第11話 揺れるスーザン王国

ーー 内乱、暗殺、揺れるスーザン王国



その一報を聞いたのは私がタロウと食事を家で摂っていた時だった。

「え!国王が暗殺された!・・・誰に?何故?」

思わずセバスチャンにそう聞いてしまった。

「詳細は分かりませんが、どちらかの王子ではないかとの情報もあります。」

「王子!スイフトは無事かしら?」

王子と聞いて第三王子と結婚したスイフトの身を案じた。

「そのスイフト様からの情報です。国王暗殺を知り急遽ビブラン侯爵家に避難中とのことです。」

「そうなのね、分かったわ。迎えに向かいます。タロウ準備して!」

そう指示をすると私は、スイフト嬢を迎えに王都方面に馬車を走らせた。


スイフト嬢を迎えにいく途中馬車内で情報の整理を行なった。

「王位を狙っていたのは第一王子と第二王子なのね?」

「はいその通りですが、第二王女も動いていたとの情報もあります。」

「第二王女?この王国では女王も王位を継げるの?」

「はい問題ありません。その場合は婿をもらう形となりますが、そのお相手が隣国の王子で自国で王位を継げないためではないかとの憶測です。」

「ん、分かったわ。先ずはスイフト嬢と第三王子の保護ね。」

ここで私は、情報をいち早く取り込む方法を考えた。

「小さな蜘蛛やネズミなどの使い魔を王国中にばら撒けば・・情報が手に取るように入るわね。」

と独り言を言うと、具体的な使い魔を創造した

・空が飛べる

・小さい

・何処にいてもおかしくない

これらの条件を考えて

・蜘蛛

・鳥

・ネズミ

の三種類を使い魔として創造することにした。

「使い魔創造」

と呟くと、空間に光が集まり何かを形作る。

ポン!という感じで三体の使い魔のリーダーが出来た、これからそれぞれに複製能力を授け王都や王国内にばら撒くのだ。

「蜘蛛さんはスパイリーダー、鳥さんはバードリーダー、ネズミさんはマウスリーダーと名付けます。」

というと私から魔力が吸われる。相互に意思伝達ができることを確認して前に並ばせると。


「皆んないいわね仲間を増やしながら必要な場所に向かうのよ。」

と命じると鳥の背中にネズミと蜘蛛が乗り空高く飛び立った。


それを見たタロウが、

「従魔がまた増えたな今度はどえらい数になりそうだな。」

と他人事のように呟いた。


その後無事にスイフト嬢達と合流した私達は、ビブラン侯爵領に戻った。



ーー 王位争いの概要



スーザン王国の現国王には3人の妻と5人の子供がいた。

第一妃〜現王妃 ダリア  ーー アルメニ公爵の娘  ー宰相派閥

    第一王女 ナイル  ー 隣国に嫁いでいる

    第二王子 ツタンカーメン

第二妃〜 ダイア  ーー カーディナル辺境伯の娘  ー辺境伯派閥

    第三王子 スフィンクス

第三妃〜 コクヨウ  ーー 滅んだ隣国の公爵家の娘 ー反宰相派閥

    第一王子 クフ

    第二王女 クレオパトラ  ーー 隣国の第三王子との縁談あり


であり、王位の継承争いをしているのが第一王子と第二王子、それに第一王子の妹第二王女が加わっているとされる。


第三王子は母の教育の影響で王家や王国を守る役目を幼い頃から自覚しており、騎士団長を兼任しているカーディナル辺境伯の長男の元で日夜訓練をしている。


今回の暴挙は、騎士団が訓練のため魔の森に遠征するために王都を離れた隙を突かれたもの。

王都周辺に密かに配置されていた反宰相派の貴族の兵士らが、王都の外門・内門を封鎖し凶行に至ったもの。


宰相は危険を感じ辛うじて逃げおおせたが、怪我をしかなりの重傷の模様。

王妃らは軟禁状態で、第一王子と第二王子それと第二王女の安否は不明。


第三王子は騎士団と共に遠征に参加していたために無事、直ぐに引き返すも門が硬く閉じられ攻めあぐんでいる状態で、騎士団の勧めに従い妻と避難中である。

