第14話 映画デートと無自覚彼女ムーブ
この話は蘭目線のみになります!
――――――――――――――――――――――――――
午前10時頃。アリモの映画館にて。
私たちはポップコーンやドリンクを売っているカウンターに並んでいる。
そして、私の隣にはジーンズとシャツに身を包んだ陽葵くんがいる。
そう。今日は陽葵くんとデートの日だ。
「今回の映画はどんな爆発があるのか楽しみですねー!」
「・・・君コ〇ン映画の見どころ爆発だと思ってるの?」
「ふぇ?違うんですか?」
一応探偵だから推理がメインのはずなんだぞ?
爆発シーンも確かに多いし迫力はあるけど、少なくともメインはそれじゃないはずなんだが?
あと何が『ふぇ?』だクッソかわいいなコンチクショウ。
「えっと・・・推理は?」
「あんなの常人に分かるわけないじゃないですか。」
身も蓋もないことを言うんだな君は。
てかそういうことを割とズバッと言えちゃうんだね。ちょっと意外だな。
「それにしてもネット購入がこんなにも楽だとは・・・蘭さんと蘭さんのお父様のおかげです。」
「父さんは特に手間じゃないらしいから気にしないでいいよ。私には・・・何かご褒美をくれてもいいんだよ?」
「ご褒美ですか?・・・あ、そう言って頭を撫でるつもりですね!?」
「バレたか。」
悪びれない私を見て、もう!あれ恥ずかしいんですよ!とプンプンする陽葵くん。そんな陽葵くんもかわいい。
う~ん初見でバレてしまったか。うまくいけば3回目くらいまでは擦れると思ったんだがな・・・仕方ない。ここは素直に引き下がるか。
「そういえば陽葵くんは、ポップコーンは何味にするんだ?」
「む、露骨に話題を変えてきましたね?」
じとーーーー
あっヤバイ。ジト目陽葵くんかわいすぎ。全く陽葵くんはそんなに私の心を撃ち抜いて何がしたいんだ?おねだりか?もともと私陽葵くんおねだりされたら断れる自信ないんだけど。
マジで何でも買ってあげちゃいそう。
「まあいいです。僕は・・・どちらかというとキャラメル派です。」
「お!奇遇だね。私もキャラメル派なんだ。じゃあダブルでいい?それともシングル2個買っても大丈夫―――」
「ダブルがいいです!」
なにぃ!?陽葵くんが私のセリフをさえぎってきただとぉ!?あのおとなしい陽葵君が・・・そ、それほどまでに強い気持ちがあるのか・・・?
まあ確かに、ここのダブルはシングル2個の値段でありながら量はそれよりも多いからお得ではある。
だが陽葵くんは食い意地を張るタイプではないし、お得感が目当だとしてもお金は私(の親)が出してくれてるから気にしなくていいんだが・・・
「・・・食い気味だね。やっぱりお得だから?」
「う~ん・・・それもちょっとあります。」
やっぱり。そこはあんまり気にしてない。でも、じゃあなんで・・・?
「じゃあ、なんでそこまでダブルがいいの?」
「え、えとえと・・・た、他意はないんですよ!?ただ、その・・・」
「うん。」
「そ、そっちの方が・・・なんかこう、デートっぽい、じゃないですか。」
「・・・・・・」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
あ、ゴメン。死んでた。
尊すぎて死んでた。
「・・・あの~・・・蘭さん、大丈夫ですか?」
「ん?ああ・・・大丈夫だ。清流の向こうに花畑と亡くなった祖父が見えただけだから気にしないでくれ。」
いやぁ、本当に綺麗だった。
それにじいちゃんも元気そうだったなぁ・・・
「本当に大丈夫ですか!?それ三途の川じゃありません!?」
「まあそうかもしれないね。でももとはと言えば陽葵くんが悪いんだよ?」
陽葵くんがそんなキュン死させること言うから・・・私たちまだ付き合ってないんだよ?なのに『デートっぽい』みたいな頭沸いてる奴が痛々しくキメて行ってそうなセリフをさ、そんな照れながらかわいく言われちゃ世の女性なんて一撃ノックアウトよ?特に私なんか。
「えと・・・なんかすみません・・・?」
「う~ん、ナデナデさせてくれたら許そうかな。」
「なっ・・・!もう!本当に調子がいいんですから・・・」
「冗談だよ。あ、ちょっとこっち寄ってくれる?」
「え?・・・わっ」
そっと陽葵くんを抱き寄せると、すぐ後ろをカップルが通っていった。
どうやら邪魔になっていたらしい。
「ちょっと広がりすぎてたみたい。いきなり押してゴメンね。」
「え、あ・・・ありがとうございます。」
その後無事にポップコーンとドリンクのカップ(ドリンクバー制)を買い、入場時間までゆっくり飲み物(メロンソーダ)を嗜みながらおしゃべりして楽しんだ。
そんな二人を見る複数の視線に、気づくことなく。
・・・・・・・・・・・・
『NO MORE 映画泥棒!!』
「わぁぁぁぁ・・・!これ久しぶりに見ました!」
「いつみても面白いよね。」
私の右隣りに座る陽葵くんが映画お決まりのパトランプ男とビデオカメラ男の逮捕劇を見て目をキラキラさせている。かわいい。
「はい!しかも、最近はアクションが増えてる気がします!」
ぐいっ
「そ、そうだね。」
うわぁ近い近い!!そんなキラキラした目で迫ってこないで!浄化されちゃう!心の中が浄化されちゃうから!私の汚い(陽葵くんをモフりたい)欲求とかがまとめて消えちゃうからぁぁ!!
