなってきたぁ 」


 池を見に来ている民衆のなかには、泳いでいる人までいた。

 子供が何かを捕まえようと騒いでいる。


「 魚を放って、将来は食べられる魚が捕れるようにしよう 」

 おつきの者達、領主様がまともな事を言ったぁ。。。 驚いている。


 ソリッド赤土採掘場、大昔からドワーフ族が管理する赤土の産地、ここで採掘された赤土は煉瓦となり、ムアール大陸中に広がり、建物の壁などに使われている。


 採掘場と呼ばれてはいるが、城壁に囲まれた、巨大なドワーフ族の都市がある。


 当初坑道として、掘っていたが、長きにわたる穴のあけ過ぎにより、山崩れ、現在は露天掘りに変わった、周辺の土地含めすべて赤い土で覆われていたためだ。


 いつから、赤土を掘りだしたのか定かではないが、残っている記録からすると、3000年以上前から採掘がはじまっていたようだ。


 採掘場所は徐々に移動し、最も古い採掘場は坑道、露天掘りに変わってからも幅 5Kほどの穴が 50K以上続いている。


 ソリッド赤土採掘場の、古く使われていない採掘跡地から、魔蟲が多量発生するという事件が発生。


 ドワーフ族達は、魔蟲の駆除に翻弄したが、発生を食い止める事ができず、魔蟲が増え続けていた。


 ドワーフ族が住む地域である、天敵となる魔物から守れた場所、魔蟲が爆発的に増え出した。

 もはや、ドワーフ族の力では、止めようが無い状況に追い込まれていた、ドワーフ族の都市、ソリッド赤土採掘場は危機的状況に陥り始めていた。


 採掘場のドワーフ達、ドブドワーフ、タイニードワーフなどと呼ばれ、人の町に住むドワーフ族からは、体が人周り普通のドワーフより小柄というのもあり、劣等種として蔑まれていた。


 助けを求めるものの、どこの都市では門前払い、ますます手がつけられない状況に。


 数人の薄汚れたドロドロのドワーフ達は、助けを求めて街道を彷徨っていた。

 彼らは風呂に入らず、ダニや蚤対策として、体に土をねしつけている、そのため、動く土人形に観えない事もない、普通の人が拒絶するのは、当たり前の風体をしているた。


 都市ダラムの行商人、シンディのキャラバンと偶然遭遇。


「 あたしに任せな、漆黒の魔女様に、合わせてやるよ 」


 シンディは、3人の薄汚れたドロドロのドワーフをダラムギルドに連れてきた


「 ここで待っていな、必ず漆黒の魔女様が来るから 」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る