何故辺境伯領ではなくビブラン侯爵領に避難するかと言えばただ単に王都からの距離だ。

直ぐに王都に駆けつけるためには、ある程度近くそして武力があるところがいいのだ。


そして次の日密かに怪我を負った宰相が運び込まれた。

これでビブラン侯爵領に暗殺対象が揃ってしまったということになった。

「セシル子爵様、どうか宰相様をお助け頂けませんか?」

スイフト嬢は自分も暗殺の対象になっている可能性があるのに、人の心配ばかりまあそういう人だから友達でいられるのだけどね。

「はいはい分かりました。ちょっと治してきます。」

と軽口を叩いて宰相の眠るベッドに近づき

「診察」

「解毒」

「ヒール」

「栄養補給」

と自分の使い勝手のいいように詠唱しながら治療にあたった。

当然ながら毒の塗ってある剣で斬られたようで、もう少しで危ないとこだった。

解毒して傷を治して、出血と毒で弱った身体に輸血がわりの生命エネルギーの注入で、怪我をする前より元気になったと思うよ。

静かに寝息を立てる宰相を見ながら部屋を出て、スイフト嬢に結果を報告した。



ーー 暗殺者登場



宰相を治した次の日から暗殺者がビブラン侯爵領に潜入してきていると報告が始まった。

「それでどのくらいの数来てるの?」

と私が尋ねるとその場にいたビブラン侯爵様が

「50人からの刺客だそうだ、多分王都にある犯罪組織の殺し屋を総動員したんだと思うぞ。」

とのこと。

「ここの守りは任せて、後は・・・殲滅するか死んだふりをするかですね。」

「我が領地に犯罪者が入り込んで、死んだふりはできんな。全員捕まえてやる。」

という侯爵に

「それならば私にお任せください。暇をしている孤児院の精鋭を使って狩り立てます。」

と答えて私はタロウに指示をする

「タロウ、あの子らに伝言よろしく。その後はこの屋敷を警護ね。」

「その命令確かに承った。」

時代劇くさい答を残して消えるタロウ。


その日から街で狩りが始まった。

朝になると侯爵屋敷の前に並べられる戦果(刺客だったもの)

20人ほど数えたところで、残りが一斉に襲撃に転じたが、火に飛び込む羽虫のように1人残らず転がることになる。


暗殺失敗を知った依頼者は、兵士を向ける暴挙に出た。

依頼者は多分宰相が亡くなったと思い込んでいる、それで王国を自由にできると考えて

「売国奴である宰相を匿うビブラン侯爵は、王国の敵とも言える。我の手で父の無念を祓い売国奴の敵を殲滅せん!王国兵士よ正義の名の下に進行せよ!」

と言ったのは第一王子クフとその横で微笑む第二王女だった。


第二王子については、その前に

「売国奴の宰相に加担した第二王子は我が討ち取った。残りは第三王子のみ。」

と言う第一王子の言葉が聞かれたと言う。



その数5000、当然ながらこの中に騎士団は含まれていない。

騎士団は王都の外に野営しながらことの推移を見守っている様子。

この情報は、私の使い魔達が早速仕事をしてくれて教えてくれたのだ。


ーー 対峙



侯爵軍は2000余、総勢でも3000ほどしか徴兵できない上に屋敷の守りも必要と言うことでの最大兵力だ。

相手は5000で出発したが、途中から勝ち馬に乗りたい貴族の増援を受けて侯爵領に着く頃には、総勢10000もの大軍となっていた。

この遠征隊を指揮するのは当然第一王子、もう国王になったかのような態度である。


ここで何故第一王子がこのような暴挙に至ったのか説明すると。

[ 第一王子は幼少の頃熱病に侵され、子種がない身体になった。その為国王は跡目争いで国を割ってはいけないと第一王妃の息子第二王子に継承することを決めていた、それを知った第一王子派と王子は激怒、「自分の後継は妹の子供に継がせる。」と宣言して今回の暴挙に至ったのだ。]


