門番

 背中でゆっくりと扉が閉まるのを感じながら、目線は正面にいる土のゴーレムから離せないでいた。


 ゴーレムはとても大きく、こちらを見てからゆっくりと動き出した。凄い緊張感を感じる。これが命の奪い合いと言うものなのだろう…。


(ふう。落ち着け。しょせんは土だろ?水を掛ければただの泥になるはずだ。)


 俺はゆっくりと右腕を正面に構えて魔力を掌に集めるように集中した。そして水弾を出そうと気合いを入れた。


「ふん!」


 だが、チョロチョロと水が飛び出しただけだった。


「え!?」


「ちょ、え?さっきまで出来てたじゃん!?」


 何度か試して「ふん!」をしてみたが、チョロチョロは変わらなかった。


 俺が色々焦っていると、正面にいた土ゴーレムは更に前進しゆっくりとこちらへと近づいてきた。


 俺はあまりの感情の高ぶりで大声で叫んでしまった。


「話が違うぞ!!!!」


 後ろから笑い声が聞こえた。

「フフフッ。セイ面白すぎ」


 俺は焦りながら後ろを見るとそこにはルフが居た。

「な、なんでルフがいるんだ?」


「ん~。そりゃあ、セイが心配だったからに決まってるじゃない?あれだけ練習で水弾打ってたら魔力切れするだろうなと思って着いてきたら、思った通りよ」


「ルフ…。出来る女は違いますね!惚れてしまう可能性が出てきたよ」


「ふふふふ。惚れても叶わぬ恋だと思って諦めるんだぞ!?」


 何故か二人でゴーレムが迫っている中でバカな言い合いっていた。


 俺はルフとの馬鹿話で落ち着いたのもあり、冷静にゴーレムを見る事が出来た。


 俺はこの部屋内をゴーレムが追いつけない速度で時計回りに歩きながら作戦会議をする事にした。


 図体はデカいが動きは相当遅い、ゴーレムは一心不乱に俺の後を追いかけてくるようだ。単純な行動しか出来ないのかもしれない。正直魔力回復するまで逃げ回ってもいいんだが、ルフに何か手段があるか聞いてみた。


「なあ、ルフは魔法でどんなことが出来るんだ?」


 ルフは空中でプカプカと浮かびながら答えてくれた。

「妖精種は攻撃魔法はあまり得意じゃないんだよね。その代わりサポートで力を発揮するんだ。現状、有効な魔法は身体能力上昇魔法だね。」


「つまり、俺が補助バフを貰って近づいてナイフをぶち込めって事かな?」


「正解!」


「よっしゃ!」


「じゃあ、バフを頼む」


 ルフは目を瞑り俺の斜め前で空中に浮かびながら両手を突き出し集中している。そして何かを俺の中に送り込んできた。


「出来たよ!感覚は動きながら覚えてね!」


「わかった。行ってくる!」

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