エンディング
「う…………!」
僕は痛みにうめき、喉の奥でうなりながら体を起こす。
そして、自分の体を確かめる。手、足、そして指に耳に鼻。幸いなことに、体のパーツはドコも無くなっていなかった。
「イタタ……」
ただし、墜落したショックか、体中が痛い。
一体何がどうなったんだ?
(――ッ!!)
立ち上がって周りを見ると、黒煙を上げて燃え上がる宇宙船が見えた。
宇宙船は広範囲に破片を散らばらせており、もはや飛行できる状態にないのは、誰の目から見ても明らかだった。
「な、なんてこった……そうだ、みんなは!」
僕は残骸の周りを走り、皆の姿を探した。
すると――
「ポチ、それにみんな!」
「なんだ、サトーも無事だったのかい。」
「おー、やっぱ生きてたー!」
「心配しましたわ!」
「いや、それよりも、それは…………?」
僕の視線の先には、白煙を上げる炉があり、パチパチを火を爆ぜさせていた。
そして、炉の中に青色の鉱石が投入され、炉の下からは燃える金属が落ちており地面で鉄の板になっている。
「なんでこんなところで製鉄を?」
「ポチ、説明してあげて」
「プイ! えっとですね……アサシンシップから逃れるために空間跳躍したまではよかったんですが、跳躍先の惑星が完全な無人でして……」
「植物は存在するけど、強力な外骨格を持つ大型昆虫と魚類の他には動物は存在しない惑星で、ぶっちゃけ文明と呼べるものが何もないのよね」
「惑星ナーロウより悪化してる!?」
「キュ~、ただ30光年先に無人の採掘基地がありますので、そこに通信を送ることができれば……救助の可能性はありますよ!」
「あー……だからこれを?」
「そういうことだね。久美子が言うには、鉄を作ることから始めるらしいよ」
「だからいっぱい石ころとってきたぜー!」
「ですの!」
「……まさか、文明をイチから作るってコト!?」
「幸いなことに、ポチが居ますから。順調に進めば、数ヶ月以内には星間通信機が完成するんじゃないかと」
「プイ、ですが、ひとつ問題が……」
「うん?」
「この星に大型昆虫が居るっていったでしょ? どうやらそいつら……二酸化炭素に反応して、その発生源を攻撃する習性があるみたいなのよね」
「はぁぁぁぁぁぁぁ……?」
「キュ~……というわけで、ゼロから文明を築くのと同時に、昆虫型エイリアンとの生存競争に打ち勝つ必要があるというわけですね」
「あいつら不味かった!!」
「土を食べてるみたいな感じでしたわ」
そういえば、ハクとクロの足元になにか転がっている。
紫色のエビの殻みたいだが、問題はその大きさが自動車くらいあるってことだ。
惑星ナーロウより、事態が数段悪化してねぇ?
「め、目まいが……」
「まぁ、気持ちはわかるけど、ひとりじゃないだけマシだろ?」
ギリーさんがサブマシンガンを肩に担ぎながら僕を励ます。
あれ? そんな武器さっきまで無かったような……?
――あ、ポチが炉から出てきた鉄板を手でこねて、マシンガン作ってる。
なにそれ怖い。
「そうですね。僕が惑星ナーロウに降り立った時は一人でした。でも、今は仲間がいるし、最初からポチがいる……むしろこんな条件が良くていいのかなって」
「ハハッ違いないね」
「キュ……はい! サトーさんの分のマシンガンです。惑星ナーロウで使っていたのを真似てみましたけど、どうでしょう?」
僕は彼女が差し出したマシンガンを受けとった。
グリップを握り、マガジンの抜き差しを確かめてみる。うん、さすがにガタツキまでは再現してないが、手にしっくり来る。
「うん、いい感じだ。ありがとう」
「はい!」
「さて、サトー何から手をつけるんだい?」
「そうですね、色々ありますけど、まずは――」
・
・
・
数カ月後、銀河のもっとも遠い領域から正体不明の艦隊が現れた。
艦隊はメガコーポが支配する惑星を襲撃し、本社ビルを完全に破壊したという。
しかし、それにいたるまでのお話は、また別のお話。
それはまた、別の機会に語ることにしましょう……。
※作者コメ※
ここまでお読み頂きありがとうございます。
いつのまにやら、リムワールドからファクトリオに!?
惑星ナーロウに残った人々のその後を語るエンディングや
人間の姿になったポチとそのまま暮らすエンディング――
色々考案しましたが、別の惑星に降り立ち、そこで以前と比べて成長した自分に気づいて、奮い立ちながら前に進むエンディングとしました。
サトーはサイコパスながら、どうやら少しは人間味が出た……のかなぁ?
墜落者ギルドのお話はこれにていったん終了となります。
もしよろしければ、8月27日(月)、つまりこれを公開している日は、新作もアップしてますので、そちらもチェックしてもらえると嬉しいです。
あ、作者のフォローもオススメですよ!
ではでは、別のお話にて、またお会いしましょう!!
墜落者ギルドへようこそ!ーエルフやオークがいる辺境惑星に遭難した俺、頼れる(?)仲間たちとコロニー経営して生き延びます! ねくろん@カクヨム @nechron_kkym
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます