八首【手を伸ばす するりと逃げる 文庫本 机の下から 白い指先】

食器を洗う妻の背中と何気ない会話をしていた時だった。


読みかけの文庫本に手を伸ばすと、まるで糸に引かれるように平坦な机の上を文庫本がスルスルと動いた。


距離にすると20センチほどだろうか?


全身に鳥肌が立った。膝や太腿に至るまで本当に全身が粟立つ。


「うえ…?」


思わずおかしな声が漏れた。


その声で妻が振り返り青ざめる。


どうやら妻も机の上を滑る本を目にしたようだ。


しかし私はもっと恐ろしいものを見た。


本を引っ張っていたのは糸などではなく、机の下から伸びた白い手だった。


 


 手を伸ばす するりと逃げる 文庫本


    机の下から 白い指先

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