左手に文明を 右手にお薬を


「まさかこんな大量の先進武器が手に入るなんて……」


「こいつなら宙族のアーマーもイチコロだね」


「えぇ。明らかに軍用レベル、いやそれ以上のレーザーです。これならカスケットみたいなパワーアーマーを着込んだ宙族にも対抗できますね」


「探索者ギルドの連中がいくらヘボでも、これならいい勝負できるんじゃないかね? 反動はないし、真っ直ぐ飛ぶ。それに軽い」


「えぇ。戦いに慣れてない人でも使えるはずです。なにせテーマパークのお客さんに使われる、アトラクション用のレーザー銃なんですから……」


 アトラクション用、つまりオモチャだ。

 それなのにこれだけの殺傷力があるのは、どう考えてもおかしい。


 モンスターハントのできる、サファリツアーみたいな事をしてたんだろうか?

 うーん、有り得そうだな……。


「とにかく、この光線銃は持てるだけ持って帰りましょう。墜落者ギルドの防衛力が格段に上がるはずです」


「あぁ。わかったよサトー」


 ギリーさんは片っ端から光線銃の箱を引っ張り出して、倉庫の外に出す。

 あとはポチに載せて持って帰るとしよう。

 僕は周囲をウロウロしていたポチを呼び寄せると、荷物を彼(?)の背中に積ませてもらうことにした。



<ドンッ>


「よしっと……」


「ひとまず30丁くらい持ち帰ればいいかね?」


「そうですね。これだけあればちょっとした軍隊くらいの火力になります」


「まさかギルドマスターも、こんなモノをアタシたちが持って帰るとは夢にも思ってないだろうね」


「テーマパークに物資を供給している工場が、平然と武器を作ってるなんて、普通は想像しませんよ……」


「あとはこの工場で作れるものを作って、ニートピアに持って帰りましょう」


「へぇ、一体何を作るんだい?」


「それが……ちょっと悩んでまして。これから戦いが起きるのは確実ですし……そうですね、薬を作るための機械、あとはポチのアップグレードに使えるものかな」


「薬かい、そいつぁ良い考えだね。今のニートピアでケガや病気をしようもんなら、そのまま天国行き間違いなしだからね」


「はい。後はポチが作れる物を増やせればいいんですが……」

「キュイ!」


「うん? なにかリクエストがあるのかい?」

「キュイキュイ、キューイ!」

「なるほど、確かに……!」


「相変わらず、なんていってるかわからないんだけど、何だって?」


「工場のレシピやデータなんかのを、ポチにダウンロードしてほしい、だそうです。ポチが作れるようになる物がぐっと増えるそうです」


「ほぉ、そいつは良いじゃないか!」

「データか……こっちのほうが、ポチ的には大収穫、かな?」

「キュイ! キュキュイ!」


「うん、まだ何かあるのかい?」

「プイ。キュイキュイ」


「なるほど。僕が作りたいものを設計するためのコンピューターを作れって?」

「プイ!」


「3Dデータの設計なら、まあ出来ないこともないか……よし、それにしよう!」

「キュ~イ♪」


「サトー、作るものが決まったのかい?」


「はい。まずは薬品を作るための『フィールドラボ』、そして僕がポチに新しい設計図を与えるための『設計台』、最後にポチの『工芸アップグレード』ですね」


「最後の『工芸アップグレード』ってのは何だい?」


「ポチが今作れるのって建物や家具だけなんですよね。さらに精密な物、たとえば服や銃みたいな武器を作るには、アップグレードが必要みたいなんです」


「こいつ、そんなことまで出来るようになるのかい……」

「プイ!」


「はい、早速作ってきますね!」


 僕は工場のラインに向かって、さっそく製造してほしい物を注文することにした。レシピを選んでオーダーすると、機械のアームがガタッと動き出し、僕の目の前で部品を削り出し、接合のためにバチバチと火花を出す。


 すこし待つと、待ち望んでいたそれは出来上がった。


 包帯やメディキットなんかの薬品を作るための「フィールドラボ」は、旅行用トランクくらいの大きさの機械だった。


 この大きさなら、ニートピアにある机の上に十分置けそうだ。


 次に作った「設計台」は、折りたたみ机にモニターを格納したような見た目で、モニターの上でジェスチャー操作することで、粘土をこねるように設計をモデリングできる機械だ。ちょっと古めのタイプだけど、とくに問題はなさそう。


 最後はポチがオーダーした「工芸用アームデバイス」だ。

 精密加工に対応した、各種ツールを内蔵した機械の手といったところだろう。


 僕はフィールドラボと設計台をポチに載せる。

 そして、新しい腕はポチの戦車の腕につないでやった。


 普通に本体にもつなげられるのだけど、探索中の今は、わざわざ戦車の体から降りることもないだろうからね。


「ほい、出来上がり!」

「キュ~イ♪」


 新しいモジュールを受け取ったポチは。6本の脚を使って器用に踊った。

 どうやら気に入ってくれたようだ。


「キュイキューイ」

「ん? あっそうか。つないで早速だけど、防護服の修理を頼むよ」

「プイ!」


 ポチはアップグレードされたばかりの手を使って、前を大きく切り裂かれた僕の防護服を修理してくれたのだが、これがまた素晴らしい腕前だった。


 なおった防護服には、傷跡やおろか、縫い跡のひとつもない。

 最初っから傷なんて無かった。そう言わんばかりの出来栄えだ。こりゃすごい。


「ありがとうポチ!」

「プイ!」


 さて、手に入る物はあらかた手に入ったから、もうニートピアに帰ってもいいのだが……最後にまだやるべきことが残ってるな。


 そう、工場地帯にある、鉄道車両基地のチェックだ。

 まだ使える機関車がないか? それを調べる必要がある。

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