そんなことを考えているうちにCMが終わり、このシリーズ恒例ともいうべき初手大爆破が起きた。
ちらっと陽葵くんを見ると、『これなんだよ!』って顔をしていた。
・・・ほんとに爆破が見どころなんだね君。
「(あ、そうだ。ポップコーン私の膝の上にあるから好きにつまんでね。)」
「(あ、ありがとうございます・・・!)」
なお、ときどき陽葵くんと手がぶつかってドキドキしたのは言うまでもないだろう。
そして映画が佳境に差し掛かった時、事件は起きた。
「・・ん?あれ?」
私のメロンソーダが無くなった。え?あれ?My melon soda is どこ?
確かに私こっちに置いていたはずなんだけど・・・
反対側に置いた?いや、こっちにもないな。手に持ってる・・・なんてこともない。あれ?誰かに取られた?でも私、陽葵くんの方に置いたはず・・・
ん?陽葵くん?
ふと横を見ると、ちょうど陽葵くんがメロンソーダを飲んでいた。
そして陽葵くんの右側のひじ掛けにもメロンソーダが置かれている。
・・・
・・・・・・
あ、じゃあ陽葵くんが今飲んでるやつ私のじゃん。
え!?じゃあ陽葵くんが今飲んでるやつ私のじゃん!!
「あれ?なんでこっちにもメロンソーダが?・・・・・・ぁっ!!!??」
あ、陽葵くんも気づいた。
「(あ、あの・・・陽葵くん、それ・・・)」
「(・・・蘭さんの、ですよね・・・?)」
「(・・・うん。多分、私の。)」
「(ご、ごめんなさいいいぃぃぃ・・・!!あ!僕のいります(?)!?)」
え、それは陽葵くんの飲んだメロンソーダってこと?え何それ欲し・・・コホン。流石にこれはライン越えだ。間接キスについては陽葵くんのは事故だし相手が私だからいいが自分からしに行くのは違う。
「(いやいや、Lを頼んだ割にほとんど飲んでないし大丈夫だよ。)」
「(え、あう、そう、ですか?え、えと、じゃ、じゃあ・・・!)」
「(私は特に気にしてないから、君もあんまり気にしないでね。)」
これに関しては本心だ。自分が間接キスするのはさすがに意識するが、相手にされるのはさほど気にしない。まあ相手によるが。
「(そう、ですか?)」
「(ああ。とりあえず返してもらえるかな?)」
「(あ・・・!は、はい!ごめんなさい!)」
・・・さて、陽葵くんが飲んでしまったメロンソーダがある訳だが。
やっぱりするってなるとドキドキする~~・・・
と、とりあえず一口・・・
こんなことがあった後に映画に集中できるわけもなく、内容が頭に入らなかったのは言うまでもないだろう。
追伸:事故後に手が当たった時はめちゃくちゃドキドキしました。
・・・・・・
映画が終わった後。
う~ん面白かった。面白かったんだが・・・どうやって犯人特定したんだっけ?覚えてないな・・・
「・・・陽葵くん?」
「先ほどは本当に申し訳ございません。映画が終わり次第ナデナデでもモフモフでもお好きなようにしてください。」
それは大変興味のある罰だね・・・わたしの好きにしたらとんでもない目に遭うかもしれないよ?
・・・でも、罪悪感を利用するのは違う。それは私が許さない。
「大丈夫だよ。気にしないでって言っただろう?この話はもう終わりだ。」
「え、でも・・・」
「私は人の罪悪感に漬け込んで利益を得るような真似はしないよ。」
「・・・はい。」
「だが!もし陽葵くんが少しでも償いたいと思うのなら、グッズ選び手伝ってくれない?」
「!はい!」
―――――――――――――――――――――――
「…え、あれ陽葵じゃね?」
「…うわマジじゃん。ラッキーwww」
「…隣にいるの誰?カノジョ?」
「…いやーないでしょwww親戚かなんかじゃね?」
――――――――――――――――――――――――
フードコートにて。
「混んでるな~・・・」
「混んでますね~・・・」
現在昼の1時半。連休中なのもあり、まだまだ人は多い。
「そういえば、陽葵くんは好きな食べ物あるの?」
「う~ん、あっさりしたものなら結構なんでも好きですね。あ、でも大好物はお出汁の効いたうどんです!特に甘くないものが好きですね!」
「へぇ、いわゆる西の味か。・・・なんというか、渋いね。」
意外というか、陽葵くんらしいというか・・・あでもお弁当もあっさりしたおかずが多かったような気がする。
塩おにぎりとかだし巻き卵とか玄米茶とかも好きそうだな・・・
次に陽葵くんを招待するときの参考にしよう。
「えへへ、よく言われます。蘭さんは好きな食べ物あるんですか?」
「バニラ系のアイスだ。」
「おおう即答ですか。」
「あ、ごはんに関しては玉ねぎいっぱいじゃなかったらだいたい食べるよ。あっさりか、こってりかならこってり派かな。」
「そういえば玉ねぎが苦手でしたね。ねぎは大丈夫なんですか?」
「実はねぎは好きなんだ。不思議だよね。」
陽葵くん覚えてくれてた・・・!
「あ!あそこ席空きましたよ!」
「本当だ。急ごう!」
そのあと陽葵くんはぶっかけうどんを、私は味玉ラーメンを食べた。
また、陽葵くんの前だからと食べる量を少し我慢したのは言うまでもないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます