第12話 どうやら子ども好きに好かれたようです

 突然スキルを手に入れたことに驚いていると、武器屋の店主が声をかけてきた。


「ヒヒヒィ、スキルでも手に入れたんかね?」


「えっ?」


「その顔を見たらそれぐらいはわかるぞ」


 よっぽど僕は驚いていたらしい。そもそもスキルは10歳になった時にしか与えられないと思っていた。それが突然スキルをもらったのだ。


 驚かない人の方がおかしいだろう。


「スキルは経験を積めば手に入るぞ? それなりに努力は必要だけどな。ヒヒヒィ!」


 武器屋の店主の話では、経験を積めばそれがスキルになるらしい。冒険者が魔物を倒して強くなるのも、スキルを使って戦うことで少しずつ経験が蓄積されてスキルになるらしい。


 魔法使いがたくさん魔法を覚えるのはこれと同じ原理らしい。


 そう思うとこれからも冒険者として活動するなら、パーティーを組まずにソロになるだろう。今後もガチャテイムをして、たくさん家族を作ってエリクサーを見つけて来ないといけないからな。


 それしか妹の魔力喰いを治す方法はない。


「じゃあ、この武器をレンタルしてもいいですか?」


「銀貨五枚だけどいいのか?」


 銀貨五枚だと今の宿屋の二人分の宿泊費になってしまう。ただ、武器を買うお金も持ち合わせていない。


 そんな僕を見て店主は笑っている。きっと僕では借りることができないと思っているのだろう。見た目もボロボロだからね。


 この際レンタル武器を体験してみるのもいいだろう。採取依頼二回分で元は取れるし、森の確認も必要だ。


 いざとなれば"秘技モスモスビーム"を使って逃げてこよう。


 僕は鞄から銀貨を取り出して店主に渡す。


「ヒヒヒィ、確かに受け取ったよ。お主の幸運が良い人生を導いてくれるだろう。あと――」


 短杖を腰ベルトに引っ掛けると、急いで武器屋を後にした。次に行くのは採取依頼を受けるための冒険者ギルドだ。


 時間がないため、急いで冒険者ギルドに向かう。


「あの武器は毛が多い魔物には効かないけど大丈夫なのかしらね。ヒヒヒィ、それにしても聖虫せいちゅうを従えているとはまた珍しい。私達魔女でも聖虫を飼い慣らすことなんてできないわ」





 冒険者ギルドに着くと早速採取依頼を手に取り、ギルドスタッフへ持っていく。僕のことを覚えているのか、手を振っている。


「採取依頼をお願いします」


 そんな僕の姿を見て、他の冒険者達は笑っていた。よほど採取依頼を受ける人が少ないのだろう。


「武器はレンタルできましたか?」


 僕が短杖を取り出すとギルドスタッフの顔は怪しんでいた。普通に見たらただの棒に鳥の羽が付いているようにしか見えない。


 ただ、無駄に魔力がある僕には適している武器だ。ついでにモススの毛繕いもできる。


 その後も注意事項を数点聞くと、依頼を受けることができた。初めて一人で受ける依頼に胸の高鳴りを感じる。


 しっかりと採取する薬草も絵で見たし、どこに生えているのかも場所は聞いている。


「はあー、何かあったら急いで帰ってくるんですよ」


「行ってきます!」


 僕は気合を入れ直して冒険者ギルドを後にした。早く森に行って採取しないと、夜のご飯に間に合わないからな。


「はぁー、何だあの可愛い小僧は頭に大きな虫を乗せてたぞ」


「しかも、武器が鳥の羽って……」


「ああ、あれは俺が何とかしないといかんな」


「いやいや、ここは俺の出番だろ」


「はぁん!? お前は子どもなら誰でも手を出すから危険だ!」


「俺を変態扱いするなよ! ただの幼児好きだ!」


「それを変態って言うんだよ!」


 僕の知らないところで、冒険者ギルドは賑わっていたようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る