話がわからないイゴール


★★★


「ゲヘヘヘ!」「ウヒヒヒヒ!」


「さわんじゃないよ!」


 ギリーはサトーと一緒に弾薬庫で捕まり、サトーはそのままカシラに連れて行かれてしまった。


 一方の彼女はというと、宙族たちに戦利品として与えられていた。

 そう、これは宙賊たちが愉しみのために、ギリーで激しく前後するためだ!


「気が強いのは俺好みだなぁ~!」

「ぬふふふふ!」


「待て――ぃ」


「イ、イゴール様!」


「そんなところで何をしている貴様ら!」


「これはちょっとした大人向けのエンターテインメントでして」

「そうそう、サービスシーンってやつでさぁ」


 そう、これはサービスシーンなのだ!


 現にギリーは上着を剥ぎ取られ、肩と胸元を露わにして、はちきれんばかりの太腿を男たちにさらしているではないか!


 しかしここはカクヨム!

 どんなに読者が待ち望もうと、作者は挿絵をここに貼ることが出来ない!

 おのれ、許すまじカ◯カワ!!


「それはわかっておる!! このイゴールを差し置いて何をしていると言っているのだ! 一番槍はワシがもらうぞ!」


「えー!」


「このエルフの女はワシが好きにした後くれてやる!」


「ずるいー!」「話が分からねーな―」

「ぶーぶー!」「さすがイゴール、何も分かっちゃいねぇ」


「汚い顔近づけんじゃないよ!」


 ギリーにつばを吐きかけられたイゴールは、「ご褒美です!」と言わんばかりににたりと笑うと、懐から注射器を取り出した。


 注射器の中にはピンクの蛍光色を放つ見るからにアレな液体が入っていた!


「ヒヒヒ……どこまでその口がきけるかな? この感度を3000倍にする、アヘアヘンを打ち込めば、アヘ顔をして自分から欲しがるようになるわ」


「チッ……」


 ギリーの白い肌に、銀色の針が迫る。

 そして先端が彼女の肌に触れようとしたときだった。


『爆破装置が作動しました。繰り返します、爆破装置が作動しました。停止することはできません。乗員は今すぐ脱出してください。』


「――ッ?!」

「ほげぇぇぇぇぇっ!?」


 突如、部屋のライトが赤くなって点滅したかと思うと、スピーカーから自爆装置の起動を告げる音声が流れてきたのだ!


『爆破装置が作動しました。乗員は今すぐ脱出してください。』


「こ、これは一体何が起きている、どうしたことだ!?」


「スキあり!」

「あっ」


<プスッ>


 イゴールが放送に気を取られていたスキを突いて、ギリーは怪しげな薬品の入った注射器を、それを持っていた本人に突き刺し、注入する。


 すると、イゴールの体にすぐさま変化が現れた。

 全身が震えだし、頬どころか耳まで赤くなって、左右大きさの違う目がぐるんっと上を向く。そして――


「イグゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」


 イゴールは奇声を上げたかと思うと、床の上でくねくねしだした。アヘアヘンの効果によって、彼の皮膚、髪の毛の一本までが性感帯に変わったからだ。


「イグゥゥゥゥゥゥイグイグイグ、イキシヌゥゥゥゥ!」


「これはひどい」


「イゴールがこわれちゃ……たぁ!!」

「に、にげろー!」

「ほひー!」


 自爆装置の起動と、目の前の尊厳破壊行為に恐れおののいた宙賊は、ギリーを部屋に残して、一目散に外に逃げ出した。


「一体何が起きてるってんだい……?」


 彼女のその疑問に、スピーカーが答えるはずもない。

 それは同じ言葉をひたすらに繰り返していた。


「まぁ、自爆装置を起動したってことは、何かしら上手くやったんだろうね……」


「こうしちゃいられない、サトーを探しに行かないと!」


 彼女は上着をとると、宙賊が放り出した武器を拾って部屋の外へ駆け出した。


★★★


 どうやらポチが仕掛けたトリックは上手く言ったようだ。


「プイプイプーイ、プイ」

『爆破装置が作動しました。繰り返します、爆破装置が作動しました。停止することはできません。乗員は今すぐ脱出してください。』


 このキング・ベヒーモスの自爆を予告する放送は、真っ赤な嘘だ。


 カシラの部屋にあったコンピューター用のコネクターを通して、車内放送に関係するシステムをポチがハッキングして嘘の内容を放送しているのだ。


「爆破装置ってなんだー?」

「あら、しらないんですの? ドッカーンってなる機械ですわよ」

「あ、花火かぁー!」


「確かにまぁ……花火と似たようなもんかな?」

「プイ!」


「サトーさん、これからどうしますの?」

「うーん……」


 そうだなぁ。カシラはブチのめしたけど、宙賊の拠点はそのままだ。


 毒ガスで結構な数を討ち取り、勢力は弱ってるとはいえ、上手く逃げ延びた連中も当然いるはず。連中はガスが引いた後、ここに戻ってくるだろうから……。


 うん、一発ぶちかましてトドメを刺そう。

 そうしてから、ベヒーモスを本当に爆破するんだ。


「ベヒーモスを完全に破壊する前に、こいつの主砲を宙族の拠点に向かってうち込もう。そうすれば連中は完全に立ち直れなくなるはずだ」


「おー!」

「戦をやる時は徹底的に。お祖父様も良く言ってましたわね」


「ポチ、ここからベヒ―モスのコントロールを奪えるか?」

「プイ!」


 ポチが壁に向かって両手のマニピュレーターを接続して、さらに多くの侵入経路を作る。そうしてしばらくすると、ベヒーモスがその身を震わせだした。


「プイ!」

(ニセの警報で、乗員を追い出したのが効きましたね。ベヒーモスの司令室はからっぽです。私を止めるものは誰もいません)


「いいぞポチ、主砲のコントロールは奪えるか?」


「プ~イ♪」

(もちろんです! サトーさん、いま主砲には砲弾が装填されています。この砲弾を、宙賊の拠点のどこに叩き込みますか?)


「そうだな……宙賊に敗北を感じされる、象徴的な建物を破壊するのがいいな」


「キュイ!」

(わかりました。このテーマパークの施設の中心部には巨大なホテルがあります。そこに打ち込みましょう!)


「よし、やってやれ!」


「プーイ!」






※作者コメント※

あと4話で終わりそうです。

長かったような短かったような。

ホロリ……!

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