第14話 白神吹雪は1人になりたい
はいどーも白神吹雪です。俺は今とても困っています、何故かって?
美少女2人に囲まれてるからさ。他の人なら困ることなんてないだろうが、俺の場合は平穏に過ごしたいので注目を浴びるのは困るのだ。
「蒼井、俺もたまには1人でご飯食べたいんだけど。というか紅葉と蒼井が俺の周りにいるせいで男子からの視線がえぐいんだよ」
蒼井は転校初日で男子のほとんどを虜にしてしまうほどの美少女であるからだ。
そんな蒼井に囲まれてるんだ、他の男子からしたら羨ましいことこの上ないだろう。
「ということで俺は屋上で食べてくるけど……。まぁ着いてくるならもう勝手にして、来たら今日は来れると思わない方がいいよ?」
もちろん冗談である、紅葉にそんなことはできない。
「えーそれは酷いよぉ……。本当にそれは困るから行かないでおく」
いつも吹雪と紅葉はこんな感じなのでクラスのみんなは2人が付き合ってると勘違いしてる。吹雪が紅葉と二人きりでいても男子からの視線がないのはその勘違いがあるからである。
実際は付き合ってないし、春休みに同棲してたということも過去のこともクラスのみんなは知らない。だからただ彼氏の家に紅葉がご飯を食べに行ってるとしか思ってないのだ。
「ねぇねぇじゃあ今日、私が行っていい? ずっと紅葉さんが行ってたんだから」
「俺の話聞いてた? 一人の時間が欲しいって言ってるの。今日はお願いだから家でゆっくりさせて」
ほぼ毎日と言っていいレベルで紅葉のご飯を作っていたのでさすがの俺も疲れてきた、少しは休みをください。
「こんな美少女からの誘いを断るなんて何事だー!」
「自分で美少女って言うのはどうかと思うよ……? まぁ学校でも一二を争うぐらいには可愛いと思うけどさ」
吹雪はこういうことを無自覚で言う時が多々ある。それを春休みの頃からずっと受けていた紅葉に関してはもう慣れていた。
蒼井は3年ぶりぐらいにこんなことを言われてしかも小学生の時とは違って高校生、恋愛の考えも頭の中にあるのだ。そんな中で急に可愛いなんて言われた恥ずかしいに決まってるだろう?
ただ言った吹雪自身は無自覚なので恥ずかしがることは無いのである。
「……吹雪って本当にタチ悪いよね。私は慣れたけど蒼井ちゃんにそういうことしちゃダメだよ?」
「え、何の話?」
「これだから無自覚は……」
(でも自然に褒めれる人がモテるんだろうなぁ)
※※※
「……」
結局のところ紅葉が料理の練習をしたいと言うので家の中に入れてしまった。
「料理するのはいいけど怪我しないでね? 俺がちゃんと隣で教えはするけど……。とりあえず何が作りたい?」
「今後のことを考えてオムライスが作りたい! 誰かに振舞ってみたいから」
オムライスの材料があるか冷蔵庫を開けて確認したが卵というオムライスを作る上で欠かしてはならないものがなかった。
買いに行こうとすると紅葉も着いてきた。
「別に待ってても良かったんだよ? スーパーなんか男の人はいっぱい居ると思うし」
「吹雪と一緒にいるから大丈夫……」
「なんだそれ」
大丈夫と言っているが体は震えてるし俺の腕をがっちり掴んで俺にくっついたままだ。
というか俺も青い高校生なのでこうも体を密着させられると目のやり場に困る。まぁでも紅葉の事情を知ってる俺は紅葉を突っぱねることは出来ない。
「もうこの際掴んでいいけど離れないでね? 俺結構歩くの早いから」
「うん……離れないようにする」
紅葉に言ったら怒られるので言わないが紅葉は身長が小さい方なので妹のように見えてしまう。
というか卵を買いに来ただけなので一瞬で終わるしカゴを持ってくる必要はなかったんだけど……。
「何か買うか紅葉? もちろん代金は俺持ちで。1000以内なら買ってあげるよ、先月の生活費が少し余ったから」
「じゃあいつものグミ……っ!」
一般男性客が俺たちの隣を通ったので紅葉は声を上げそうになったがなんとか堪えれたらしい。
「大丈夫? 本当に無理はしないで、またあんなことになったら俺は止めれないし紅葉自身も止められないでしょ?」
あんなこと、少し前の梅雨……まだ紅葉が吹雪の家に泊まって生活をしていた時の話。
相当リアルな夢を見た紅葉が精神崩壊気味になってしまい呼吸すらもまともに出来ない状態になってしまったことがあるのだ。
もちろん病院に連れていこうとしたけど今男性がいる場所に連れていったらより悪化してしまうと考えたので俺だけで落ち着かせることにしたんだ。
「さっさと卵とグミを買って帰ろう……?」
「ん、レジの人がもし男だったら俺の背中に隠れてていいから」
そんなこんなでレジに向かったのだが幸いセルフレジが空いていたのでさっさとセルフレジでやることを済ませて家に戻った。
「じゃあ作り始めようか。言っておくけど怪我しないでね? 無理して自分でやろうとしなくていいから俺に頼って、それが約束」
「うん、わかった」
そして2人でキッチンに立っているというなんとも懐かしい風景を思い出した。
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