第6話 星天の下で
久しぶりにニュースを見たが今日はペルセウス座流星群が発生するらしい。それに加えて今日は一日中晴天らしいので早速俺は山に向かってあおいを誘いに行った。
もちろん流星群を見に行くとお母さんに言ってからだ。
山に行けばいつものようにあおいは居る、それにいつもの指輪に加えた俺があげたネックレスもつけていた。
「吹雪くんは、星に興味はある?」
「流星群が今日なんだよね、良かったら一緒に見ようよ。もしかしてあおいも同じことを考えてた?」
「吹雪くんも私を誘おうと思ってたんだね。とりあえずいつも通り風真お姉ちゃんの家に行こうか。さすがに大人がいないとダメだからね」
※※※
風真さんは俺たちが来る時にはいつも椅子に座って本を読んでいる。風真さんは俺たちが来ることは知らないはずなのにあたかも知ってるかのように玄関の正面にある椅子に座っている。
「風真お姉ちゃん、今日の夜って時間空いてる?」
「流星群を見に行くのかい? それならここに来たのも私を連れていくためだろう? 夕方になったらここに戻って来てねぇ。昼の間は自由に遊んでおくといい」
俺たちは風真さんの家から出て山の上に戻った。また降りて登るのは面倒だとは思うが俺たちが遊べる場所はここしかない。
他の公園なんかは俺たちをバカにする学校の奴らがいっぱい居る、そいつらと出会うくらいなら少し山を登って2人きりで遊んだ方がマシだ。
「流星群ってさ流れ星がいっぱい降ってくるってことなんだよね? それだったらさ、お願いことをいっぱい言えるんじゃないかなっ!」
「願い事は1個の方がいいよ。強欲すぎると叶わないからね、だから俺はあおいとこれからも一緒にいられることを願うって決めてる」
流れ星は一瞬の出来事で、そんな流れ星が流れてる一瞬の間でも願いが叶って欲しいと強く思っているからいつか叶うんだ。
でも吹雪の願いが叶わないことはもう決まっていることなのだ。
「でもあおいっていつも神社で祈ってるよね? 流れ星のことは一旦置いといて、神社では何を祈ってるの?」
「未来のこと、もっと簡単に言えば中学生の時だったり高校生の時は今みたいに独りになりたくないから。私の事を認めて貰えますようにって」
あおいは友達を増やしたいと思ってるけど俺は違う。別に作りたくない訳では無いが俺はあおいが友達で居てくれたらほかの友達を作らなくてもいい。
───怖いんだ、裏切られるのが。
仲がいいと思ってたヤツに裏切られてクラスが全員敵になった、この銀髪を捨ててしまいたいと思ってしまった。
「……もし俺が普通に黒髪ならあおいに出会うこともなかったんだろうな。それなら銀髪で生まれてきてよかったと思えるよ」
「そっか、私もこの瞳で生まれてきてよかったと思ってる。吹雪くんとここで出会えたから、友達になれたから」
今から別れるみたいな雰囲気になってしまっているが、俺たちはこれからだ。これから中学、高校と成長して行っていつまでもあおいと一緒に生きていきたい。
※※※
俺たちは涼むために山を進んだあたりにある川に足を付けていた。
「なんか、いかにも青春って感じでいいね。ここで水を掛け合ったりするのが定番なんだろうけど着替えを持ってきてないからやめておこうか」
「そうだね、でもまた来年も一緒に来られたらちゃんと着替えを持ってきて……。その時には2人じゃなくてもっと色んな人達と遊ぼう」
中学になれば理解ができる人も増えてくるだろう。さすがに全員が馬鹿にしなくなるとは言いきれないが、クラスが全員敵にならないだけマシだ。
ここら辺に中学は二つあるのだがあおいの家が風真さんの家から近いと仮定した場合は位置的同じ中学になると思うがあおいの家がもっと遠かったり受験をする可能性もあるだろう。
「来年はもう中学生だからね、遊んでるだけじゃダメだよ? しっかり勉強して、成績をちゃんと取らないと遊んじゃダメだよ」
「それはちゃんと理解してるつもり。遊ぶ時間が少なくても全くないってわけじゃないんだからさ」
あおいと少しでも遊べる時間があるのなら俺は勉強を頑張れる。
※※※
夕方ぐらいになったので俺たちは一旦風真さんの家に戻って来て、流星群を見に行く準備をしている。
「夜の山は昼とは比べ物にならないほど危険だからねぇ。みんな1個ずつ明かりを出せる道具が必要だからこのランタンを貸しておくよ」
「うん、とりあえずこれで準備は大丈夫かな。あの山には誰も来ないし、流星群をゆっくり見れるねっ!」
3人であの山に戻り、星が降る方向にちょうどベンチがあったので俺たちはそこに座っていた。
「吹雪くん、少し話があるから神社の裏まで来てくれるかな? 悪いけど蒼井はここに居ててねぇ、蒼井にはまだ話すことじゃないから」
「いずれは教えてくれるんだったらいいよー。気が済むまで話して来てね」
俺は風真さんと一緒に神社の裏まで行って木の下に座り込み風真さんは口を開いた。
「まずこれだけは言っておく、蒼井と仲良くしてくれてありがとう。早速本題に入るけど、蒼井は夏休みが終わったらアメリカに行かないとダメなんだ」
「……それは1年ですか、2年ですか? 何年でもいい、あおいがもう一度ここに帰ってくるのなら俺はとどめるつもりは無い」
「理解してくれて助かるよ、蒼井には夏休みを楽しんでもらいたからねぇ。まだこの事は言わない、でも帰って来れる確証は無いって事は理解して欲しい」
親が海外に仕事をしに行ってることから海外に引っ越してしまう可能性は全然あったがそれがすぐに来てしまうとは思っていなかった。
でも俺に止める権利は無い、本心はやっぱりあおいに海外へ行って欲しくないが出会って1年も経ってない俺が口出しすることはできない。
「私の考えは吹雪くん寄りなんだ。でも私は蒼井のことを預かってるだけだ、本当の親が連れてきて欲しいと言ったら従うしかないからねぇ」
「まぁあおいが居なくなるのは寂しけど、再会できる可能性があるならそれでいい。……来年は無理か」
今日の昼に来年も来られたらと言ったが来られないことが既に決まっていたとは……。
あおいの所に戻ってももう少しで居なくなることが頭の中で回っていて、素直に流星群を楽しめなかった。
初めてできた友達がこんなに早くどこかへ行ってしまうなんて、とてもじゃないけど冷静では居られなかった。家に帰っても頭の中はあおいが居なくなるということだけで……。
「まだ夏休みは2週間もあるんだ、それまでに忘れられないほどにあおいと思い出を作ればいいんだ」
夏休みが終わったあとにあの山に行く用事が出来た。もちろんそれはあおいがいつかここに帰ってくると祈るためだ。
どんな時だって強く思い続けていれば願いは叶う。
だってそうだろ? そのこと以外を考えれないほどにそのことが叶って欲しいと強く強く願っているのだから。
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