それで妹の第二王女が協力している謎も解けた。



ーー 開戦



勝った気で士気が上がっているが、まとまりの無い第一王子軍。

少数で負ける気のしないまとまりのある侯爵軍、負ける気のしない理由は当然私らの戦力だろう。

「こちらには女神が付いているんだ。卑劣な逆賊に負けるはずがない。」

と言う声が聞こえてくる、まあそれはそれでどうなのか。


「最終警告をする、売国奴の侯爵軍よ、白旗をあげて降伏せよ。今から10分後にそう攻撃をかける。」

と言う警告だが、10分ではどうにもならないので生かす気はないようだ。


10分後、ドラの合図で総攻撃が始まった。


「落とし穴行けー!」

と唱える、幅10kmの大穴を作れる私が僅か1万の兵を落とす穴を作れないはずがない。

数秒で1万もの兵士全部が深さ5mほどの穴に落ち込んだ。

「わー!」

「この穴はなんだ!」

「上がれないぞ!」

至る所から声が聞こえるが、多分3000人位は圧死していると思う。

私は引き続き

「凍りつけ!」

と魔法を発動する、これでほとんどの兵士が身体が凍りつき身動きができない。

「何をしておる!俺を助けろ!馬鹿野郎ども!」

何やら1人で騒いでいる声が聞こえる、多分バカ王子だろう。


侯爵軍の隊長が

「弓を構えろ!」

と弓兵に号令をかける。

その号令を聞いた穴の下に落ちた兵士たちは、青ざめた。

身動きもできない状態で矢を射られたら生き残る術はない。

「助けてくれー。」

「無理やり連れて来られたんだー。」

と叫ぶ兵士が続出。

しかし7000もの捕虜をどうにかできる余裕はない、せめて1000〜2000ならと言うことで。

「矢を撃て!」

と言う号令が3度繰り返された、生き残りは3500くらい。

「まだ少し多いな、もう一度よく狙え。撃て!」

これで生き残りは1500ほどになりました。

生き残りを穴から出すと私は穴の中の死体に魔法で火を付ける。

すると死んだふりをした兵士やバカ王子が泣き叫び出したが、聞こえないふりして侯爵屋敷に戻った。


私は土魔法師達に穴を埋めてくるように指示をして侯爵に結果を報告。


「ご苦労であった。これより侯爵軍は王都に進行、王国に秩序をもたらす。」

と言うと隊列を組み直し、午後には王都を目指して進行していった。


私はと言うとスイフト嬢とその夫第三王子を伴い更には怪我が完治した宰相を乗せた馬車で、最後尾をついて行く。


「此度は大変お世話になった。ありがとう。」

宰相が深々と頭を下げた。

「困ったときは助け合いですよ。」

と答えて私は新作スイーツをスイフト嬢と食べるのだった。



ーー 新国王と新しい領地



楽しい馬車の旅を満喫しながら王都に着いた私達侯爵軍、あまりにも早く決着がつき即王都に向かった為、相手側も正しい情報を得ていない様子。

元気になった宰相を先頭に王城に入場、その際には王都の外にいた騎士団も一緒に入場した為、抵抗するものもなく第二王女と第一王子の関係者は、あっという間に捕縛された。

軟禁されたいた王妃らも解放された。


速やかに王位の継承が行われ、新しい国王に第三王子が立つことになった。

スイフト嬢は王妃だ。


今回の内覧騒ぎに乗じて隣国から侵攻しようとしていた国が2つあったそうだが、1万もの兵をあっという間に全滅させた魔法に慌てて国に逃げ帰った様子。


これで今回の騒動は終了したと思っていたら、新国王に呼ばれて

「セシル子爵に今回の反乱軍平定の褒美として領地を加増し、伯爵に叙爵くするものとする。」

と言うことで私は伯爵となり子爵領の王都側の男爵領を追加されたのだった。


「そう言うことでよろしく頼むわ。」

私は、デカント兄妹に丸投げしたのだった。

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