第3話 引っかかり
あの手の仕草は、〝好き〟っていうサインではなかった。
それよりももっと赤く、黒い欲望を現しているような……。
――独占欲……とか?
まあ、私もそこそこ強い方ではあるけれど、美紅先輩は桁外れなような感じがした。
なんか、こう深海に落ちてしまっているような……。
自分ではどうにもできないぐらい堕ちてしまっていたら。
自分は、今までの告白をどう話せばいいのか。
独占欲が強いのは構わない、けれど、強すぎて度が過ぎる
……だけれど。
あのキスされた感覚は、いまだ残っていて。
……もう一度、したい。
あれだけ拒否ってしまったのに、なぜかまた求める。
あの表情を思い出すだけでも顔が熱くなってしまうのはどうしてだろう。
シャープペンでノートをぐちゃぐちゃに落書きされてしまったみたいに、モヤモヤしてしまって、感情が読み取れない。
そしてさらに、引っかかってることがあって。
あの帰り際の表情はなぜか悲しそうで、声音はなぜか辛そうで。
なにかを抑えているかのようだった。
私には見当がつかない。
……けれど。
「美紅先輩、なにか抱え込んでそうな感じがする」
なにか抱え込んでいて、ほかの人に迷惑をかけないように……。
だとしたら? 自分に何ができるの?
んー。わからん。
張りがない声で、部屋の机でうなだれる。
多分、正解は無いんだ。正解は無いけれど、答えは無いわけじゃない。
必死に頭をこねくり回す。ある最善の一手は……。
これしかない。
『了解よ』
でもひょっとしたら、ここから道は開けるかもしれない。
この先に、光はあるかもしれない。
そう思いながら、机横の身長より大きな窓ガラスを見て
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます