第185庫 ライオンのおじさんは変態
夕飯時、並んだ食事に驚く。
白米、焼き鮭、漬物、味噌汁、納豆まである。多少名前が変わっていてもよさそうなのに――味も含め、全てもとの世界のままだった。
懐かしい味に、思わず笑顔になってしまう。
「今日はこの国、定番のご飯にしてみた。お主たちの口に合うかわからぬが、いかがだろうか? いや、クーラ殿の顔を見たら聞くまでもなかったか」
風花さんが笑いながら言う。
安らぎの満天の食事も和風で美味しかったが、やはり食材自体が違うのか――根本的な部分の味わいが絶妙に異なる。
「風花さん、めちゃくちゃ美味しいです。この味噌汁、もしかして鰹節から出汁を取ってます? 喉を通る瞬間の深味が段違いなんですよね。焼き鮭の焼き加減も最高、漬物にいたっては茄子、キュウリ、大根、もうこれ三種の神器と言っても過言ではない。噛んだ後の爽やかな後味、またこのカリポリっとしたサウンドが脳内に響き渡るっ!」
「す、すまない、クーラ殿、早口すぎて聞き取れなかった」
「おかわりっ!」
ライカが空のお茶碗を掲げる。
局長はその食べる姿を見て朗らかに笑っていた。本当に子供が好きなのだろう、ライカを見つめる視線が柔らかい。
風花さんはご飯のおかわりをよそいながら、
「あっはっは。米だけは大量にある、いっぱい食べてくれ。この納豆は紅桜組の中でも好き嫌いがわかれるのだが、二人共特に問題なく食せるようだな」
「ライカ、納豆大好きだよっ!」
「おうおう。好き嫌いがないのはよいこと、食って食って食いまくれぃっ! 栄養を取れば取るほど、背も乳もでっかくなるはずじゃっ!」
「……局長、その発言はいかがなものかと」
局長のセクハラ染みた発言を風花さんが戒める。
「なぬっ! 不味かったかっ?!」
「変態だぁ、ライオンのおじさんっ!」
「許してくれいっ! 切腹以外はなんでもするっ!」
「じゃあ、ライオンのおじさんの焼き鮭ちょうだいっ!」
「いくらでもやろうっ!」
「一つしかないよぉっ!」
「風花、炊事場にはもう残ってなかったか?」
「焼き鮭はありませんね」
「すまぬっ! 打ち止めじゃっ!」
「仕方ないなぁ、今回だけ許してあげるっ!」
「がっはっは! ライカは懐が広いのうっ!」
なんやかんや、話が通じ合っているのであった。
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